SF・ファンタジー
248文字 約1分で読了

誤作動

クローン技術が社会一般に広まったのは遠い昔。 それで自分自身が死んだらクローンで復活するというのが一般化したのもかなり前だ。 それ以来人間はクローンで増えるようになった。 同じクローン体がいくつも存在する。 僕もまたたくさんいるのだ。 だが僕はその他大勢の僕とは外見も性格も違う。 どうやらこれは誤作動らしい。わずかなズレができて、それが元の形とは微妙に違う。 けれどそんな僕を、僕自身はとても気に入っている。 昔は一人一人違う人間だったらしい。 そして一人一人の違いは個性と呼ばれていた。 きっと僕も個性的なんだ。
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作者:しとえ
2026/10/18 • 👁 27回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
682文字 約2分で読了

黄昏にチョコバーガーはいかが?

ぐつぐつ煮えている寸胴鍋に、砂糖をぶち込んでかき混ぜる。 スプーンですくって、一口味見。 舌先に感じる素材のとろりとした風味にほのかな甘み。 まあ、悪くはない。私の好みではないが、最近の若者たちの間では、何にでも砂糖を加えるのがトレンドだからな。 でも、風味が何だかもの足りない気がする。 今回、友人がわざわざ融通してくれた希少材料を使ったのだ。 絶対に元が取れる値段で、売れるものを作らなければ! なにかもっとこうグッとくるような・・・ そうだ。あれ。あれがあったっけ。 冷蔵庫から先日スーパーで買ったカカオ70パーセントのやや高級なチョコバーを取り出して、鍋に投入。 素材の独特の匂いにチョコの甘い香りが加わって何とも言えない匂いが立ち込める。 なんとも魅惑的な香り。これなら、若者の掴みはOKのはず。 もう一度、味見して最終チェック。 甘みと苦みの塩梅がなんともグッド。 人肌程度に鍋の中身が冷えるのを待って、塊肉を取り出す。細かく刻み、レタスをたっぷり載せた特製バンズに一塊置くとその上から煮汁をたっぷりとかけた。 よし。新作チョコレートバーガーのできあがり。 そろそろ日が沈む。公園もにぎやかになる頃だ。 *  *  * 週末の黄昏時。 この公園はデートスポットとなっている。 いつものように屋台スタンドを設置すると、大声で呼びかける。 「新鮮なAランクレバーを使ったチョコレートバーガーはいかが。レアな人間の肝臓入り。お値打ち価格だ。この機会におひとついかが」 「人間のレバーだって!」 スタンドの前にはあっという間に列ができた。 やったね。今日の売上は期待できそう。 私は牙を剥いてニンマリ笑った。 <END>
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作者:HarukaR
2026/10/17 • 👁 27回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
656文字 約2分で読了

涙の水彩画

水彩画を描いていたら 途中で青い絵の具が足りなかった 涙が青かった事を思い出し それで補おう そう考えたけど 一向に涙を流す理由が見つからなかった 流れずとも 青が足りないままでは水彩画は完成しない それは困る 絵描きは 涙を流せる人を探す事にする ねぇ 泣いてくれないかい? そう訊ねても 首を縦に振ってくれる人はいなくて 水彩画の筆が進む気配は まるでない 絵の具を買いに走った方が早いようにも思えるが その絵は 涙を足さないと仕上がらないように感じた 他人のために泣いてくれるほど 誰しも優しくないのか それとも簡単に涙を流すほど みなヤワじゃないのか 結局 誰も泣いてはくれない 絵は未完成のまんま 悔しかった 続きを描きたかった 完成させたかった 絵の事を考えると 辛くて… 悲しくて… 涙が頬をかすめる あんなに必死になって 探した答え それは 絵描き自身の中に存在した 自分の絵を完成出来ずに流した涙 その涙で いよいよ水彩画は完成に向かう 絵に涙を足してみる するとどうだろう 待ち焦がれた青が 絵に加わるどころか 絵から色が どんどんと落ちていくではないか 涙に色彩は存在せず 描いていたのは水彩画 苦労の末に辿り着いた結果として 涙で青を補う事は 蛇足であると知る 絵は青が足りないままだけれど 絵描きは構わず 涙を青として描き続ける 絵の具はどんどん落ちてしまうが それでもいいと思えた いよいよ 水彩画は出来上がる キャンバスは 最後は真っ白になっていて 涙の本当の色を知る事になる 何も描かれてない絵が残る 絵描きはもう そこに筆を足す気はなかった 絵描きが描き足す手を止めたのなら きっとその絵は そこが完成なのだろう
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作者:lue
2026/10/17 • 👁 35回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
198文字 約1分で読了

廃墟

 廃墟に1人の男が住み始めた。 戦争で済む場所を失った男だった。 男に妻ができた、家族ができた。 家族は増え、外からやってきた人間も住み始めた。 いつのまにか小さな村になった。 小さな村はどんどんと大きくなり大きな町になった。 大きな町は都市へとなった。  いつのまにか廃墟は廃墟でなくなった。 そこは大勢の人がその大きな国になった。 だが戦争が起きて再びその国は廃墟となった。 今では、その歴史と名残を残すのみである。
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作者:しとえ
2026/10/17 • 👁 19回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
463文字 約1分で読了

ぶっとび☆ろじかる

友達の中にスゲェぶっ飛んだ奴がいる。 発想や言動もそうなんだけど、もうね、一目で分かるぶっ飛び方。 「何だよ、その奇抜なファッション!」 「実は俺、透明人間になったんだ。」 そんなド派手な格好をしているくせに、何を言ってるんだ? 俺は微塵も理解できなかったが、そいつはこう続けた。 「今から貴金属店で盗みを働いて、それを証明してやろう。」 AIカメラが不審者を見つけて、警備ロボにすぐさま拘束命令を送るこの時代に、盗み? そんなバカげた事があってたまるかよ。 しかし、そいつは堂々と入店し、すぐに戻ってきたかと思うと、ポケットから宝石たちを取り出した。 「ほら、簡単だった。何てったって俺は透明人間だからな。」 何でだ…? 何で警備ロボはこいつを捕まえなかった? 何でAIカメラはこいつを犯罪者だと判断しなかった? 俺には分からなかった。 人目にはこんなに目立つ、ド派手な奴なのに。 もはや、同じ人間とは思えない。 AIにとってもそうだったのかもしれない。 浮かれて道路に飛び出したそいつは、いつも以上にぶっ飛んだ。 AI自動運転の車に、ノーブレーキではねられて。
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作者:ごみがき
2026/10/16 • 👁 68回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
440文字 約1分で読了

星降る夜には

こんな寒い夜には星を眺めよう 冬は好きだ 空気が澄んでいるから 冬は好きだ 星空をよく見渡せるから 広い夜空を見上げると 遠い星に住む 遠い遠い君の事を思い出す 綺麗な星空を見上げると そんな君との距離が 少しだけ近くなる様な気がする 冷たい風を吸い込めば きっと君への素直な気持ちを伝えられる だから冬は好きだ 今日みたいな こんな冬の夜には 決まって 君に信号を送るんだ 今日みたいな こんな星の夜ならば きっと君まで届く様な気がするから 星の海を遠くまで遠くまで 君がこの星を去ってから この星はだいぶ穢れてしまったけれど それでもまだ こんな綺麗な星空が残っている こんな寒い夜ならば こんな寒い夜だから この満天の星空を君にも見せたい 今頃 君はどうしてるだろうか 今頃 君もこうして星空を眺めているだろうか 君の住む星からは この星は見えるのかな 星が瞬く度に 君への想いは溢れ出す 今すぐ逢いに行きたいけれど それはあまりに遠くて無理だから だからこうして 想いを星に乗せて 遠い遠い君まで 気持ちを届けよう 今宵は星が遠くまでよく見える 本日は星天なり
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作者:lue
2026/10/16 • 👁 48回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
1599文字 約4分で読了

未来からきた男

未来人が現れた。 タイムマシンに乗ってやってきたという。 ニュースは世界中で報じられた。最初は誰も信じなかったが、彼が持ち込んだ“何か”を見た瞬間、空気が変わった。それは、我々の科学では到底作れそうにない代物だった。 彼は落ち着いて説明した。言葉は滑らかで、態度は穏やかだった。質問が飛ぶたび、笑みを浮かべ、淡々と答える。 次々と機能が明かされた。まるで現代に蘇った魔法のようだ。 科学者たちは熱心に食い下がった。仕組みを知りたがった。 彼は一瞬だけ言葉を詰まらせたが、 少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。 「ええと……あなたたちに理解できるように説明するのは難しいのですが……そうですね、なんと言ったらよいか。まず、これは――」 そこから先は、誰にも理解できなかった。聞いたことのない用語の羅列。彼は懸命に何かを伝えようと努力しているようだったが、それは空回りするばかりだった。 彼の穏やかな笑顔は消え、なんとも言えない複雑な表情をしていた。 しかし、彼への称賛は続いた。我々の理解を遥かに超えるテクノロジーに人々は熱狂した。 --- 私は家のテレビでその映像を見ていた。世界でいちばん注目されている人間。 あんなふうに、誰かに囲まれたい。質問され、賞賛され、拍手を受けたい。 しかし私は何の取り柄もない平凡な人間だ。彼のようにはなれない…… いや、違う――その時、素晴らしいアイデアが閃いた。 タイムマシンで過去に行けば、私も未来人になれるのではないか。見慣れたスマホも、昔の人が見たら魔法の道具に映るだろう。 私は、タイムマシンを盗み出すことを決意した。 --- タイムマシンが保管されている施設には簡単に忍び込むことが出来た。 まるで盗んでくれと言わんばかりの警備の緩さに驚いた。 こんな重要なものが、こんなに簡単に盗めるものなのか――そう思った。 周りを警戒しながら、タイムマシンに近づく。そっと操作盤に触れると、光が点いた。思わず息をのむ。 パネルには数字の列が並んでいた。 私は指先で年代を入力した。 「……行けるのか?」 一瞬の静寂。そして、光が視界を満たした。 --- 世界が裏返るような感覚のあと、光が静まった。 空気が違うのを感じた。街並みも、人々の服装も、現代のものではない。私は未来人として、そこに立っていた。 ポケットからスマホを取り出す。周囲の視線が集まった。 「これは……?」 「光ったぞ!」 「まるで魔法だ!」 歓声が上がる。想像していた通りの展開だった。私は思わず笑顔になる。 「ええ、これは未来の道具です。誰にでも簡単に使える、とても便利なものです。」 拍手。驚き。熱狂。これぞ、私の求めていたものだ。 --- だが、次第に質問の内容が変わっていった。 「どうやって作るのですか?」 「この中には何が入っているのです?」 私は答えに詰まった。そこまでの知識はない。体裁を取り繕うように、必死に言葉をひねり出す。自分でも何を話しているのか分からなくなってきた。 「ええと……、あなたたちには理解できないかもしれませんが、半導体デバイスを用いて――、デジタル信号が――、つまり……」 自分の笑顔が強張っていくのが分かった。 焦り、緊張、恥じらい…… その時、私は理解した気がした。あの時の未来人がしていた複雑な表情の本当の意味を。 --- この時代に来てしばらくたつが、今でも熱狂は冷めていない。 人々は私を保護し、住まいと最低限の生活を提供してくれた。現代の生活と比べれば多少の不便はあるにせよ、生活自体は安定している。 なにより、この時代で特別な存在になれたことに、私はとても満足している。 私が現代に戻ることは、もうないだろう。 --- 私には必要のなくなったタイムマシンを眺めながら考える。 この時代でも、誰かがタイムマシンを盗みに来るだろうか。かつての私が、そうしたように。 しかし、あえて警備は厳重にはしない。あの未来人が、かつての私にそうしてくれたように。
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作者:さくら
2026/10/16 • 👁 32回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
2976文字 約6分で読了

テンプレ勇者

第一章:運命の旅立ちと最初の仲間 「おお、アルスよ! 死んでしまうとは何事だ!」  神聖ルドラ王国の玉座の間。お約束のセリフで始まったわけではないが、国王の言葉にはそれだけの重みと切実さがあった。  世界は今、復活した魔王の闇に包まれようとしている。 「アルスよ、お前が伝説の『光の勇者』の生まれ変わりであることは、その右腕にある聖痕が証明しておる。この『王家の剣』と『50ゴールド』、そして『薬草3個』を授ける。魔王を討ち倒し、世界に平和を取り戻してくれ!」 「はい、陛下。この命に代えても!」  御年十六歳の少年、勇者アルスは、一点の曇りもない真っ直ぐな瞳で頷いた。  城を出たアルスは、さっそく最初の町へと向かう。  道中の草原で現れたのは、お約束の最弱モンスター、青くてぷるぷるした「スライム」だ。 「体に気をつけてね、アルス!」  幼馴染の僧侶リィナが、頼んでもいないのに町の出口で待っていた。  彼女はアルスに密かな恋心を寄せる、少しお調子者だが回復魔法の天才である。二人はスライムをサクッと倒して経験値を稼ぎ、最初のレベルアップのファンファーレを頭の中で鳴らしながら、次の国を目指した。  道中の賑やかな酒場に立ち寄ると、大泥棒や荒くれ者に絡まれている、つんとした態度の美少女がいた。  エルフの国からやってきた、高い魔力を持つ魔法使いセレナだ。 「ちょっと、馴れ馴れしく触らないでくれる?」  アルスが割って入り、持ち前の正義感で悪党たちを成敗すると、セレナは顔を赤くしてそっぽを向いた。 「べ、別に助けてなんて頼んでないんだからね!  でも……まぁ、魔王を倒すっていう目的は同じみたいだし、一緒に行ってあげてもいいわよ。勘違いしないでよね!」  これ以上ないほどテンプレートなツンデレ台詞と共に、三人目の仲間が加わった。 ◆ 第二章:立ちはだかる四天王と伝説の武具  旅を続ける一行の前に、突如として激しい炎が燃え上がった。炎の中から現れたのは、魔王軍四天王の一人、火炎将軍フレアだ。 「ククク……よくぞここまで来たな、光の勇者よ。だが、お前たちの旅もここまでだ!」  フレアは圧倒的な火力の魔法でアルスたちを追い詰める。しかし、その時だった。 「待たせたな、勇者!」  大剣を担いだ熱血漢、戦士ガイが乱入してきた。ガイはフレアの炎をその肉体で受け止め、不敵に笑う。 「俺の故郷を滅ぼした魔王軍め……アルス、お前の背中は俺が守る! いくぞ!」  ガイの加入により、戦況は一変した。アルスはセレナの氷結魔法でフレアの弱点を突き、リィナの「ヒール」で傷を癒やし、最後はガイと二人の連携攻撃でフレアを撃破した。 フレアは「ば、馬鹿な……この私が、人間ごときにぃぃ!」と、お決まりの捨て台詞を残して爆散した。  四天王を倒したアルスたちは、次なる目的地、古代の遺跡へと向かった。そこには、世界を救うための絶対条件である『伝説の聖剣』が眠っている。  遺跡の最奥、台座に突き刺さる眩い剣。  アルスが手を伸ばすと、遺跡の守護者である古代のゴーレムが動き出した。試練の始まりだ。 「僕たちの絆の力、見せてあげる!」  激しい死闘の末、アルスが台座から剣を引き抜くと、周囲は眩い光に包まれた。 「これぞ、闇を払う伝説の武器──『アヴァロンの聖剣』だ!」  剣を手にしたアルスの攻撃力は跳ね上がり、ゴーレムを一撃で一刀両断した。これで魔王のバリアを破壊する準備は整った。 ◆ 第三章:魔王城の決戦と、覚醒  一行はついに、空が常に紫色の暗雲に覆われた「魔界」へと足を踏み入れた。禍々しくそびえ立つ魔王城。  城の門番、中ボス、そして残りの四天王たちを「くっ、ここは俺に任せて先に行け!」というガイのテンプレ自己犠牲(※のちに生存が確認される)を挟みつつ突破し、アルスたちはついに最上階の扉を開けた。  大きなパイプオルガンの音が響く中、豪奢な玉座に座っていたのは、漆黒の鎧を纏った魔王ガルバだった。 「よくぞここまで辿り着いた、虫ケラどもよ」  魔王は低く冷酷な声で笑う。 「光の勇者アルスよ。お前の力は認めよう。どうだ? 私の部下になれば、世界の半分をお前にやろう」 「断る! 僕が欲しいのは世界の半分なんかじゃない、みんなの笑顔だ!」  1ミリの迷いもなく誘いを一蹴するアルス。テンプレートな交渉は決裂し、最終決戦の幕が上がった。  魔王の力は圧倒的だった。  ガイの盾は砕かれ、セレナの魔力は底を突き、リィナも回復魔法を唱えすぎて倒れ込んでしまう。アルス自身も血を流し、膝をついた。 「ククク、所詮は人間よ。絶望と共に消え去るが良い!」  魔王がトドメの一撃を放とうとした、その時。 「アルス……諦めないで!」 「あんたなら、絶対に勝てるって信じてるんだから!」 「相棒、お前が俺たちの希望だ!」  倒れた仲間たちが、最後の力を振り絞ってアルスの名を呼ぶ。  その瞬間、アルスの胸の聖痕が、これまでにない激しい輝きを放った。アルスの脳裏に、これまでの旅の思い出が走馬灯のように駆け巡る。 「みんなの想いが……僕に力をくれる。僕は一人じゃない。これが、僕たちの、絆の力だぁぁぁ!」  勇者の覚醒。アルスの全身から黄金のオーラが立ち昇る。  魔王の放った闇の波動を、アヴァロンの聖剣が一刀両断する。 「な、何だと!? 私の闇の力を圧倒するだと!?  馬鹿な、あり得ん! 人間の分際でぇぇ!」 「これで終わりだ、魔王ガルバ! ──ギガ・ブレード・フラッシュ!!!」  アルスが放った、全魔力と絆を込めた最強の必殺技が、魔王の身体を真っ二つに引き裂いた。 「ぐはぁっ! 私が……この私が敗れるというのか……! だが覚えておくが良い、光がある限り、闇もまた……いずれ復活する……うわああああ!」  お約束の第二形態に変身することもなく、魔王ガルバは光の塵となって完全に消滅した。魔王の消滅とともに、魔王城は崩壊を始める。  アルスたちは急いで脱出した。 ◆ 第四章:そして伝説へ  魔王城が崩壊すると、世界を覆っていた紫色の暗雲が嘘のように晴れ渡り、温かな太陽の光が大地を照らした。  枯れていた花は咲き誇り、淀んでいた川は清らかな流れを取り戻した。  ルドラ王国に帰還したアルスたちを待っていたのは、国中の人々による大歓声のパレードだった。 「おお、アルスよ! よくぞ魔王を倒してくれた!  お前たちこそ、真の英雄だ!」  国王は涙を流して称え、アルスに「世界を救った大勇者」の称号を授与した。  城のバルコニーから、集まった万雷の拍手を送る民衆を見下ろす一行。 「終わったのね、本当に……」  セレナが少し寂しそうに呟く。 「これからは、それぞれの道を歩むことになるのかな?」 「何言ってるんだよ、セレナ」  アルスは爽やかな笑顔で彼女を振り返った。 「僕たちの旅は、これで終わりじゃない。世界には、まだまだ僕たちの助けを待っている人がいるかもしれない。だから……」  アルスはアヴァロンの聖剣を、青く澄み渡る空へと力強く突き上げた。 「また一緒に、旅に出よう!」 「もう、しょうがないわね!」  顔を赤くするセレナ。 「どこまでもついていくよ、アルス!」  微笑むリィナ。 「ハハハ、お前とならどこまでだって行ってやるさ!」  豪快に笑うガイ。  裏切りも、斜め上の展開も、暗い陰謀も何もない。  ただ世界を救うために戦った、真っ直ぐな勇者の物語。  彼らの足跡は『伝説』となり、後世の教科書の一ページ目へと、テンプレート通りに刻まれるのだった。  END
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作者:河内謙吾
2026/10/16 • 👁 31回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
1742文字 約4分で読了

『スズキの異世界転生』

急ブレーキの音が響いた。金属が軋むような悲鳴が、夜の通りに広がった。 次の瞬間、鈍い衝突音。遠くで誰かが叫び、タイヤの焦げた匂いが風に混じった。 やがて、けたたましいサイレンの音が近づいてくる。 ……そこまでしか、覚えていない。気がつくと、私は見知らぬ場所にいた。 柔らかな陽の光が差し込み、草の匂いがする。地面は柔らかく、土の温もりが掌に伝わってきた。空は驚くほど青く、空気は澄み切っていた。舗装された道も、ビルの影もない。 ――ここは、どこだ? 体を起こした瞬間、違和感を覚えた。手足の感触が、どこか違う。自分の体ではないような感覚。 鏡がないのに、顔が違うとわかる。皮膚の下に流れる鼓動が、まるで別の誰かのもののようだった。 私は、自分の名前を思い出そうとした。しかし、何も出てこない。記憶が霞のように散っていく。 交通事故。その言葉だけが、ぼんやりと頭の中に残っていた。 誰かが声をかけてきた。穏やかな顔をした青年だった。心配そうに私を覗き込み、「名前は?」と尋ねてきた。 口を開こうとすると、自然に言葉がこぼれた。 「……スズキ」 自分でも驚いた。なぜその名前が出たのか分からない。 彼はうなずき、「スズキさん」と私を呼んだ。 この世界での生活は、とても心地よかった。何を食べても美味しく感じた。日差しは穏やかで、風がやさしく頬を撫でた。近くの子どもたちと遊ぶ単純な遊びも、楽しくて仕方がなかった。 そうするうちに、少しずつ記憶が戻り始めた。 私は、食事をただのエネルギー補給だと思っていた。何を食べても味がしなかった。それが、当たり前の生活だった。 思い出すのは、仕事のことばかりだ。毎日、同じ時間に同じことを繰り返す。それが人生だと思っていた。 けれど、それは「生きている」と呼べるものだったのだろうか。 私には、ひとりの相棒がいた。同じ職場で働いていた人だ。無口だが、優しい人だった。一緒にいる時間は悪くなかった。 ときどき、仕事の合間に小説を読んで、独り言のように呟いていた。 「また異世界転生ものか。最近、多いよな。まぁ、好きだからいいけど」 私はその話に興味を示さなかった。 けれど今になって、その言葉を思い出す。もしあの人が今の私を見たら、どう思うだろうか。 日々が静かに過ぎていった。 ここでの生活は穏やかで、心が静まるようだった。しかし、どこか物足りなさを感じるようになった。 夜、星空を見上げながら思う。 あの人に会いたい。もう一度、一緒に仕事がしたい。 そんな願いを抱いたある日、目の前の景色がゆっくりと溶けていった。 気づくと、真っ暗な空間にいた。 上下の感覚もない。そこに、柔らかくも力強い声が響いた。 「聞こえるか」 声の主は、自らを“神”と名乗った。私をこの世界に導いた存在だという。 神は静かに告げた。元いた世界の“私”は、まだ完全に消えていない。深い眠りの中にいるだけなのだ、と。 「選べ」 神は言った。 「元の世界に戻るか。この世界で生き続けるか」 私は考えた。この世界は穏やかで、満たされている。ここにいれば、平和なまま生きていける。 だが、その時、私の中で何かが弾けた。記憶が一気に流れ込んできたのだ。 ――事故の瞬間。 私はひかれたのではなかった。ひきそうになったのだ。 歩道から飛び出した人影。ブレーキが踏み込まれる。 相棒の声が、すぐそばで響いた。トラックは壁にぶつかり、私は意識を失った。 相棒は怪我をしたが、命に別状はなかった。もうすぐ仕事にも復帰するらしい。私が目を覚ませば、また一緒に働ける。 私は静かに、しかし確かに神に言った。 「戻ります」 神は何も言わず、ただうなずいた。闇が白く光り始め、世界が遠ざかっていく。 元の世界に戻った私は、以前と同じように相棒と仕事をしている。 事故のあの日から、相棒は以前より慎重になった。ハンドルを握る手つきも、どこか丁寧だ。 昼になり、いつものガソリンスタンドで食事をとる。私は燃料でお腹を満たし、相棒はコーヒーを飲む。 洗車を終えたばかりの私は、白いボディを太陽にきらめかせている。エンブレムの“SUZUKI”の文字が、まぶしく光っていた。 エンジンの鼓動が心臓のように響く。 相棒と荷物を乗せて、アスファルトの上を滑るように進みながら、私は思う。 ――今日も、よい走りができそうだ。
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作者:さくら
2026/10/16 • 👁 28回 • 💬 3件
SF・ファンタジー
217文字 約1分で読了

コピー

何でもコピーできるコピー機ができた。 死んだペットをコピーして、食用の豚をコピーして、電球をコピーして、車をコピーして、何もかもがそっくりにコピーできる。 そのうち人間もコピーし始めた。初めは死んだ家族をコピーして、そのうち自分自身もコピーして。街中コピーした人間で溢れ返った。 やがて世界をコピーしたもので追いつくされるようになる。 仕方がないので、人々は地球をコピーしてそっちに移り住んだ。 一体これではどっちがコピーされたものなのやら……
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作者:しとえ
2026/10/16 • 👁 47回 • 💬 0件