TakaTuki / 赤い印の贈りもの
雪森町の無人駅を降りると、理沙のブーツは新雪に沈んだ。雪道を二十分ほど歩くと、りんご畑の向こうに選果場が見えてきた。軒下には、使い込まれた木箱が積まれている。 贈答用りんごの...
更新頻度は出来たら投稿というスタイルなので、やや低め。ジャンルは思いついたら書く、というスタイルなので雑多。
雪森町の無人駅を降りると、理沙のブーツは新雪に沈んだ。雪道を二十分ほど歩くと、りんご畑の向こうに選果場が見えてきた。軒下には、使い込まれた木箱が積まれている。 贈答用りんごの...
鐘見町の石段は、数えても数えても終わらなかった。 「おばあちゃん、毎日ここを歩いてるの?」 菜月が振り返ると、千代は三段下で手すりにつかまり、息を整えていた。 「天気のよ...
今祇島(いまかみじま)の港では、ロープが岸壁を擦る音がした。 美咲はフェリーを降り、レモン畑の続く坂を歩いた。 三日間の休暇を取って島へ来た。休み明けには上司との面談があ...
朝の高恵那町では、川の音より先に木槌の音がする。軒先で杉の箱を組む音だ。 美咲は橋のたもとの朝市で、くるみ味噌を塗った五平餅を買った。包み紙の下から、四つ折りの地図が出てきた。...
朝七時ニ十一分の小波橋行きバスは、いつも右側の二人掛けが空いている。千夏は三年前から、そこに座る。 座ったらイヤホンをつけて、スマホを見る。橋を渡るころにはニュースを読み終え...
雨の多い町だ。北陸の古い城下町、雨宮では、傘を使い捨てにしない。 石畳の路地には格子戸の町家が並び、軒先の雨樋から細い水が落ちる。川沿いの木橋を渡れば、祖母から継いだ私の傘直...
午前五時半のやまぶき市は、まだ市場ではなかった。 川沿いの細い通りに軽トラックが何台も入り、荷台から折り畳みの台や木箱が下ろされている。水を打たれた石畳の上では、野菜、干物、...
蛍橋(ほたるばし)町には、川と柿の木が多い。 初夏の夜には川面を蛍が飛び、秋には、川沿いの石畳へ枝を差しかけた柿の木が一斉に色づく。町じゅうの庭に渋柿があって、家ごとに渋を抜く。...
水の辻の朝は、豆の湯気から始まる。 午前三時、美波は店の電気をつけて、前の晩から水に浸けておいた大豆を石臼のそばへ運ぶ。 水を吸った豆は、指で押すと少しだけやわらかい。冷たい水...
最終の連絡船は、わたしが桟橋に着く三分前に出ていた。 白い船尾が沖へ小さくなっていくのを、キャリーケースの取っ手を握ったまま見送る。 あと三分。 駅からここまでの坂道を、もっ...