SF・ファンタジー
にゃお
607文字
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ある日、独り身の俺の家に大きな猫が一匹現れた。
「にゃお」
か弱く愛らしく鳴き声をあげるその猫は、動物を飼う余裕などないと自らを戒めてきた俺の急所を突いた。
気づけば俺は猫のために食事を用意し、寝床を準備し、甲斐甲斐しく世話をしていた。猫は俺が触れようとすると逃げてしまうが、俺の与えるモノはすべて受け取ってくれた。それがまたいじらしいやら可愛らしいやら。俺は猫をしこたま可愛がって毎日を過ごした。
そんな日々が続いて数週間。夜に眠っていると、身体の上に何かがずっしりと乗っかってくる感じがした。
薄っすら目を開けてみると、何やら大きな物体が上に乗っている。よくよく見れば、それは頭に獣の耳が生えた青年で、俺の顔をじっと覗き込んでいた。
「にゃお」
聞き慣れた悩ましい声にハッとして「お前は」と声を掛ければ、青年はニヤリと笑って俺の頬をぺろりと舐めた。
途端にカッと頬が熱くなり、俺は再び眠り込む。その翌日は寝坊し、俺は会社に遅刻した。
なんとか仕事をこなし、急いで家に帰ると、俺が可愛がっていた猫の姿が何処にもない。家も庭も探したが、見当たらない。
最後の挨拶くらい、してくれればよかったのに。そう俺が途方に暮れ、寂しい思いで一人晩酌をしていれば、ふいにインターホンが鳴った。
玄関に行ってみると、一人の青年が佇んでいた。どうやら隣の家に引っ越してきた子らしい。
人懐っこそうなその猫目を、俺は何処かで見たことがある気がした。
「にゃお」
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