ポエム・詩
79文字 約1分で読了

夢明かりの晩に 俳句六連歌

秋風に 月明かりさす 夜が来る 窓開けて 耳をすませば 虫の声 すすきの穂 銀に輝く 月の夜に 中秋の 夜道明かるし 月影よ 水面には 映る月影 別世界 水月の 夢の世界へ 想ひ馳せ 俳句六連歌
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作者:しとえ
2026/09/20 • 👁 79回 • 💬 0件
コメディ・日常
547文字 約2分で読了

縁切り雀

よう、俺は雀の太郎。みたらし団子みたいにツヤツヤな羽根が自慢のイケてる雀だぜ。  俺は色んな家の木を転々として暮らしている。最近じゃあ、電線に留まる事もしばしばあるが、やっぱり木の質感ってのが俺は好きだね。  少し前は、とある婆さんの家の木にいたんだ。その婆さんは随分手先が器用で、キラキラ光る綺麗な宝石を使った首飾りや、真珠みたいに綺麗な肌をした人形を作ったりしていた。  俺はその婆さんが窓辺で作業をしているのを見るのが好きでさ、よく木の上でチュンチュン鳴いて応援してやったもんだ。  けれど、いつしか婆さんは器用な手先で、光る薄っぺらな板をいじり始めてな。窓辺でブツブツ、ブツブツ……昔居座った寺の坊さんみたいに何かを喋って、ただ板を触るだけになっちまった。  悲しかったよ。俺は、婆さんが綺麗なモノを作ってる姿が好きだったのにな。まあ、仕方あるまいな。そうなっちまったのなら仕方あるまい。それが、アンタの望む事なら。何処にでもいる雀如きが、止められる筈もない。  やがて、太陽が顔を出した朝、俺は婆さんの家の木から飛び立った。あれからしばらく経ったが、婆さんは元気だろうか。顔を見てやりたいが、もうあの家が何処にあるのかも分からんぜ。  何せ俺は、雀の太郎だから。鳥頭の俺には、婆さんの行く末など知る由もねえのだ。
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作者:ころもやぎ
2026/09/20 • 👁 96回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
577文字 約2分で読了

湖の人魚と私

「はじめまして…」 握手から始まる、不思議な物語。 「あなたの名前は?」 「あなたの好きなものは?」 「年齢は?」 訪ねても、言葉が通じない。 私が笑うと、あなたも笑う。 私が困ると、あなたも困り顔になる。 まるで、鏡。 私は人間。 あなたは……人魚…? 水掻きのついた手。 顔や腕には、キラキラ光る鱗肌。 瞳は、この湖と同じ綺麗な青緑色。 私は、陸で。 あなたは、水の中から顔を出して、一緒に話す。 話す…と言っても、言葉はわからない。 しかし、身振り手振りと表情で、何とか通じ合う。 この人魚さんといると、自分らしくいられる。とても居心地がいい。 ずっと、こんなふうに話していたい。 人魚さんと……ずっと、一緒にいたい。 私も、一緒に、水の中で生きられたらいいのに……。 想いが頬を伝う雫となり、水にしたたり落ちる。 人魚はそれを見て、同じく雫をこぼした。 「……あっ、ご、ごめんね 泣かないで…」 放った言葉と同時に、人魚の両腕が伸びてきて、冷たい手のひらが、頬を覆った。 ………泣かないで そう言われた気がした。 この人魚さんと、言葉を交わしたい。 知りたい、あなたのこと。 私は、頬を覆っている人魚さんの手の甲に、自分の手のひらを添えて心を込めて言った。 「……私、あなたとお話しがしたい。 あなたの言葉を、教えて?」 人魚は、少しの間きょとんとした面持ちをすると、理解したかのように、花のように微笑んだ。 (終)
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作者:蓬田灯子
2026/09/20 • 👁 91回 • 💬 0件
ポエム・詩
85文字 約1分で読了

勝手にオセロ

恋をすると あまりにも白黒で もう少し グレーが 遊びがほしいね。 ほら あなたの笑顔で 黒が一気に白にかわった。 私に向けられたかどうかなんて わからないのにね。 『あまりにもオセロ』より
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作者:柊ことは
2026/09/20 • 👁 64回 • 💬 0件
SF・ファンタジー
2899文字 約6分で読了

寿命を呑む酒の話

先日叔父が急死した。  血管も見えないくらいだった腕は骨の輪郭が分かるまで痩せ細り、僅か一週間で、文字通り別人と呼ぶべきレベルまで変貌を遂げていったのだ。  息を引き取る三時間前。食器を下げに来た私を捕まえて、叔父はこんな話を語ってみせた。 「僕は多分、もうあと少しで死ぬだろうな。でもね、後悔はしてないんだよ。最後に美味い酒をたらふく呑めたからね」 「え、もしかして叔父さん酒の飲み過ぎでこんなになってんの?」  私が今までテレビや雑誌で得た知識と照らし合わせてみたところ、アルコールの過剰摂取による症状は、今の叔父のそれとはどう頑張っても結びつかない気がする。それとも、まだまだ私の知らない人体の神秘なるものが眠っているのだろうか。  叔父の方に目を向けてみれば、私が考え込む様子を見て、口元だけで楽しそうに笑っている。以前のように豪快に声を上げながら体をくの字にする笑い方は、今の状態では恐らくもうできないのだろう。 「[[rb:昴 > すばる]]。お前は僕の次によく酒を呑むから、多分お前のところにも来るんだろうなぁ」 「来るって何が?」 「死神」 「あー。あんまりがぶがぶ飲んでると、叔父さんみたいにお迎えが早く来るってことね。肝臓によく言い聞かせとくよ」  それは確かに、叔父の様な派手な呑み方を繰り返していれば体も早々に白旗を上げてしまうことだろう。あくまでも、酒に関することで言えば、叔父は手本ではなく悪い例として見るべきだ。 「そうじゃないよ……いや、別にそれも間違ってはいないんだけどなぁ、その答えなら八〇点くらいかな」  高いと言えば高いが、些か微妙な点数だ。足りない二〇点は果たして、何だというのか。素直に聞くのもなんだか悔しくて、叔父さんに視線だけをじっ……と送ってみる。無意識の内に目を細めていたらしい。 「僕はね、死に神に会ったんだよ。この世の何処を探しても見つからないような、旨い酒を呑ませてもらったんだ」  可哀想な人だ。きっと過剰に摂取され過ぎたアルコールのせいで幻覚でも見えたのだろう。わざわざ否定するのも酷だろうと判断し、適当に相槌を打ちながら叔父に背を向けた。 「昴」 「なに?」  名前を呼ばれ、振り返ることはせず足だけを止める。私の背中に、叔父は最後の言葉をそっと残した。 「信じなくてもいい。死神はもしかしたらお前のところには来ないかもしれない。でももし来た時、酒を呑むかはお前次第だよ。よく考えて決めるといい」  次に部屋を訪れた時、叔父はもう息をしていなかった。  お通夜や告別式の準備は慌ただしく進んでいき、なかなか涙を流す暇も見つけられなかった。何もかも全てが終わり、やっと一息つけると見上げた空には、大きな月が青白い顔をこちらに向けている。 「叔父さん、今日の月キレイだよ。これは月見酒しないと勿体ないよね」  台所からグラスと一升瓶を持ち出し、縁側にゆっくりと腰を下ろす。家族は皆疲れて寝てしまっている為、できるだけ音を立てないように細心の注意を払った。 「かんぱーい」  誰もいない空中へ向けて、小さく呟いた。返事なんてある筈がないし、もしあったらそれはホラー展開だろう。 「おう、乾杯!」  ……返事なんてあってはいけないのだ。だって、私以外は皆寝ている筈だし。だって、ここは私の家の敷地内だし。  現実を受け入れたくなくてひたすら納得のいく理由を考えていると、持っているグラスに何かがぶつかる音がした。私の頭よりも高い位置から、再び誰かの声が聞えてくる。 「ほらお嬢さん。乾杯だ!」 「ひっ」  誰もいるわけがない。幻聴だ。きっと酔いが回っているせいだ。心の中で何度も何度も繰り返したが、声は三度、頭上から降ってくる。 「お嬢さん、ノリが悪いぞぉ。折角のキレイな月と旨い酒なんだ。楽しくやろうじゃないか」  耳に届く声の調子は楽しげだ。怯えてばかりの私の態度に、気を悪くした様子はないようだ。意を決して、ゆっくりと顔を上に向けてみる。そこにいたのは、夜の闇を取り込んでしまった様な、大きくて真っ黒な影。よく見ればそれは、人の形をしている。背中だ。顔を上に傾けていく。視界を占める月の割合が大きくなっていくにつれて、段々と人影の後頭部も見えてくる。後ろで一つに束ねられた黒髪の下には、月明かりで薄っすらと照らされた浅黒い肌が見え隠れしている。私の視線に気が付いたのか、人影は黒い尻尾を揺らしながらこちらを振り向いた。 「ん? どうかしたかお嬢さん? もしかして酒が足りないのか?」 「え? いや、違いま……す……」  言葉を続けられない。どう見たって家族の誰かではないし、ご近所さんにもこんな大男はいない。となるとやはり……—— 「あ、ああ空き巣っ!」  慌てて逃げ出そうと後ろを向いた私の頭が、ガシリと鷲掴みされた。そのまま身体ごと向きをくるりと変えられる。 「空き巣じゃぁないから落ち着け。俺は死神だ」 「死……神……?」  自称死神の男は[[rb:五八 > ごはち]]と名乗った。死神は抱えている大きな酒樽から直接酒を呑み、表面に書かれた名前を愛おしそうに撫でてみせた。 「これはこの世のものではない酒でな、そりゃあもう最高にうまくてなぁ……酒呑みはみーんな手を出したくなっちまうんだ。……だが、ワシらのような死神ならともかく、生きてる人間が飲むと寿命を吸い取っちまう。駄目だと解っていてもどんどん飲んで、最後には命を呑み尽くして死んじまうんだ。故に【[[rb:消虫 > しょうちゅう]]】と呼ばれている」 「消虫……」  死神の話を聞いて、叔父の最後の言葉を思い出した。叔父は言っていた、死神が来たと。とんでもなく旨い酒を呑ませてもらったと。記憶を辿っている私のことなど気にせず、死神は話を続ける。 「ワシが見えるってことはお嬢さん、アンタも相当な酒吞みだろう。興味があるのはわかるが、まだ若いんだ。やめといたほうがいい」  ほんの少しだけ躊躇した。でも、死神が言うように私も相当な酒吞みだ。叔父に言われたように、よく考えて…… 「五八さん、ここに注いで下さい」  先程まで入っていた焼酎は飲み干して、空になったグラスを突き出す。呆れた顔をしながらも、死神は酒樽を傾けてくれた。  グラスを鼻に近付ければ、密の様な甘い香りを感じ取れる。喉に流し込んだ酒は喉を焼くかと思うほど熱く、かと思えばすっと余韻を残して消えてしまった。残っているのは、取り残されてしまったような、なんだか寂しい感覚だけ。  今なら叔父さんの気持ちが解る。こんな酒、たとえ一口でも呑んでしまったらもう後戻りなんてできっこない。視線を手元に落としてグラスを確認した。注がれた分はもう残っていない。 「五八さん……」 「仕方のないお嬢さんだ」  そっと、グラスを持つ手を死神に近付ける。それだけで察せられてしまう。もう一杯……あと一杯……暮らしを口へ運ぶ手が止められない。  やっと手が止められた頃には、私の視界は天を向いていた。もう、指先さえ動かすのが億劫だ。 「やっぱりこうなるか。それじゃあ行くとするか」  死神に手を引かれ、横たわる己の体を見下ろしながら、私は消虫を呑みに行った。  叔父さんにもまた会えたら、二人で消虫を呑むのも悪くない。
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作者:周雨
2026/09/20 • 👁 104回 • 💬 2件
コメディ・日常
1885文字 約4分で読了

白の嫁入り

「雨って言ってたけど晴れてんじゃん。そろそろ梅雨も終わ……?」 「どうしたのさ」  部屋着のまま外を見ていた兄の言葉が不思議な途切れ方をした。何やら、動揺しているようだ。 「はっ、白米……」 「今朝はパンだよ。白米は昼食べて」 「違うって! 白米! 白米の嫁入り!」 「まだ寝ぼけてんの?」 「だから早く寝ろっていつも言ってんのに」  訳のわからないことを叫ぶ兄を放置し、母と私は食事に戻った。  それでもまだ、兄は外を指差し叫び続ける。 「ほら見ろってこっち! 白米の嫁入り行列だろこれ!」  窓際へ近付き、兄と場所を交代する。外には確かに、白米が列を成していた。  和服に見を包んだ白米達は白い手足を生やし、アスファルトを踏みしめて進んでいる。  中には湯気の上がる桶を持っている白米もいる。あの中に炊きたてのご飯が入っているのかもしれない。 「マジだった……てか白無垢なんだね。やっぱ日本米だから?」 「かもね。黒留袖着てるのもいるし」 「冷静過ぎない? 冷めてんの? 現実に」 「ほらよく見なって。あんたが食べたがってた白米もあるよ」 「炊飯機で炊いたやつがいい」  静々と動き続ける白米達は、よく見れば両端の列でそれぞれ違う旗を掲げている。  どちらの旗にも、何か書いてあるようだ。 「あの旗なんか書いてない? えーっと『夢ぴかり』と『二目惚れ』だって」 「それってどっちも米の品種じゃなかった?」  記憶を探って唸る私と兄を順番に見て、それから再び白米の行列を見遣る母。  真剣な顔をして、口を開いた。 「品種改良の儀、ってこと?」 「えっ、それって俺達が目撃しちゃっててもいいやつなのっ?」 「いいんじゃない? 農家の人見当たらないけど」  そうなのだ。白無垢や紋付袴など神前式スタイルで固めた白米の軍勢はいるのに、道のどこを見ても農家らしき人の姿がない。  人間は、私達のような見物人しかいないようだ。 「品種改良って農家の人抜きでやっていいのかなぁ?」 「そもそも白米同士が意思持ってやることじゃなくない」 「そうなんだけど」  他のギャリーもこれは品種改良の催しだと思っているらしい。 「まぁ何でもいいか。ほら、ご飯食べちゃって」 「はーい」 「米食べたくなってきた」  面白がって見ていたものでも、変化がなければ飽きるというもの。  母達に続き私も窓から離れようとした時、状況に変化が訪れた。 「あ、見て! 見てあれ!」 「なんだよ今度はー。俺腹減ってんだけど?」 「いいから見てってほら! お母さんも!」 「何……?」  白米行列達の進行方向から現れた、新たな影。それは別の白米の群れだった。 「こっちドレス着てるよ。教会式だ!」 「テレビでしか見たことないやつみれるかも」  新たな白米の群れは、純白のウエディングドレスを纏った白米を先頭に、モーニングやドレスを着た白米達で構成されている。  ウエディングドレス白米は、ベールを風にはためかせながら、両手で裾を摘んで一心不乱に走っている。 「今度は『秋男とこまち』だって! 花婿攫いに来たのかな?」 「花婿攫われるパターンをあんまり見たことないね」  あっという間に白無垢と紋付袴の白米の前に立ったウエディングドレス白米は、そのままの勢いを殺すことなく、紋付袴の白米を殴り飛ばした。 「入った右ストレート」  次いで、行列の中へと吹き飛んだ紋付袴の白米の上に、ウエディングドレス白米が何かを振りかける。 「何かけたんだろあれ」 「塩じゃない?」 「白米には塩でしょ」 「俺はお前らが怖い」  塩を振り終えたウエディングドレス白米は、白無垢白米と仲良く手を繋ぎ紋付袴の白米を食べ始めた。  紋付袴の白米の親族らしき白米達は、散り散りになって逃げ出している。 「これが食物連鎖かぁ」 「品種改良じゃなくて?」 「もう……何でもいいよ……」  捕食されていた紋付袴の白米が完全に消え去ると、落ちていた紋付袴側の旗の文言が変化していた。 「『こまち惚れ』か……美味しそうな新品種ができたねー」 「早く食べてみたいな『こまち惚れ』」 「あんなに怖がってたのに?」 「米そのものに罪はない」  白無垢勢とウエディングドレス勢が、元々の白無垢勢の行進方向へと動き出した時、突然発生した霧が、窓から見える全ての景色を包み込んだ。  そして、霧が晴れる頃には何いなくなっていた。 「あ、朝ごはんまだ食べてないわ」 「私もまだ残ってたわ」  兄と揃って食卓へと戻った時、テレビから朝のニュースが聞こえてきた。 「〇〇県が本日、米の新品種『こまち惚れ』を発表しました」  私は黙って兄を見た。  兄は私からまず目を逸らし、テレビに向けた目を逸らし、最後にようやく手元のパンへと視線を固定した。 「食べられるみたいだよ」 「…………買ってみるか」
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作者:周雨
2026/09/20 • 👁 81回 • 💬 0件
恋愛
858文字 約2分で読了

終電の恩恵

 「じゃあ、家についたら連絡するね」  「うん、お疲れ様」  駅の改札をくぐり、急いでホームまでの階段をのぼる。  駅構内特有の生暖かい空気が頬と、かじかんだ指先を包む。  1歩、2歩、3歩と小刻みに段差をのぼるたびジャック・オッフェンバックが作曲した『天国と地獄』脳をかすめる。    今日は残業が長かった。  新しいプロジェクトのプロジェクトマネージャーになり数週間。  プロジェクトマネージャー自体は慣れている。  ただ、毎回新しいプロジェクトが立ち上がるたびに、感覚を掴むのが大変だ。  計画書の作成やスケジュールの設定。  そろそろ、実行フェーズに入れる。  この段階で残業とは、私が仕事ができないのだろうか…。  …いいや、考えるのはやめよう。  駅のホームが見えてきた。  シルバーの車体に赤色の帯が装飾されている。  見慣れた電車だ。  すでに、人は乗り始めている。  私は急いで、乗り込もうと走る。  頭の中ではヴァンゲリス『炎のランナー テーマ曲』が流れる。  間に合う、間に合う。  その瞬間、電車のドアが閉まった。  あ…、やばい、閉まる。  シャルル・グノーの『操り人形の葬送行進曲』が流れてきた。  私は会社の操り人形だ。  こんな時間まで、残業をし、挙句の果てには終電を逃した。  携帯のメッセージ音が鳴る。 「電車乗れた?」  あの子からの一言。    冷たくなって関節が動かない指で画面を操作した。 「乗れなかった」 「じゃあ、うち来る?ここ最近一緒にいれなかったし」  シュトラウスII『喜歌劇《こうもり》序曲』が流れる。  私はホームのベンチに座り、真顔で画面を操作する。 「いいの?」 「もちろん、じゃあ、駅の外で待ってるよ。明日はお休みだし二人でゆっくりしようよ」 「わかった。待ってて」    私は急いで、駅のホームをあとにする。  2段、4段、6段と大股に階段をくだる。  さっきまで冷たかった指先が、生暖かい空気のおかげか、熱をおび、頬は少し緩む。  久しぶりのお泊り、何をしようかな。  私は緩んだ頬を隠せないまま、あの子の元へ行く。  遠くからあの子の姿が見える。  エルガー『創作主題による変奏曲《エニグマ》』が大きな音で頭に流れる。
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作者:ReiN.
2026/09/20 • 👁 82回 • 💬 0件
恋愛
698文字 約2分で読了

終わった二人

ある昼間の喫茶店で、パシーンと私の頬が軽やかに打たれた。 「甘ったれるな!」  そう怒鳴るのは、私の親友の一人である。しなやかな細い体つきで、背丈もそれなりにあるウルフカットの彼女は、目鼻立ちの整った顔を鬼のように歪ませていた。私を打った綺麗な手は、小刻みに震えている。 「けど、でも、でもさ……」  頬を打たれた私は、それでもヨロヨロと言葉を紡ごうとした。しかし、彼女はそれを「うるさい」の一言で断ち切ってしまう。 「アタシ達、もう終わったんだよ。あの人に、アタシ達は選ばれなかった。今はそれだけ。もし奪おうとしてるなら、アタシが許さない。あの人の幸せを壊す権利は、アタシ達にはないんだ」  彼女は私にハッキリとそう言った。そこで私は、この前行ったばかりの、ずっと好きだった同級生の結婚式を思い出す。  彼は幸せそうだった。私でもなく、目の前で顔を歪ませる彼女でもない、全く別の人と幸せそうに祝福のヴェールで包まれていた。それが、今までに見た景色の中で一番美しくて、とてつもなく忌々しかった。 「今すぐ前を向けとは言えない。でも、振り返っても追いかけても、皆不幸になるだけ。だったら、立ち止まって今ここで一生分泣き喚きなさい。通り過ぎた過去へ甘える前に……アタシに甘えてよ。アタシは、今ここにいるんだから」  ゆっくりと席に座った彼女は、放心状態となった私の手を握った。よく見れば、彼女の目元が濡れて光っている。ああ、貴女も、本当は悔しいんだね。それでも、弱音を吐かずに私に寄り添ってくれるんだね。優しくて、カッコよくて、可愛い私の親友。  彼女を前に、随分前から乾いていた頬に温かな涙が伝う。私達の恋が、幕を閉じる音がした。
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作者:ころもやぎ
2026/09/20 • 👁 91回 • 💬 0件
ポエム・詩
100文字 約1分で読了

ひみつの薬

まだ私は 地球として あなたを抱いていたいのです。 でも そろそろ 身体が熱くて。 どうか ひみつの薬を そっと地球に 塗ってください。 まだまだ あなたと旅をし 子や孫まで抱かせてください。 『ひみつの薬を そっと地球に』より
続きを読む
作者:柊ことは
2026/09/20 • 👁 111回 • 💬 2件
SF・ファンタジー
740文字 約2分で読了

白い宇宙船の観測者

個体De-naedは、ある星を管理する存在だ。  彼女は、目的地に到達したらしい。 「すごく水があるね」  De-naedは窓から外を眺め、目を細める。 「この星どうかな?」  個体θ-N-01は個体De-naedに聞く。   「まだ観察しないとわからないよ」  彼女はその星の生命体を観察する。 「あら、よく手を繋いでいるね」 「そうだね、どういう意味かな?」 「個体同士、柔らかい部分を近づけて、呼吸を乱しているね」 「効率は悪そうだけど……彼らには必要なんだろうね」  二個体は首をかしげる。  長い期間、観察していくうちに、その星は徐々に活気を失っていく。 「個体同士そんなことしないで、もっとやることあるのに」 「ちょっと今回の星は私たちに向いてないね…」  二個体は落胆した。 「あぁ、繁殖行為の時間だね」 「そうだね」  彼女たちは行為を繁殖目的としか見ていない。  その周期は、どちらの身体にも負担を与えないよう設計されている。  ふと、彼女たちは、観察している星の行為を真似る。  De-naedとθ-N-01は、同じ温度を持つ指同士を、確かめるように絡ませる。 「やっぱり、どういう意味なのかわからないね…」 その後、De-naedは自慢の白い宇宙船のハンドルを握る。 「ここから約1,400光年……いや、条件次第で3,200光年先ね」 「じゃあ、次の栄養摂取周期までには帰還できるね」   ――彼女たちはそれを、昼食とは呼ばなかった。 恒星を糧とする文明にとって、 時間と距離は“空腹”の単位でしかなかったからだ。 De-naedはθ-N-01に問う。 「ねぇ、人間たちが言っている、あの”身体を選ぶ言葉”って、なに?」  θ-N-01は答える。 「わからないよ、だって私人間じゃないもん」  彼女の自慢の白い宇宙船は、人間には、飛行機雲にしか見えないようだ。
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作者:ReiN.
2026/09/20 • 👁 89回 • 💬 0件