SF・ファンタジー

腹ぺこライオン

859文字 約2分で読了
作者:lue
ある日 ライオンは恋をした 相手は捕食対象のはずのシマウマ ライオンは生きるため シマウマを狩るが 彼女のいる群れだけは 決して襲う事はしなかった 今日も彼女の無事を確かめながら 恋心は募るばかり そんな ある日の事 別の群れのライオンが 彼女のいる群れを襲うところに出くわした 『今すぐ助けてやる!』 すぐさまライオンは 果敢に飛び出し あのコを助けるべく 必死に闘った 逃げ惑うシマウマの群れ 傷だらけになるライオンの身体 獅子奮迅 血まみれになりながらも なんとか他のライオンを退ける事に成功する 『無事 逃げ延びただろうか…』 そう呟き 周りを見渡すと 傷を負い 逃げ遅れた彼女の姿があった 幸い 命に関わるような怪我ではなさそうだが 痛みと恐怖に身がすくみ 動けないでいる様だった 『大丈夫か?』 同胞を切り裂いた返り血を滴らせながら ライオンはシマウマに近付く 体は痛むが 彼女さえ無事ならば こんなものは痛いうちに入らない しかしシマウマは 身を震わせながら ライオンにこう言った 「お願い… 殺さないで」 血にまみれた 己の体を見回し その一言で 全てを悟った 自分も所詮はライオン 彼女にとっては 畏怖の対象であり 自分を狩る 獰猛な獣でしかない事を 所詮 叶わぬ恋である事を どうせ 叶わぬのであれば 相手は手負いのシマウマである 本能に従って 今この場で彼女を喰らってしまおうか しばらく対峙した末 シマウマはその場から逃げ出した オレはライオン 気高き百獣の王 ライオンが喰らったのは恋心 腹は減るし 傷も痛むが ライオンの心は満たされていた 霞む視界と遠のく意識の中 よろめきながらも遠くへと 逃げるように走り去る彼女の姿を見ては ライオンは静かに目を閉じた 元より 相容れぬ身 きっとこれでよかったのだろう 『君を守れた事を誇りに思う』 愛する者を守り 誇りを貫いた 気高き獣の最期の言葉 ライオンの体はもう動かなかった どうか この勇敢なライオンが 来世ではシマウマと結ばれる事を切に願う (さて 彼が守り抜いた手負いのシマウマが 果たして過酷なサバンナを生き延びられるのだろうか? 残念ながら それはこの物語の顛末とは無関係なので ここでは触れずにおこうと思う)
2026/10/14 ・ 👁️ 53回 ・ 💬 0件

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