その他
1026文字 約3分で読了

あまりにもオセロ

目を開くと世界がモノクロになっていた。 きっとこれは夢だ。私はそう思った。 外に出ると空は白い、地面は灰色で、人の顔も灰色でどこまでも色味がない。 話し声も色がない。 誰の言葉も響かない。  そこで、ふと思った。 そもそも私の日常生活に色なんてあっただろうか? 昨日のことを思い出そうとしても、やはり何も思い出せないのだ。毎日が灰色で、白から黒へのグラデーション。  それが私の日常だった。 色のない世界でそれを 普通と思い込んでいただけかもしれない。だから色が消えたところで、今までと何も変わらないのだ。 夢だと思った今の状態は、もしかしたら変わらない現実なのかもしれない。 白い日もあれば黒い日もあるかもしれないけれど、私の世界には色がなかったのかもしれない。  鮮やかな日常をまぶたの中に思い描こうとする。 だが何も思い出せないのだ。 色が消えたところで、私は何も困らない。 世界はどこまでも色がなく、そのことに私は困らないのだ。 心の中がざらついて、何の感情も浮かんでこない。  色のない夢……いいや色のない現実。 夢の中で赤信号を渡る。 色がないのに赤信号だとわかる。 夢の中で青信号で止まる。 色がなくても青だとわかる。 ……なんだ、色なんて必要ないじゃないか。 そう思うと私は泣きたくなった。 空を見上げれば灰色の雲が出ている。 ポツリポツリと雨が降る。 地面の灰色のブロックの上に、黒いシミを作っていくのだ。 それはオセロのように黒く黒く染め上げていく。 やがてあたりが黒1色に包まれた。  何もない闇の中を、私を歩いて行く。 ……なんだ、光なんていらないじゃないか。 私はポロリと泣いた。 その時に初めて私は悲しいと思ったのだ。 色なんていらない、見えなくても気にならない、そんな世界に。  きっと夢の中でも現実でも、私は色なんて必要としていなかったのかもしれない。 色のない日常。昨日と変わらない今日。 それは延々と過ぎてゆく。 嬉しいとも悲しいとも思わない日々が、毎日蓄積してゆく。 そのことに疑問も感じなかった。 私は初めから色のない世界で生きていたのだ。  そのことに気がつかず、何の感情も湧かなかったのだ。 私の世界はとっくに死に絶えていたのかもしれない。 私自身は生きているのに……  そのことに気がついて初めて悲しいと思った。  一粒の涙が地面に落ちて白く輝いていた。 その白の中には、実際は いくつもの色彩が含まれていたのだ。 闇よりも暗い黒から白へと塗り替えられてゆく。 それはオセロの様に…… ……そして世界は色彩を取り戻したのだ。
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作者:しとえ
2026/09/20 • 👁 80回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
607文字 約2分で読了

にゃお

ある日、独り身の俺の家に大きな猫が一匹現れた。 「にゃお」  か弱く愛らしく鳴き声をあげるその猫は、動物を飼う余裕などないと自らを戒めてきた俺の急所を突いた。  気づけば俺は猫のために食事を用意し、寝床を準備し、甲斐甲斐しく世話をしていた。猫は俺が触れようとすると逃げてしまうが、俺の与えるモノはすべて受け取ってくれた。それがまたいじらしいやら可愛らしいやら。俺は猫をしこたま可愛がって毎日を過ごした。  そんな日々が続いて数週間。夜に眠っていると、身体の上に何かがずっしりと乗っかってくる感じがした。  薄っすら目を開けてみると、何やら大きな物体が上に乗っている。よくよく見れば、それは頭に獣の耳が生えた青年で、俺の顔をじっと覗き込んでいた。 「にゃお」  聞き慣れた悩ましい声にハッとして「お前は」と声を掛ければ、青年はニヤリと笑って俺の頬をぺろりと舐めた。  途端にカッと頬が熱くなり、俺は再び眠り込む。その翌日は寝坊し、俺は会社に遅刻した。  なんとか仕事をこなし、急いで家に帰ると、俺が可愛がっていた猫の姿が何処にもない。家も庭も探したが、見当たらない。  最後の挨拶くらい、してくれればよかったのに。そう俺が途方に暮れ、寂しい思いで一人晩酌をしていれば、ふいにインターホンが鳴った。  玄関に行ってみると、一人の青年が佇んでいた。どうやら隣の家に引っ越してきた子らしい。  人懐っこそうなその猫目を、俺は何処かで見たことがある気がした。 「にゃお」
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作者:ころもやぎ
2026/09/20 • 👁 113回 • 💬 1件
ポエム・詩
192文字 約1分で読了

雨

雨だ。 雨が降っている。 今月はもうずっと雨が降っている。 空は黒く厚い雲で覆われ、線状降水帯と呼ばれ出した強い雨が槍のように降ってくる。 道路は冠水し、低い土地の家は浸水に遭う。 雨が止めば少しずつ溢れた雨水は収まっていくけれど、受けた被害は傷跡を残す。 家にも、私達の心にも。 自然によるパワハラは、一方的な暴力だ。 私達は何もやっていないのに。 私達はただただ生活しているだけなのに。 ──本当に?
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2026/09/20 • 👁 84回 • 💬 1件
その他
4044文字 約9分で読了

8月の140字小説まとめ 2026年

8.1 夕霧/ひまわり/君の笑顔 夕立の後、珍しく夕霧が出ていた。 霞んだ ひまわりの花に君の笑顔が浮かぶ。 僕は夢を見ているのだろうか。 夕立の後に夕霧なんて出るはずがないのに。 目をこすってもう一度前を見ると、薄紅色に染まった入道雲が輝いていた。 きっと僕は真夏の陽炎の夢を見たんだ。 8.2 花火の残骸/濡れたアスファルト/最後の夏 夏の最後の思い出に君と行った花火大会の翌日、僕はボランティアの清掃に行った。花火の残骸を片付けアスファルトに水をまく。 また来年来ようねって約束をして。 綺麗になった道路を見て昨日の思い出に浸る。 来年もまた君と見に行けます様に! 8.3 風鈴/冷たい麦茶/届かない声 日陰になった 縁側で冷たい麦茶を一口。 風鈴の音がちりんと響いた。 お盆は死者たちが帰ってくるという。 ともに過ごした君はもういない 君に伝えたい言葉を僕は何故言わなかったのか。 お盆になったら君もきっと帰って来る。 君の仏前でその言葉を伝えよう。 8.4 線路沿いの猫/夕焼け/約束の場所 僕の飼い猫が行方不明になってしまった。 あちらこちら探して回る。 沿線沿いを歩いて行ったよ、という話を聞いて僕は歩いて行った。夕焼けの町、遠い昔君と約束した場所で猫はいた。 やっぱり君の生まれ変わりなんじゃないか…… 僕は猫を抱きかかえた。 8.5 打ち上げ花火/浴衣の帯/遠ざかる背中 君と打ち上げ花火を見たのは去年。 綺麗な浴衣の帯がお別れの時に揺れていたのを思い出す。 まるで琉金のしっぽみたいだ。 君がいなくなった隣の席は寂しく、一人で見に行った花火大会。 金魚すくいで琉金を連れて帰った夜。 ……もう一度君に会いたいよ 8.6 朝の蝉/溶けたアイス/君の指 「行ってきます」 君は毎朝ラジオ体操に出かける。 帰ってきたら私はアイスを渡す。 「頑張ったね」 「うん!」 アイスのついた指を舐める君。 今年も蝉のなく朝。 「行ってきます」 君は高校生になって子供達にラジオ体操を教えている。 私はアイスを用意した。 8.7 盆踊り/提灯の灯り/亡くなった祖母 祖母は盆踊りが好きだった。 祭りの提灯の灯りの下で 私は盆踊りを踊る。ふと 隣を見ると祖母が踊っていた。 あぁ、もうお盆だから帰ってきたんだ。 祖母の踊りはとても風情があり浴衣の柄がいつも涼しげだ。 こうやって一緒に踊れるのは今日1日だけなのだ。 8.8 熱帯夜/エアコンの音/隣の寝息 眠れぬ熱帯夜にエアコンの音に混じって、隣から寝息がする。 そんなバカなと思って横を見るが誰もいない。 私は目を閉じて眠ろうとするがやはり隣から寝息がする。 私は電気をつけた。 隣には夫が横になっている。 確認してみたが、やはり息はしていなかった。 8.9 ひまわりの種/自転車の後ろ/あの夏 君の自転車の後ろに乗って疾走したあの夏。 大きな ひまわりが山のように咲いていてじっとこっちを見ているようだった。 「あれは食用のひまわりだよ」 と君が教えてくれた。 ひまわりの種を食べながらビールを飲むとそのことを思い出す。 8.10 雷雨/停電/君と二人 突然の雷雨で停電してしまい真っ暗な中君と二人だけ。 どうしよう、ドキドキする! これって恋? ううん、きっと違う。 だって君は女の子で私も女の子なんだもん。 違うよね? いや違う! やっぱり私は君に恋をしたみたい。 8.11 祭りの帰り道/金魚すくい/失くした指輪 祭りの帰り道彼女と出会った。 久々に会った彼女は手に指輪をしていなかった。 「失くしたのよ」 と言っていたが本当だろうか。 本当は別れたんじゃないだろうか…… 彼女はどこか危うくて、 まるで金魚すくいの金魚の様にすぐに死んでしまいそうだ。 8.12 入道雲/屋上のタール/青春の終わり 青い空と入道雲。 屋上に上がれば君がいて、いつも授業をサボっていた。 青春というのは決して綺麗なものばかりではない。むしろドロドロに溶けたタールのような煮え切らない想いが心に渦巻く。 懐かしいと思い出す。 それでも青春は美しかったのだ。 8.13 西瓜割り/目隠し/君の笑い声 「西瓜割りしようよ!」 突然そういう声が聞こえて目隠しをされた。 君の笑い声が聞こえる。 ぐしゃり! 西瓜のように僕の頭が割れる。 目隠しがずれて隙間から君の笑い声と笑顔が覗いた。 8.14 夏の夜/欠けた月/再会 いつかの再会を誓って僕たちは別れの挨拶をした。 ある夏祭りの夜。 屋台で偶然君と再会する。 一緒に境内で欠けた月を見ながら、昔話をする。 「また会える?」 いいよ明日の晩に 明日はきっと満月だから…… 8.15 終業式/制服の匂い/最後のチャイム 終業式が終わり最後のチャイムが鳴る。 「これから夏休みかぁ」 「どこか行く予定ある?」 「いや特には」 「俺も特に予定はない」 「それなら夏の間どこか行かない?」 「それデートのお誘い?」 「違うし!」 彼女の制服から微かに柔軟剤の甘い匂い。 8.16 夜のプール/水面の月/秘密 夜の学校のプールに二人でこっそりと泳ぎに行く。きっとこんなことがバレたら先生や親に怒られちゃう。 水面に月が映って真っ暗で、とってもドキドキする。 それなのにこんなにも楽しい! 君と二人で秘密を共有する。 いけないことをしている気分! 8.17 灼けた砂浜/波の音/君の手 焼けた砂浜を君の手を引きながら歩いて行く。 波の音が聞こえるから、ここは 砂漠でないはずだ。 いつまでもいつまでも終わらぬ先を越えて行く。 波の音がするからもうすぐ海に着くはずだ…… それなのにどこまで行っても砂しかない。 どこまで行っても砂、砂、砂…… 8.18 夕立/傘のない二人/濡れた肩 突然の夕立に私たちは2人走った。 グラウンドを走り抜けて校舎に入った時には2人ともびっしょり。 それでも君は私の濡れた肩を気にして教室にあった 自分のタオルを貸してくれた。 そういうところが好きだったんだ。 けれど私は思いを伝えられず、卒業したっけ。 8.19 風の強い日/帽子が飛んで/追いかける君 風の強い日だった。 帽子が飛んで追いかける君。 ほんの一瞬の出来事だった。 飛び散る鮮血。 今も思い出しては、頭の中が真っ白になる。 繰り返し繰り返し、あの日の記憶がよみがえる。 君はもういないのに…… 8.20 朝露/蜘蛛の糸/儚いもの 昨日は流星群の夜で星がいっぱい降ってきたから、朝起きたら蜘蛛の糸に星たちがたくさん引っかかっていた。 それは朝露みたいにキラキラと光って、とても儚い1つの銀河系になっていた。 蜘蛛の巣の銀河で星たちは夢を見る。 夢の中で生命が生まれ文明が生まれるのだ。 8.21 夏の終わり/風鈴の音色/別れ 風鈴の音色に導かれ夏の終わりがやってきた。 夏の終わりは悲しそうに別れを告げる。 風鈴の音色がチリンチリンと音を立て、夏の終わりは去ってゆくのを悲しんだ。 夏の終わりは風鈴の音色に少し似ている。 8.22 台風一過/青空/心の隙間 台風一家がやってきて、大雨を降らした後に台風一過とさって行く。 後にはいつもより青い青空とほんの少しの心の隙間ができて、そこに虹がかかるのだ。 いつもより青い空と心は、虹を迎え入れてキラキラと輝いた。 雨上がりの水たまりにそんな空と心が反射していた。 8.23 線香花火/火花の最後/短い命 線香花火が終わったら一緒に出かけようと約束していた。 線香花火の命は短い。 花火の最後はジジッ……と音を立てて消えてゆく。 最後の花火が消えた時、君もまた暗闇に消えてしまった。 彼女が幽霊であることに気がついたのはその時だった。 8.24 学校のプール/閉鎖の看板/思い出 今年は 酷暑であるため学校のプールが閉鎖になってしまって看板が出ていた。 僕が子供の頃は夏休みのプールが楽しい思い出だったけど、息子はプールに入れない。 だから休日市民プールに連れて行く。 学校のプールの代わりに楽しい思い出になればいいな。 8.25 夜風/白いカーテン/君の影 夜風が吹いて白いカーテンが揺れている。 ふと君の影がそこに写っている様な気がした。君と他愛のない話を毎日していた。 君の気配があるのが当然でいなくなるなんて全く考えなかった。 だから白いカーテンが揺れているのを見ると、君がそこにいるような気がする。 8.26 流星群/願い事/叶わない恋 今夜は流星群だ! 願い事をたくさんしよう! ちっとも叶わない恋の願い事を! すると姉貴が呆れたような顔して出てきた。 「あんたね!何人もの女の子と付き合えるわけないでしょ!そんなんだから何一つ叶わないのよ!」 「いいじゃん皆と付き合いたいんだし!」 8.27 古い写真/色褪せた君/あの日の光 私は古い写真をそっと撫でた、色あせた写真に写る君の姿は あの頃と変わらずセピア色に染まった写真はそれでも君の頬はバラ色だと感じることができた。 あの日の光の中、若いままの写真の君。 私はすっかり年老いてしまったよ。 8.28 空蝉/秋の気配/寂しさ 木の幹には空蝉がくっついていた。 蝉たちはこれでもかというほど元気な声で鳴いていたが、どうも最近は少し声が控えめになったような気がする。 まだまだ強い日差しの中に秋の気配がやってきた。寂しさを携えて。 蝉たちの恋の季節はそろそろ終わりのようだ。 8.29 残暑/汗ばむ手/最後のキス 残暑が私のところにやってきた。 「もうすぐお別れですね」 と言って私の汗ばむ手に最後のキスをした。 焼けつくような暑さから解放されるのは嬉しいけれど 残暑の寂しそうな顔を見たら、私も寂しい気持ちになった。 夏の終わりはいつだって物悲しい。 8.30 夕陽/長い影/君と歩いた道 夕陽が、長い影を落とす。 君と歩いた道を歩きながら僕は目を細めた。 小さかった君は今では立派な大人になった。 寂しくないといえば嘘になる。 駅に着くと、君と子供達の姿。 「おかえり」 年に一度でもこうやって会えるのが嬉しい。 8.31 夏の残照/枯れた花/さよなら 向日葵はすっかり枯れて幽霊の様な姿をしていた。夏の残照が照らし出す。 まるでこの世に『さよなら』を言っている様ではないか! 立ったまま死にたえ夏の終わりを体現している。 いいやきっと来年、新しい種から新しい向日葵たちと出会えるのだ。 その日を夢見る。
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作者:しとえ
2026/09/20 • 👁 63回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
2340文字 約5分で読了

夢喰い紳士

悲しき夢よ 恐怖よ 辛さから生まれた怪物よ どうかこの夢を食べておくれ 夢の中ですら 安らげないのなら この世は地獄 どこにも逃げることすらできない 夢よ夢よ夢喰いよ どうか私の夢を食べておくれ  窓辺にはドリームキャッチャー、アロマオイルを炊いてよく眠れるという枕。 どうか悪夢を見ませんように…… 「バク、バク、バク」 悪夢を食べてくれるおまじないを唱える。  もちろん睡眠薬は飲んだ。 寝つきが良くなると言うからホットミルクも。 ここまで書けばわかるだろうが、私はともかく夢見が悪い。 夜が来るのが怖い眠るのが怖い、だが人間というものは睡眠を取らなければ死んでしまうもので当然私も1日に最低限の睡眠は必要となる。 また睡眠を取らなければ体力は低下し、健康被害は甚大だ。 眠るという行為は必要なわけだが私にとって幸福だった記憶はあまりない。いつからこんなに眠るのが怖くなったのだろう。  大概は夢を見てそれは悪夢である。 昨日見た夢はどんな風だったか…そうだみんな死に絶えてしまったのだ。一人一人死んで消えて私1人。街中に怪物が闊歩し叫び声が聞こえて、私は耳を塞ぎ目を閉じて、それなのに怪物の姿が見える。どこかに逃げ出したいのにどこにも行けず、泣くこともわめくこともできず声を殺してそこから一歩も動けない。 また夢が切り替わって今度は別の悪夢だ。 私は何かから逃げている。 ひどく汚いところにいて、あぁ多分ここは水回りだ。掃除しても掃除しても綺麗にならない。 糞尿が溢れかえっていて、掃除したと思えばまた水が詰まり溢れ出し糞尿まみれになってしまう。 よくわからない閉塞感と何かに追われている感じ、いくら片付けても掃除しても全く綺麗にならない世界。 また別の悪夢が始まる。私は得体の知れない巨大なショッピングモールとも博物館とも駅の地下とも言えないような建物の中にいる。人はいっぱいいるのに顔は全く見えない。話しかけても何を言っているのか全く通じない。一体ここはどこだろう?得体の知れない不安が胸を押しつぶす。どこかに行っても一体どこに自分がいるのかさっぱりわからない。そうこうしているうちに世界が崩壊し始める。一体何に私は怯えて潰されてゆくのだろう。いけないまた私が死んでしまった。 世界はオールカラーのはずなのにひどく薄汚い、その上暗い。 そしてどういうわけだかいつも終わりかかっている。 夢から覚めれば訳が分からず泣いていたり、不安に押しつぶされそうになっていたり、悪夢から逃げて現実世界もやはり悪夢のようなものだ。 どこにも逃げ場がない。 お願い助けて! そう叫ぶが声は出ない。 そもそも夢の中で音声は酷く不鮮明だ。 ノイズがかかっているわけではないが、まるでノイズがかかってるかの様に聞こえない。 足取りは重く、そのくせ痛みははっきりと記憶に残る。 ……よくアニメなどで夢かどうか確かめるのに頬をつねったりするが、私の場合、夢の中の痛みははっきりと記憶に残っているのだ。 どこがどう痛かったかは分からないが、目が覚めれば痛かった記憶だけがはっきりと残っている。  今日もまた夢を見る。 一体私はどこを歩いているのだろう? 周りが死体だらけだ。 死体がネチャネチャする。嫌だなと思うが、どうすることもできない。怪物の声がする、あぁまた始まった…… 私は必死で逃げている、もう少しで追い付かれそう! 「助けて!助けて誰か!」 そう叫んだ時に誰かが私の手を掴んだ。 夢の中ではっきりと自分の声を出せたのは、ほぼ初めてなんじゃないかなという気がする。 もちろんそんなことはないのだが、話しても実感として声が潰れて何を言っているか自分でもわからなくなってしまうのだ。  私は何者かに抱えられている。 ふわりふわりと空を飛んでいる。 ――空に月 あんなにもはっきりと。 夢の中では光というのははっきり見えない。 どこまでも薄ぐらい夢の中で、月明かりがはっきりと見える。 それは美しく私を包み込んでくれる。 自分を抱えて空を飛んでいるのが歳の若い紳士だというのがわかった。 いつも顔などはっきり見えないのに…… 瞳が赤いのがわかる。 それは朝焼けの光に似ていた。 下には怪物。 うめき声をあげ世界を食い潰す。 「ダメ、下には降りないで!怪物に食べられちゃう」 私はとっさに叫んだ。 紳士が笑ったのがわかる。 「お嬢さん、こんな怪物は私が踏み潰してあげましょう」 彼はそう言うと怪物に向かって流れ星のように降りて行く。 怪物は彼の足元で小さくなってあっという間に消滅してしまった。 その時になってやっと私は彼の姿をしっかりと見た。 随分と古めかしい古風なコートをまとった紳士。 トンビコートというのだろうか?いや…二重回し? 彼はふわりとマントを広げる。 するとその世界のおぞましいものは全て消えてしまい、後に残ったのは月明かり。 夜明けの光に似た瞳でふわりと笑う。 「ありがとうあなた誰?」 「あなたが呼んだんですよ。私のことを」 彼はそう言った。 そして歌うような節回しでこう言ったのだ。  夢というものは人間の心の鏡像である。 記憶の処理の残像から生まれ混ざり合い、混沌とした意識の中で成熟される。  夢というものは人間の心そのものを映し出すのだ。 今日もまた一人苦しむ夢を見る者がいる。 ――夢喰いは夢の中へ―― 悪夢は人の心の混沌、そのものなのだ。 「あなたの悪夢おいしゅうございました」  そうか私の悪夢を食べてくれたんだ。 その日から私は悪夢を見なくなった。 悪夢はきっと私の心の不安、悲しみ、閉塞感。 行き場のない心たちだったんだ。  ドリームキャッチャーおまじない枕にホットミルク、それでも無理だから睡眠薬。心を必死で集めようとして、苦しいことから逃げようとして、だけどうまくいかない日々。 彼がやってきて食べてくれたんだ。  今日もまた夢喰いが悪夢を喰いに現れる。
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作者:しとえ
2026/09/19 • 👁 83回 • 💬 0件
その他
1302文字 約3分で読了

140字小説 呪いの人形シリーズ

6月22日 『呪いの人形1』 私は呪いのお人形。 それだというのにこの家の娘と来たら… 「やったー可愛い」 私の姿を見て 目をキラキラさせる。 えぇい!こうなった何としてでも呪いの人形のプライド見せてやる! 「すごい!ヘアアレンジしちゃお!」 娘は私の伸びた髪を見てルンルンで三つ編みに… 思ってたんと違う 『呪いの人形2』 私は呪いのお人形。 よし!それならば髪を1mぐらい伸ばして… 「え!?わーすごいー!!!!」 どうだ驚いたか! 「ヘアカットしちゃおう」 嫌!やめて、せっかく頑張って伸ばしたのに… 『呪いの人形3』 私は呪いのお人形。 どうやっても怖がらないなら実際に動いているところを見れば… 「え!!動けるの!?」 「う、うん」 「ええぇ!!!!喋れるの??」 「…うん」 「やだもっと早く教えてよ!!!!」 なんだかますます喜んで怖がる気配すらない。 …もうどうすりゃいいの。 6月23日 『呪いの人形4』 私は呪いのお人形。 夜中にガタガタ 窓の方から音がする。 侵入者だ。この家に泥棒なんていい度胸だな!返り討ちにしてくれる!! 私は髪を伸ばして泥棒をひっ捕まえて ブンブンと振り回す。 悲鳴を上げて逃げてく泥棒。 ザマーミロ! …しかし室内がめちゃくちゃになっているのどうしよう。 『呪いの人形5』 私は呪いのお人形。 私の持ち主の娘が上京してしまったらしい。 部屋はガランとしている。 ふん、別に寂しくなんか… 寂しくなんか…寂しく…やっぱり寂しいよ〜〜! というわけで、私は電車に乗って娘の引っ越し先に行った。 『呪いの人形6』 私は呪いのお人形。 娘に彼氏ができたらしい。今度部屋に連れてきて紹介すると言っている。 …は?ふざけんな! そんなヤツ絶対に認められるわけないだろ! という事で彼氏とやらを怖がらそうと思ったが…全く怖がる素振りがない。 聞けばに猫又を飼っているらしい。 おのれ猫又め〜!!!! 7月11日 『呪いの人形 7』 私は呪いのお人形。 そろそろ 持ち主が家に帰ってくる。 ギィーッと扉がきしむ。 ちょっと待って、その手に持っている人形は何だ! はぁ!?フランス人形聞いてない。 持ち主頬ずりなんかするんじゃない! 「仲良くしてね」 ってこんなやつと仲良くできるか! 『呪いの人形8』 私は呪いのお人形。 「じゃーんこれ買っちゃった!」 ビラビラの小さいドレスを持ってごきげんな持ち主。 「よし、お着替えしちゃお」 そういうと私の帯を解き出す。 「ちょっと待って!!それ私用なの?やめて!そんな恥ずかしい格好できない」 あ~れ〜!!!! 『呪いの人形9』 私は呪いのお人形。 ドレスにうんざりしていると例の金髪の人形がいきなり抱きついてきた。 「きゃ〜お揃いですわ」 「フランス人形と一緒だなんて」 私がそう言って拗ねると 「私はスーパードルフィーですわ」 「何それドルフィンてイルカ? スーパーで売ってるの」 「違います!」 何故か怒られる。 『呪いの人形10』 私は呪いのお人形。 今持ち主に絶賛お説教中である。 「どうしてちっちゃい女の子泣かしちゃったの!ダメじゃない」 私は悪くないもん! ここに突然現れたフランス人形。 「そうですわ!私がいじめられていたのを助けてくださっていましたの」 余計な事言うなよ!…恥ずかしいじゃないの。
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作者:しとえ
2026/09/19 • 👁 99回 • 💬 2件
ポエム・詩
132文字 約1分で読了

侵食熱にうなされて

私が あなたの中に入って 侵食し   一体化して あなたを支配しようか。  あなたに気がつかれないように そっと。 私の熱に侵されたらいい。 触れられなくても あなたの一部になれるなら…。 なんて 面倒なこと考えて ため息ついて やっぱり私は 正面突破しかできない なんてことを あなたを前に思ってる。
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作者:柊ことは
2026/09/19 • 👁 87回 • 💬 2件
コメディ・日常
4312文字 約9分で読了

壁を挟んだ言葉

# 壁を挟んだ言葉  天瀬こよいの進路希望調査票は、高校を卒業して一年半が過ぎても空欄のままだった。 「働くのか、進学するのか。そろそろ何か一つくらい決めなさい。もう大人なんだから」  朝食の席で母からそう言われ、こよいは返事の代わりに味噌汁を飲み干した。  似たような言葉なら、これまでに何度も聞いている。そのたびに求人サイトを眺め、大学や専門学校の資料を取り寄せては、開封すらせず部屋の隅へ積み重ねてきた。  けれど、この日は違った。  午後から、機械工学を学べる専門学校の説明会を予約していた。  こよいは久しぶりに外出着へ袖を通し、細長い黒色のケースを背負って家を出た。中には、サバイバルゲームで使用するアサルトライフル風のエアソフトガンが入っている。  午前中に馴染みの屋内フィールドへ寄ってからなら、その勢いで説明会にも行けると思ったのだ。銃を構え、決められた標的を狙っている間だけは、余計なことを考えずに済む。  だが、標的を撃ち抜くことと、自分の進路を決めることは、まるで別の話だった。  専門学校の前まで来たこよいは、ガラス扉をくぐっていく若者たちを、通りの反対側から眺めていた。  受付開始まで、あと十分。  五分。  一分。  開始時刻を過ぎても、こよいの足は横断歩道の手前から動かなかった。 「……やっぱり無理だ」  信号が青へ変わり、再び赤くなる。  こよいは説明会の予約画面を閉じた。視線を上げると、通りの先に漫画喫茶の看板が見えた。  気づけば、身体はそちらへ向かっていた。  案内された個室へ入り、黒いケースを壁際へ置く。背負っていたものを降ろした途端、外へ出るために集めてきた勇気まで、まとめて床へ落としてしまった気がした。  家には帰りたくない。かといって、今から説明会へ駆け込む勇気もなかった。  机上のパソコンを意味もなく操作していると、画面の隅に小さな広告が表示された。 『名前も顔も知らない誰かに、悩みを話してみませんか?』  顔を知られないのなら、失敗しても逃げられる。  こよいは匿名相談チャットの文字をクリックした。 『ただいま、話し相手を探しています』  三つの点が順番に明滅している。  やはり閉じようとカーソルを動かした瞬間、画面が切り替わった。 『話し相手が見つかりました』 『こんにちは』  こよいは返事を迷ったあと、同じ言葉を打った。 『なにか相談したいことがあるんですか?』  見知らぬ相手に、本当のことを話す必要はない。こよいは別人の話として書くことにした。 『友達のことで、少し』 『そのご友人は、あなたと同じ年齢ですか?』 『はい』 『今日、何かあったのでしょうか』 『専門学校の説明会に行けませんでした』  送信してから、こよいは眉をひそめた。これでは自分の話だと認めているようなものだ。 『なるほど。学校の前までは行けたのですね』 『なんで分かるんですか』 『行こうともしなかった人なら、“行けなかった”ではなく、“行かなかった”と書くと思ったので』  文字の選び方一つで、そこまで考える人がいるらしい。 『行けなかったのは、根性がないからだと思います』 『根性がない人は、説明会を予約して、家を出て、学校の前まで行ったりしません』 『でも、入れなかった』 『それなら今日できなかったのは、最後の一歩だけです』  こよいの指が止まった。  できなかったことなら、数えきれないほど思いつく。けれど、できたことを数えられたのは久しぶりだった。 『どうして、その学校へ行こうと思ったのですか?』  親に言われたから。  何かを決めなければならないから。  どれも間違いではない。それでも、自分の答えではない気がした。 『分かりません』 『では、行きたい場所ではなかったのかもしれませんね』 『そんなことを言ったら、どこにも行けません』 『行き先を決める前に、あなたが何から逃げているのかを考えてみませんか?』  静かな問いかけのはずなのに、胸の奥へ銃口を向けられたような気がした。 『高校のときの先生です』  考えるより先に、指が動いていた。 『先生が怖いのですか?』 『怖くはないです。嫌いなだけ』  人の形をした標的になら、迷わず引き金を引ける。けれど、あの教師の顔を思い浮かべるだけで、今でも指先が重くなった。 『高校三年のとき、進路を決められなかったんです。周りはどんどん決めていくのに、あたしだけ何も書けなかった』 『進路希望調査票ですか?』 『そうです。先生から、いつまでも空欄のままではいられないでしょうって、何度も言われました』  入力欄へ文字を打つたび、あの日の声が耳の奥で繰り返される。 『何か決めなきゃいけないことくらい、分かっていたんです。でも、あたしには何もなかった。先生と話すたび、自分だけが出来損ないみたいに思えてきて』 『それで、学校へ行けなくなったのですか?』 『卒業式にも出ませんでした』  画面には何度か『入力中……』と表示され、そのたびに消えた。 『その先生は、間違えたのだと思います』 『庇わないんですね』 『教師だからという理由だけで、正しいことにはなりません。その言葉であなたが傷ついたのなら、その先生は伝え方を間違えました』  胸の奥に固まっていたものが、少しだけ緩んだ。ずっと誰かに、そう言ってほしかったのかもしれない。 『でも、その先生が間違えたことと、あなたを見捨てたことは同じですか?』 『同じです。卒業してから、一度も会いに来なかったから』 『あなたから会いに行ったことは?』 『ありません』 『では、二人とも同じ場所で、相手が来るのを待っていたのかもしれませんね』  反論しようとした指は、何も打てないまま止まった。  しばらくして、相手から新しいメッセージが届く。 『今度は、私の相談を聞いてもらえますか?』 『相談する側だったんですか』 『本当は、そのつもりでここへ来ました』 『あたしでよければ』 『私は教師をしています』  こよいの指先が、わずかに強張った。 『以前、進路を決められない生徒を受け持っていました。その子のためだと思い、早く決めるよう何度も促しました』  偶然だ。進路を決められない生徒など、どこの学校にもいる。 『その子は少しずつ学校へ来なくなり、卒業後は一度も会えていません』 『会おうとはしたんですか?』 『何度も連絡しようと思いました。でも、私の言葉が原因なら、会いに行くことも苦しめるのではないかと』 『それで、何もしなかったんですか』 『はい』 『ずるいですね』 『そのとおりです』 『否定しないんですね』 『傷つけることが怖かったのではなく、これ以上嫌われることが怖かっただけなのかもしれません』  画面の向こうにいるのは、自分が知っている教師ではない。それなのに、一言一言が記憶の中にいる先生の声と重なり始めていた。 『謝りたいんですか?』 『謝って許されたいのだと思います』 『それなら、やめた方がいいですね。許してもらうために謝るのは、自分が楽になりたいだけだから』  相手からの返事が途絶えた。 『でも、その子がまだ同じ場所で止まっているなら、迎えに行ってあげてもいいと思います』 『会いたくないと言われても?』 『そのときは、ちゃんと諦めてください』 『厳しいですね』 『会いに行かなかった人に、優しくする理由はありません』 『あなたは、その先生に会いたいですか?』  会いたくない。そう打てばいいだけなのに、指が動かなかった。 『分かりません』 『では、嫌いという気持ちも、本当はまだ決めきれていないだけなのかもしれませんね』 『勝手に決めないでください』 『すみません。教師の悪い癖です』  その言い回しに、こよいは小さな違和感を覚えた。 『気持ちが空白のままだと、どこへも進めませんか?』  確かめるように打つ。 『いいえ。今なら、まだ空欄だから書き直せることもあると思っています』  心臓が強く脈を打った。 『先生の名前は?』 『あなたが本当にご友人の相談をしているのなら、先にあなたのお名前を教えてください』  逃げ道を塞ぐような返し方まで、記憶の中の先生とよく似ている。 『天瀬こよい』  送信した直後、薄い仕切り壁の向こうから通知音が聞こえた。 『聞こえましたか?』  再び、隣の個室から音が鳴る。 『聞こえました』  今度は、こよいの個室で同じ音が響いた。  隣から椅子を立つ音が聞こえる。  こよいも黒いケースを背負い、個室を出た。ほぼ同時に、隣の扉がゆっくりと開く。  中から現れた女性は、こよいの記憶より少し髪が伸びていた。けれど、驚いたときに右手で口元を覆う癖は、あの頃と何も変わっていない。 「……ほのか先生?」  桜庭ほのかは、大きく見開いた目でこよいを見つめた。 「本当に……こよいさんだったんですね」  チャットではいくらでも言葉を交わせたのに、顔を合わせた途端、二人とも何も話せなくなった。 「……とりあえず、出ませんか?」  先に沈黙を破ったのは、ほのかだった。 「ここで立っていると、ほかの方の邪魔になりますから」 「そういうところ、変わってないですね」 「こよいさんも、思ったことをすぐ口にするところは変わっていませんね」  二人は顔を見合わせ、どちらからともなく小さく吹き出した。  会計を済ませ、漫画喫茶を出る。いつの間にか雨が降ったらしく、濡れた歩道が朝の光を反射していた。 「サバゲーは、まだ続けていたんですね」 「それだけは。相手が何を考えてるか分からなくても、撃たれたら撃ち返せばいいから」 「話し合いより、ずいぶん簡単ですね」 「先生もやってみます?」 「丁重にお断りします」  即答だった。  こよいは久しぶりに、声を出して笑った。  笑い声が途切れると、ほのかは足を止めた。 「こよいさん。ごめんなさい」  言い訳も、許しを求める言葉も続かなかった。 「……まだ、許せないかもしれません。また先生に腹が立つかもしれない」 「それも、仕方ありません」 「でも、さっきの相談相手には助けられました。だから、その人の相談に答えたあたしも、少しくらいは役に立てたと思ってもいいですか?」 「もちろんです」  ほのかは微笑んだ。 「あのとき、私が一方的に助けるのではなく、こうして話せればよかったんですね」 「今さら気づいたんですか?」 「教師も、間違えてから学ぶことだってありますから」  二人は再び歩き出した。 「専門学校のことですが、もう一度探してみませんか。今度は、こよいさんが自分で行きたいと思える場所を」 「また逃げるかもしれませんよ」 「そのときは、逃げた場所まで迎えに行きます」  こよいは足元の水たまりを避け、小さく息を吐いた。 「決めるのは、あたしですから」 「ええ。今度は急かしません」 「……でも、手伝ってください」 「もちろんです」  行き先は、まだ空欄のままだった。  けれど今度の空欄は、何もない場所ではない。  これから自分で書き込める、最初の一行だった。
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2026/09/19 • 👁 101回 • 💬 0件
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2026/09/19 • 👁 80回 • 💬 0件
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作者:しとえ
2026/09/19 • 👁 101回 • 💬 0件