SF・ファンタジー

人間を作る

1,323文字 約3分で読了
作者:文系の人
 神様は、とても退屈していた。  世界はもう、だいたい完成していた。  空も海も山も、作り終えた。  やることがない。  神様は長いこと椅子に座っていた。 「……暇だな」  あくびをして、机の上を見る。  そこには、土のようなものが山になって置かれていた。 「これで何か作るか」  神様は土を手に取った。  こねて、丸めて、伸ばす。  頭と胴体をつくる。  腕と脚をつける。  最後に顔を彫り込んだ。 「人間……とか?」  思いつきで作ったにしては、それらしい。  神様は少し嬉しくなった。 「せっかくだし、もうちょっと面白くしよう」  パチンと指を鳴らす。  人間の横に、いくつもの数字が浮かんだ。  心の清らかさ。  ずる賢さ。  表現力。  好奇心。  愛情。  神様は楽しそうに数字を眺めた。 「心の清らかさ……25」  数字を変える。 「ずる賢さ……5」 「それから、魅力は高めで……と、よし」  最後に、胸の奥へ小さな光を入れる。  人間が目を開けた。  神様は思わず身を乗り出した。  人間は、不思議そうに周囲を見回している。 「いいね」  神様は満足すると、その人間を地上へ送った。人間は、何も知らないまま街へ降りていった。  自分がいつ生まれたのかも知らない。  誰につくられたのかも知らない。  ただ、人間として生き始めた。  神様は、それを眺めていた。  しばらくすると、人間は誰かと出会った。  友達になり、やがて恋をした。  その相手も人間を好きになり、二人は結婚した。 「ふふ」  神様は嬉しそうに笑った。 「いいじゃないか」  そして、また人間をつくった。 「こいつは、ずる賢さを少し下げて……」 「こいつは、愛情を高めたら面白そうだ」  人間をつくり、地上へ送る。  それを延々と繰り返す。  それが、神様の新しい遊びになった。  たくさんの魅力的な人間が送り込まれていく。 「人間って、面白いなあ」  神様は毎日、地上を眺めていた。  そんなある日。  ふと、気づいた。 「……あれ?」  子供が、いない。  神様は首をかしげた。  別の街を見る。  やはりいない。 「……なんでだ?」  そして、ある夫婦を見つけた。  二人は仲がよかった。  けれど、子供はいない。  別の夫婦を見る。  そこにもいない。  また別の夫婦。  やっぱりいない。  神様は、そこで初めて気づいた。 「あ、……そういえば」  神様は、人間を作るときの記録を確認した。  そこには一つ、空欄があった。 『繁殖力』  神様は、その文字を見つめた。  そして、ぽん、と手を叩いた。  思い出した。 「これ、設定するの忘れてた」  もう遅かった。  地上にいる人間は、すべて神様が作った人間だった。  神様は、何も言わずに地上を見つめた。  一人。  また一人。  人間が死んでいく。  新しい人間は、生まれない。  街から、国から人が消える。  やがて。  最後の一人が死んだ。  神様は、それを黙って見ていた。 「……終わったな」  神様は椅子から立ち上がった。  机の前に戻り、土のようなものを、二つ取り出す。  こねる。  神様は、いつものように数字を表示する。 「繁殖力……」  神様は、しっかりと数字を確認した。 「よし」  二人の胸に、小さな光を入れる。  男が目を開けた。  女も目を開けた。  神様は、二人を地上へ送る。  誰もいなくなった世界へ。  そして、送り出す直前。  ふと思いついたように、二人に名前をつけた。 「アダムくん、イブちゃん」  二人は振り返る。  神様は笑った。 「いってらっしゃい」
2026/10/14 ・ 👁️ 24回 ・ 💬 0件

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