SF・ファンタジー

涙の水彩画

656文字 約2分で読了
作者:lue
水彩画を描いていたら 途中で青い絵の具が足りなかった 涙が青かった事を思い出し それで補おう そう考えたけど 一向に涙を流す理由が見つからなかった 流れずとも 青が足りないままでは水彩画は完成しない それは困る 絵描きは 涙を流せる人を探す事にする ねぇ 泣いてくれないかい? そう訊ねても 首を縦に振ってくれる人はいなくて 水彩画の筆が進む気配は まるでない 絵の具を買いに走った方が早いようにも思えるが その絵は 涙を足さないと仕上がらないように感じた 他人のために泣いてくれるほど 誰しも優しくないのか それとも簡単に涙を流すほど みなヤワじゃないのか 結局 誰も泣いてはくれない 絵は未完成のまんま 悔しかった 続きを描きたかった 完成させたかった 絵の事を考えると 辛くて… 悲しくて… 涙が頬をかすめる あんなに必死になって 探した答え それは 絵描き自身の中に存在した 自分の絵を完成出来ずに流した涙 その涙で いよいよ水彩画は完成に向かう 絵に涙を足してみる するとどうだろう 待ち焦がれた青が 絵に加わるどころか 絵から色が どんどんと落ちていくではないか 涙に色彩は存在せず 描いていたのは水彩画 苦労の末に辿り着いた結果として 涙で青を補う事は 蛇足であると知る 絵は青が足りないままだけれど 絵描きは構わず 涙を青として描き続ける 絵の具はどんどん落ちてしまうが それでもいいと思えた いよいよ 水彩画は出来上がる キャンバスは 最後は真っ白になっていて 涙の本当の色を知る事になる 何も描かれてない絵が残る 絵描きはもう そこに筆を足す気はなかった 絵描きが描き足す手を止めたのなら きっとその絵は そこが完成なのだろう
2026/10/17 ・ 👁️ 34回 ・ 💬 0件

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