TakaTuki / 三つ目のしるし
初雪が山の稜線を白く縁取った十月、モンタナ州ガーディナーの朝は、頬に刺さるほど冷えていた。リサはダウンジャケットの襟を立て、首から下げた木札を指先でなぞった。 三十五歳の誕生日に...
更新頻度は出来たら投稿というスタイルなので、やや低め。ジャンルは思いついたら書く、というスタイルなので雑多。
初雪が山の稜線を白く縁取った十月、モンタナ州ガーディナーの朝は、頬に刺さるほど冷えていた。リサはダウンジャケットの襟を立て、首から下げた木札を指先でなぞった。 三十五歳の誕生日に...
坂道の端に、黄色く色づいたカラマツの針葉が落ちていた。アローザの村を歩きながら、千紘は軒先の木彫りの動物を見つけるたび、足を止めた。猫シッターの仕事を始めてから、旅先でも猫の姿が気...
アイガー北壁に午後の光が残り、グリンデルワルトの谷に長い影が伸びていた。黄金色のカラマツが風に揺れ、牧草地からカウベルの音がひとつ、遅れてもうひとつ届く。 私は木組みのシャレー...
村の朝は、白かった。 水田の向こうに低い山が見えるはずなのに、霧に溶けて輪郭だけが残っている。湿り気を帯びた風が、紗季の頬を撫でていった。 チェンマイの中心部から車で一時間ほど...
朝霧の向こうで、運河がゆっくり目を覚ましていた。野菜や果物を積んだ小舟が行き交い、売り声と櫂の音が水面を揺らす。水上市場の片隅で、チャイは自分の舟「ナーガ号」に腰を下ろし、胡椒とレ...
勝河町の駅に降りると、結衣はスマートフォンで帰りの列車の時刻を確かめた。農園まで徒歩十五分。見学と昼食を済ませ、午後三時の列車に乗る。予定に狂いはない。 「こっちです」 地...
白窯町の坂道には、焼き上がった陶器を並べる木棚が続いていた。白や淡い青の器が朝の光を受け、坂の上の窯元からは、薪を焚く匂いが漂っていた。 奈緒は仕事用の鞄を肩に掛け直し、窯元の店...
火ノ浦市の夕暮れは、火山灰の匂いがする。 大阪で音響技師をしている森川由衣は、録音機を提げて商店街を歩いていた。さつま揚げが油の中ではじける音。竹ぼうきが舗道に積もった火山灰を掃...
吉野川の川風が、藍ノ瀬町の路地を吹き抜けていた。 水場からは絶えず水の音がする。古い商家の軒先を抜けると、藍染め工房の引き戸が半分開いていた。土間には湿った土と染料の匂いが混じり...
午後六時、星守町には細かな雨が降っていた。 千尋は宿の窓から空を見上げた。山の稜線は灰色の雲に溶け、向かいの家の屋根から雨粒が絶え間なく落ちている。窓の隙間から、濡れた土と草の匂...