SF・ファンタジー
498文字 約1分で読了

孤独の都

愛し君を想い このアンドロイドを製作した 君はもうこの世にはいないけれど 大丈夫 僕は新しくこの機械仕掛けの人形と生きていく 君の記憶と彼女がいれば きっと死ぬまで生きられるだろう そう考えたのが 運の尽きだった 完成から長い歳月が流れた 当時 成年だった私も歳を取り 皺は増え 体は衰え 声もしゃがれた だが 彼女は今も変わらず むかし見た 記憶の君のままなんだ 想い出の中の君はとても綺麗で その想い出を基に造った彼女もとても綺麗で けれど 私はどんどんと年老いていく そんなものは耐えられない そう思って彼女を壊そうとした事もあったが 実行に移す事はとうとう出来なかった 理想とかけ離れていく現実を受け止めるには あまりに私は孤独だった 自分一人 独りで老いぼれていく事実 この状況を打破すべく色々と案は練ったが 結局 どうする術もなく 無力な私が実行した 最後の妙案 私自身のアンドロイドを製作し 老いる事なく 共に生きよう ずっと二人で 綺麗なままで さようなら 残酷な現実世界 そうして製作されたアンドロイド二体は 誰も知らないマンションの一室で 寄り添うように 今を生きている (あなたが知らないだけで 顔も知らぬ隣人の住む 現代のマンションでは こうした事は決して珍しくはない)
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作者:lue
2026/10/15 • 👁 50回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
2809文字 約6分で読了

あたしはリカ

あたしはリカ。香山リカ。でも、誰もフルネームで呼んでくれたことはない。 パパはフランス人の音楽家で、ピエール。ママはファッションデザイナーで、織江。でもよく考えたら、パパもママもフルネームでは呼ばれないかもしれない。というか、パパは香山ピエールなの? 婿養子? ミカとあたしは、特別な縁があったはずだった。名前が似ているから、彼女の祖母が一歳の誕生日に選んでくれたのだ。「ミカにはリカちゃんがぴったりね!」なんて、嬉しそうに言っていたらしい。駄洒落か。 ところが、ミカはあたしを見た瞬間、ギャーッと泣き出した。 「……お母さん、ミカには少し、早かったみたい」とミカの母親が祖母に告げた。 「ええ? 可愛いのに?」 まったく、ひどい話だ。 まつ毛が長くて、目がぱっちりしてるのが怖い? そんなこと、ある? だが、ミカの反応は顕著だった。泣いて叫んで手をばたつかせ、結果、あたしは箱ごと押し入れ行きとなったのだった。 こうして、あたしの人生の幕開けは、暗闇の中で迎えることになった。 押し入れの奥深く、あたしは静かに眠っていた。いや、正確には「眠らされていた」というべきか。暗闇の中で、どれほどの時間が過ぎたのかは分からない。 最初の頃は、時々、押し入れの扉が開く音がして、少しだけ期待していた。でも取り出されるのは毛布やアルバムばかり。 ちょっと、そろそろ思い出してくれてもいいんじゃない? そんなあたしの願いは、聞き届けられることはなかった。――その日までは。 ガタガタ、と何かを探す音がして、ミカの母親の声が響いた。 「ミカ、押し入れの中を片付けるわよ。手伝って」 「はーい……えっ?」 小さな手が、あたしを掴む。光が差し込み、久々にまぶた(はないけど)を開いた。 「……これ、なぁに?」 ミカは、あたしをじっと見つめた。次の瞬間、ぱあっと顔を輝かせる。 「かわいい!」 ……は? ちょっと待って。泣いて押し入れにぶち込んだの、誰だったかしら? 「えー、なんでしまってたの? これ、リカちゃんだよね?」 「ミカが怖がったからでしょ」母親が苦笑する。 「ええっ、うそ! こんなに可愛いのに!」 あたしは、心の中で腕を組んだ(実際にはできないけれど)。 ふん、都合のいい話ね。 ミカはあたしを抱きしめて、部屋に駆け込んだ。ようやく光の世界に戻れた――と思ったのも束の間、彼女はすぐに別のものを探し始めた。 「そうだ! リカちゃん電話、かけてみよう!」 ……ここに、本物がいるのに? ミカはあたしをそっとベッドに寝かせると、受話器を握りしめた。ピポパというプッシュホンの音が微かに聞こえる。 『もしもし、あたしリカちゃん! お電話ありがとう!』 受話器の向こうから、甘ったるい声が流れてきた。……あんた、誰よ? 『今日のラッキーカラーはピンクよ!』 「ピンクかぁ……じゃあ、リカちゃんもピンクの服着せてあげよう!」 ちょっと待って? あたしの服、これ一着しかないんですけど? ミカは、あたしを見つめて少し考え込んだ。 「……あれ? そういえば、お着替えどこにあるの?」 ないわよ。最初から。 ミカの「リカちゃん電話」ブームは、しばらく続いた。 毎日せっせとボタンを押し、向こうの『リカちゃん』とおしゃべりする。本物の前で、なぜ偽物とばかり話すの? それでも、ミカは少しずつ電話先の偽物ではなくて、あたしと向き合うようになった。 髪をとかし、リカちゃんハウスにあたしを座らせる。 「今日はお茶会よ。ここに座ってね!」 ミカはあたしの手を持ち、上品なポーズを取らせた。お茶は紙コップに入った水、ケーキは消しゴムだったが、なかなか悪くない。 こうして、あたしの「愛される日々」が始まった。 ――しかし、問題が一つあった。 服が、一着しかない。 色が褪せてきたピンクのワンピース一枚きりのあたしを見て、ミカは首をかしげた。 「ねえ、リカちゃんの服って、これしかないの?」ミカが母親に尋ねた。 「ええ、そうよ。最初から」 「うーん……じゃあ、作ってあげる!」 ミカは意気込んで、母親の裁縫箱を引っ張り出した。 「最初は簡単なのがいいよね……あっ、おばあちゃんが言ってた! 浴衣なら作れるかも!」 ……ええと、裁縫をしたことは、あるの? まずは、布選び。母親が手ぬぐいをいくつも持ってきた。ピンクの花柄、青い朝顔、紫の藤――なかなか渋いラインナップだ。 「やっぱりピンクがいいかな?」 ミカが布を切り始める。 「えーっと、袖と、身ごろと……あれ、どっちが前?」 大丈夫? その調子で進めて、あたし、まともな形の浴衣を着られるの? 見守ること数時間、ようやく浴衣らしきものが形になった。……少し歪んでいるが、まあ、最初にしては悪くない。 「できた! リカちゃん、着てみよう!」 ミカは嬉しそうに、あたしに浴衣の袖を通した。袖口の長さは左右で違うし、襟も少し曲がっている。だけど、そんなことはどうでもいい。これは、ミカが初めてあたしのために作ってくれた服なのだ。 ミカは大人になってもあたしを捨てなかった。 もう子どもの頃のように遊ぶことはなくなったけれど、それでもずっとあたしの服を作り続けてくれた。 「リカちゃん、冬だからコートがいるよね」 そう言いながら、小さなボタンを丁寧に縫い付ける。春には薄手のワンピース、夏には麦わら帽子付きのサマードレス。特別な日には、小さなリボンをつけてくれた。 「ねえ、リカちゃん、この服、似合うかな?」 ミカのそんな声を、何度聞いたことだろう。 そんな日々が、ずっと続くと思っていた。 どれくらいだろうか。ミカの髪が半分以上白くなるくらいには、日が流れた。 「事故……?」 ミカにそっくりな娘が、呆然とつぶやいた。 交通事故だったらしい。 朝、いつものように家を出たミカは、もう二度と帰ってこなかった。 あたしは、本棚の上でぽつんと取り残されたまま、ただ時間が過ぎるのを感じていた。 葬儀の日、ミカの娘は、あたしをそっとバッグに入れ、斎場へと向かった。 最後のお別れの時間になり、棺の蓋が開くとミカが静かに横たわっていた。参列者が次々と棺の中に思い出の品を納めていく。 ミカの娘は、あたしを見つめ、迷うように手を伸ばし、棺のなかにそっと置いた。 なるほど、そういうことか。 長年一緒にいたあたしが、最後にミカと共に旅立つのは、悪くない話だ。あたしは、ミカのものだったのだから。 そう、考えていたのに。 「ダメ!」 小さな手が、あたしを掴んだ。ミカの孫娘だった。 「それ、わたしの!」 「おばあちゃんの大事なお人形なのよ」 「やだ! わたしのなの!」 ちょっと待って。違う。あたしは、ミカと一緒にいるために生まれてきたの。 孫娘の手の中から、あたしの身体がふっと抜ける。まるで力が抜けたように、スルリと滑り落ちる。 あたしは、棺の中に落ちた。 孫娘が「あっ」と声をあげるが、ミカの娘が係の人に目配せすると、すぐに棺の蓋が閉められた。 あたしはもう、ミカのそばにいた。これでいい。 再びの暗闇は、あたしに優しかった。
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作者:くら
2026/10/15 • 👁 26回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
859文字 約2分で読了

腹ぺこライオン

ある日 ライオンは恋をした 相手は捕食対象のはずのシマウマ ライオンは生きるため シマウマを狩るが 彼女のいる群れだけは 決して襲う事はしなかった 今日も彼女の無事を確かめながら 恋心は募るばかり そんな ある日の事 別の群れのライオンが 彼女のいる群れを襲うところに出くわした 『今すぐ助けてやる!』 すぐさまライオンは 果敢に飛び出し あのコを助けるべく 必死に闘った 逃げ惑うシマウマの群れ 傷だらけになるライオンの身体 獅子奮迅 血まみれになりながらも なんとか他のライオンを退ける事に成功する 『無事 逃げ延びただろうか…』 そう呟き 周りを見渡すと 傷を負い 逃げ遅れた彼女の姿があった 幸い 命に関わるような怪我ではなさそうだが 痛みと恐怖に身がすくみ 動けないでいる様だった 『大丈夫か?』 同胞を切り裂いた返り血を滴らせながら ライオンはシマウマに近付く 体は痛むが 彼女さえ無事ならば こんなものは痛いうちに入らない しかしシマウマは 身を震わせながら ライオンにこう言った 「お願い… 殺さないで」 血にまみれた 己の体を見回し その一言で 全てを悟った 自分も所詮はライオン 彼女にとっては 畏怖の対象であり 自分を狩る 獰猛な獣でしかない事を 所詮 叶わぬ恋である事を どうせ 叶わぬのであれば 相手は手負いのシマウマである 本能に従って 今この場で彼女を喰らってしまおうか しばらく対峙した末 シマウマはその場から逃げ出した オレはライオン 気高き百獣の王 ライオンが喰らったのは恋心 腹は減るし 傷も痛むが ライオンの心は満たされていた 霞む視界と遠のく意識の中 よろめきながらも遠くへと 逃げるように走り去る彼女の姿を見ては ライオンは静かに目を閉じた 元より 相容れぬ身 きっとこれでよかったのだろう 『君を守れた事を誇りに思う』 愛する者を守り 誇りを貫いた 気高き獣の最期の言葉 ライオンの体はもう動かなかった どうか この勇敢なライオンが 来世ではシマウマと結ばれる事を切に願う (さて 彼が守り抜いた手負いのシマウマが 果たして過酷なサバンナを生き延びられるのだろうか? 残念ながら それはこの物語の顛末とは無関係なので ここでは触れずにおこうと思う)
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作者:lue
2026/10/14 • 👁 54回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
1519文字 約4分で読了

レイディアント・アーク

 地面に突き立てた剣の先で、白い花びらが散っていった。  膝を付き、剣にしがみつくようにして身体を支え、アディルは粗い息を調えようと、二度三度と深呼吸する。  背を飾った青のマントが、アディルの華奢な身体にのしかかるように纏わり付いている。  銀の軍靴は、力ない少年の震える足を地面に縫い付ける。  襲い来る疲労感に、なけなしの気力で抗うアディルは、首をもたげて空を見上げた。銀の髪がさらりと流れる。紺碧の瞳が映すのは、星も消えた闇の天蓋。  ようやく落ち着いた呼吸の中に、ふ、と失笑が混じる。  身体が傾ぐ。  支えにしていた剣から手が離れ、軍服姿の少年は、大地の上に横倒しになった。一面に咲く白い花。あるものは花びらを舞い上げ、あるものはアディルの下に潰れていく。哀れでか細い命を憂える余裕もなく、彼は己の指先を朦朧とする意識の中で見つめ続けていた。  中指の向こうに、少女の顔があった。  広がる黒髪。白い相貌。赤い唇は緩く結ばれて、長いまつげが縁取る眼は閉じられている。折れてしまいそうな細い首の下には、やはり折れてしまいそうな細い身体があって、あどけない顔に似合わない、黒のドレスで飾られていた。  穏やかな眠りの表情。顔の真横に突き立てられた剣など気にも留めやしない。そんな彼女が暢気に思えて、アディルは頬を少しだけ緩ませる。 「……馬鹿なやつ」  かすれ声が、眼前の小さな花を揺らした。 「黙っていれば、こんなことにはならなかったのに」  アディルの表情が引き攣ったような笑みを作る。  黒い手袋を嵌めた手に痺れを感じた。五指がぴくりと蠢いて、握ろうとしては諦めるのを繰り返す。その手がつい先程齎した所業を思い出し、喉に熱いものが込み上げてきたのを覚えた少年は、固く瞼を閉じた。  強く息を吐く。片方の手を持ち上げて、額の上に置く。嗚咽は無理やり飲み込んで、ただじっと胸中の嵐が過ぎ去るのを待った。  ――ふと、頬に何かが触れた。  アディルは紺碧の目を見開く。真っ黒だった闇空が淡くなっている。紺色、藍色、緑に水色――端にいくほど白んでいき、地平は赤く染まっていた。  アディルは身を起こした。果てしなく広がる平原の向こうから、朝の気配が押し寄せてくる。風がアディルの銀の髪を揺らし、足元の白く小さな花々を揺らして、誰かを急き立てるように通り過ぎていった。  刻一刻と変わりゆく空に、しばらくのあいだ見惚れて。 「見ろよ、フィーネ」  隣でまだ横たわる少女に、そっと声をかけた。 「世界の端が、光ってる」  日の出が近い。緩く弧を描いた地平線、目を細めても見えないほど遠くの場所が明るくなり始めていた。誰もが心奪われる、美しく神々しい光景。知らず、アディルの目に涙が浮かんだ。 「終わったんだ……終わったんだよ」  声が上擦るのも構わずに、眠り続けたままの少女にひたすら声を掛け続けた。 「もう、この世界に魔女はいないんだ。俺たちはこれから、平和に暮らせる。逃げなくていい。殺さなくていい。何処かの街で、ひっそりと、静かに、穏やかな毎日を暮らしていけるんだ」  右手に体重を掛け、身を乗り出した。眠る少女を起こそうと、その肩に左手を置く。はじめはそっと、次第に強くその身体を揺さぶるが、彼女は一向に目を覚まさなかった。  身動ぐことも、まるでない。  何度も何度も揺さぶり続けて、疲れたところで手を引き戻す。掌を見つめてみれば、黒い手袋にべったりと赤い染みが付いていた。  ああ、と声もなく、溜め息が漏れる。  アディルは左手を握りしめ、拳を額へと押し当てた。固く目を閉じ、嗚咽を殺し、祈るようにそのまま在り続けた。  地平の先から日が昇る。  世界が輝き、色付き始める。  まるで祝福を受けたかのようなこの場所で、彼はただ独り、静かに涙を流し続けた。
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作者:森陰五十鈴
2026/10/14 • 👁 61回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
139文字 約1分で読了

はるか仰ぎ見て

「勇者殿、また月を見ておいでか」同行の賢者が髭を撫でつつ、声をかけてくる。「ええ、美しい」僕は焚き火に薪を放り込んだ。「いずれはこの足で、と」「はは、気宇壮大であられる」火がはぜて、パチリと音が響く。賢者は笑ったが、僕は笑えなかった。夜空にかかる、あの青い星こそ故郷なんだから。
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作者:有賀慧
2026/10/14 • 👁 27回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
940文字 約2分で読了

終末の日

『いよいよ明日、終末の日を迎えます』  何度目かの国営放送が流れた。テレビもラジオもこのアナウンスがひっきりなしに流れる。  今日は国の規則である予防接種と最後の晩餐の日だ。  なんでも、某大予言のようなものを、本気で信じてその日を痛みなく過ごそうというらしい。  最後とはついているが、既に私は三度経験している。晩餐というには、質素なものだ。  二十四時間眠っていられる錠剤と、誤嚥防止のゼリーだけ。食べる前に、日中に予防接種を受ける。薬の効き目を確実にするためらしい。  毎度、何事もなく過ごせているから、今回も不発だろうと思っている。それに、気になる事もある。  一度目の終末の日を乗り越えた時のことだ。翌日に、ご近所さんが居らず、遠くへ引っ越したと聞いた。二度目の終末の日を乗り越えた時は、翌日から高校の他クラスの生徒が来なくなり、これも遠くへ引っ越したと聞いた。  本当だろうか。  気になった私は、思いついた。  錠剤を飲まずに、終末の日を迎えてみよう、と。  そうすれば、何が起きているのか分かるはずだ。少し怖さはあったが、どうせ今回も不発だとタカをくくっていた私は、好奇心のほうが勝った。  次はいつ訪れるか分からない。何度も起きているとはいえ、不定期だから。  そうして、今日決行することにした。  学校で予防接種を受けて、夜は玄関で父が役人から受け取った錠剤とゼリーが、食卓に並ぶ。ゼリーは半透明のもので、味はついていない。あくまで誤嚥を防ぐためのものだ。  父と母が錠剤を飲む。私は飲んだフリをして錠剤をポケットに隠し入れた。そして、三人一緒にゼリーを食べて、就寝した。  翌朝、私は目を覚ました。薬が効いているのか、両親はぐっすりと眠っていた。  天気は快晴。小鳥たちも鳴いている。いい天気だ。  午前中をダラダラと過ごしていたが、何も起きない。やっぱり何もないんじゃないか、と思っていると、唐突にアナウンスが流れた。 『ごきげんよう、皆さん。今日はいい天気ですね。さて、規則を守らなかった反乱分子の皆さんは、これから処刑されます。ああ、今から薬を飲んで眠っても無駄ですよ。予防接種で体内に入れたのは、ナノマシンでしてね。こちらで全員監視できるんですよ。諦めてください。それでは、皆さん。良い、終末を』  私は目の前が真っ暗になった。
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作者:開津文太
2026/10/14 • 👁 50回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
276文字 約1分で読了

影法師

 夜になってあたりが真っ暗になってしまったので影法師はそっと眠っている宿主から離れました。  どうせ夜なんだから鍵がなくても困らないだろう。 影法師はこっそりと闇に紛れて街をうろつ行きます。 塀の上の野良猫に挨拶し、可愛いあの子の影とダンスパーティー。  踊り疲れて家に帰ってきて、また宿主にくっついて熟睡しました。 朝になって宿主が目を覚ましたけれど影法師は寝たまま。 疲れちゃったのだから仕方がないのかもしれません。  だから宿主が可愛いあの子のところに行ったのに、彼女の影に気づかずに熟睡しておりましたとさ。  おかげで後日、夜にあった時に彼女の影に振られてしまいました。
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作者:しとえ
2026/10/14 • 👁 46回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
1323文字 約3分で読了

人間を作る

 神様は、とても退屈していた。  世界はもう、だいたい完成していた。  空も海も山も、作り終えた。  やることがない。  神様は長いこと椅子に座っていた。 「……暇だな」  あくびをして、机の上を見る。  そこには、土のようなものが山になって置かれていた。 「これで何か作るか」  神様は土を手に取った。  こねて、丸めて、伸ばす。  頭と胴体をつくる。  腕と脚をつける。  最後に顔を彫り込んだ。 「人間……とか?」  思いつきで作ったにしては、それらしい。  神様は少し嬉しくなった。 「せっかくだし、もうちょっと面白くしよう」  パチンと指を鳴らす。  人間の横に、いくつもの数字が浮かんだ。  心の清らかさ。  ずる賢さ。  表現力。  好奇心。  愛情。  神様は楽しそうに数字を眺めた。 「心の清らかさ……25」  数字を変える。 「ずる賢さ……5」 「それから、魅力は高めで……と、よし」  最後に、胸の奥へ小さな光を入れる。  人間が目を開けた。  神様は思わず身を乗り出した。  人間は、不思議そうに周囲を見回している。 「いいね」  神様は満足すると、その人間を地上へ送った。人間は、何も知らないまま街へ降りていった。  自分がいつ生まれたのかも知らない。  誰につくられたのかも知らない。  ただ、人間として生き始めた。  神様は、それを眺めていた。  しばらくすると、人間は誰かと出会った。  友達になり、やがて恋をした。  その相手も人間を好きになり、二人は結婚した。 「ふふ」  神様は嬉しそうに笑った。 「いいじゃないか」  そして、また人間をつくった。 「こいつは、ずる賢さを少し下げて……」 「こいつは、愛情を高めたら面白そうだ」  人間をつくり、地上へ送る。  それを延々と繰り返す。  それが、神様の新しい遊びになった。  たくさんの魅力的な人間が送り込まれていく。 「人間って、面白いなあ」  神様は毎日、地上を眺めていた。  そんなある日。  ふと、気づいた。 「……あれ?」  子供が、いない。  神様は首をかしげた。  別の街を見る。  やはりいない。 「……なんでだ?」  そして、ある夫婦を見つけた。  二人は仲がよかった。  けれど、子供はいない。  別の夫婦を見る。  そこにもいない。  また別の夫婦。  やっぱりいない。  神様は、そこで初めて気づいた。 「あ、……そういえば」  神様は、人間を作るときの記録を確認した。  そこには一つ、空欄があった。 『繁殖力』  神様は、その文字を見つめた。  そして、ぽん、と手を叩いた。  思い出した。 「これ、設定するの忘れてた」  もう遅かった。  地上にいる人間は、すべて神様が作った人間だった。  神様は、何も言わずに地上を見つめた。  一人。  また一人。  人間が死んでいく。  新しい人間は、生まれない。  街から、国から人が消える。  やがて。  最後の一人が死んだ。  神様は、それを黙って見ていた。 「……終わったな」  神様は椅子から立ち上がった。  机の前に戻り、土のようなものを、二つ取り出す。  こねる。  神様は、いつものように数字を表示する。 「繁殖力……」  神様は、しっかりと数字を確認した。 「よし」  二人の胸に、小さな光を入れる。  男が目を開けた。  女も目を開けた。  神様は、二人を地上へ送る。  誰もいなくなった世界へ。  そして、送り出す直前。  ふと思いついたように、二人に名前をつけた。 「アダムくん、イブちゃん」  二人は振り返る。  神様は笑った。 「いってらっしゃい」
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作者:文系の人
2026/10/14 • 👁 26回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
793文字 約2分で読了

人生は蚊取り線香に劣るのか

蚊取り線香は 人生とよく似ている 灯火を産声として ぐるぐると回りながら ゆっくりと 最後には燃え尽き その生を全うす 燃え尽きた後は 何も残らない点においては 尚の事 人生とそっくりだが 強いて述べるなら 人間は燃え尽きても 尚 志は受け継がれる (事もある) 物質的な意味においては 最後は無に帰すのが美しく 本来 あるべく姿と考える 故に 蚊取り線香は 人生よりも優れた存在だと言える 人間は無に帰すには時間が掛かり 何より人の手が必要だ 故に劣っている ならば人生は 蚊取り線香以下の儚くも醜きものなのか 案ずる事はない 蚊取り線香は 火を点けた瞬間から ただただ終息へと向かい そして最後には燃え尽きる 始めから終わりへと向かい 歩き 副次的に 蚊を取りはするが (本来の役目ではあるが) 蚊取り線香本人にとっては 実はそんな事は どうでもいいと思っている 見据えた物事に対して一直線 というのは 武士のごとく潔くも感じるが 実のところ そうでもない (回りくねってもいるし) 何せ 何も生み出さない 奴らは一切の他人の意見も受け入れずに ただひたすら 己の成すべき事に向かってひた走る事しか出来ない 愚かで罪な存在なのである それに対して 人間はどうだ 人生はどうだ 人と人 手を取り 支え合い 譲り合い 協調し 時に反発し合い そして深く深く理解し合う なんと美しい事か 蚊取り線香には到底 成し得ない芸当である 尊ぶは人情であり 人の和であると捉えると 驚くなかれ なんと人生は蚊取り線香をも超える存在なのである そうして なんだか 蚊取り線香を憐れに思えてきた私は 外から内に向かって燃え尽きる点を不憫に感じ ついには 『内から火を点けてみる』 という暴挙に出るのであった こうして 過ぎし夏を懐かしみ そして 移りゆく秋を迎え入れるのでした (ほら 来年になると湿気っちゃうし… それは蚊取り線香にとっての死 どうせ死を迎えるのであれば せめて燃やし尽くしてやろうと思うのは 蚊取り線香に対する せめてもの餞であり 手向けであると私は考える)
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作者:lue
2026/10/13 • 👁 52回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
196文字 約1分で読了

バグ

 どうやらこの世界にバグが発生してしまったらしい。 人々は虫取り網を持ってバグを捕まえて回る。バグはなかなか減らない。仕方がないので政府はバグを捕まえるの止めることにしたらしい。 それでバグは街中に普通に生息している。 ちっちゃいバグを大きいバグが食べる。ノラのバグもいたらペットになっているバグもいる。 いつのまにかこの世界で共生関係になっている。  世界はどうやらバグを取り込んだ仕様に変更したらしい。
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作者:しとえ
2026/10/13 • 👁 54回 • 💬 0件