珈琲時間 / ギャンブル依存症
「わあ!おめでとうございます!」 初老の女性が弾けるように笑い、5万円をトレーに乗せ男に渡す。深く被った紺色のキャップ、すこしサイズの合わないサングラスにマスク。5万円を受け取った...
掌編小説とカクヨムで長編書いてます。
「わあ!おめでとうございます!」 初老の女性が弾けるように笑い、5万円をトレーに乗せ男に渡す。深く被った紺色のキャップ、すこしサイズの合わないサングラスにマスク。5万円を受け取った...
バナナの皮を被った男と目が合った。 「ああ。どれだけ疲れているんだオレは」 思わず声が洩れて出た。 すっかり人の引いた帰り道。 ポツリ、ポツリと付いた街灯を潜り、帰路を辿る...
高校三年生最後の競技会。 私とゴールの百メートルの隙間に、周囲の期待も青春もぎっしりと詰まっていた。 どうにもあの心地良くもあった緊張を、桜の匂いは連れてくる。 もう十年に...
「ずいぶん美味しくなったもんだな」 コンビニで淹れたコーヒーカップを両手に包み、鼻腔に溜めた香りを味わう。 今年も桜が咲いた。 ちらちらと舞う並木道。 汗の滲む首筋に、ひん...
彼女が放屁した。 極めて間抜けで、しかし同時にどこか愛嬌のあるその音は、椅子がズレた音などではなく間違いなく屁だった。 食器の泡を流す水の音が、まるで水流が増したかのように嫌...
海外製のグラインダーも、やたら高価な手挽きミルも、何種類ものドリッパーに、人体工学に基づいて作られた調温ケトルも、高性能な電子スケールも、全部捨てた。 僕はもう珈琲を淹れない。...
目的のみを果たす人。 無闇に散財する人。 喋るだけの人。 休日の暇潰しの人。 目的を探す人。 老後の人。 仕事中の人。 あるいはショッピングモール。 あるいはデ...
眼下には大海の如く広がる珈琲豆。 その香りに手を引かれ、僕は飛び降りる他無かった。 ジャリジャリと砂のような小石のような質感が、この身体を愛撫する。 ドリッパーの「詰...
雨の日は無性に眠たい。 低気圧だとか、胎児の頃の記憶だとか、そんな事はどうだっていい。 この雨音に包まれ、是非もなく、まどろんでいたい。 瞼の重さが心地よい。 地球の重力...
僕は猫が嫌いだ。 理由? あつかましい、の一言に尽きる。 一方で僕の師は猫を溺愛している。 なにかしらの感染症に罹り脳がイカれてしまっていると言っていいほどには溺愛している...