恋愛
終わった二人
698文字
約2分で読了
ある昼間の喫茶店で、パシーンと私の頬が軽やかに打たれた。
「甘ったれるな!」
そう怒鳴るのは、私の親友の一人である。しなやかな細い体つきで、背丈もそれなりにあるウルフカットの彼女は、目鼻立ちの整った顔を鬼のように歪ませていた。私を打った綺麗な手は、小刻みに震えている。
「けど、でも、でもさ……」
頬を打たれた私は、それでもヨロヨロと言葉を紡ごうとした。しかし、彼女はそれを「うるさい」の一言で断ち切ってしまう。
「アタシ達、もう終わったんだよ。あの人に、アタシ達は選ばれなかった。今はそれだけ。もし奪おうとしてるなら、アタシが許さない。あの人の幸せを壊す権利は、アタシ達にはないんだ」
彼女は私にハッキリとそう言った。そこで私は、この前行ったばかりの、ずっと好きだった同級生の結婚式を思い出す。
彼は幸せそうだった。私でもなく、目の前で顔を歪ませる彼女でもない、全く別の人と幸せそうに祝福のヴェールで包まれていた。それが、今までに見た景色の中で一番美しくて、とてつもなく忌々しかった。
「今すぐ前を向けとは言えない。でも、振り返っても追いかけても、皆不幸になるだけ。だったら、立ち止まって今ここで一生分泣き喚きなさい。通り過ぎた過去へ甘える前に……アタシに甘えてよ。アタシは、今ここにいるんだから」
ゆっくりと席に座った彼女は、放心状態となった私の手を握った。よく見れば、彼女の目元が濡れて光っている。ああ、貴女も、本当は悔しいんだね。それでも、弱音を吐かずに私に寄り添ってくれるんだね。優しくて、カッコよくて、可愛い私の親友。
彼女を前に、随分前から乾いていた頬に温かな涙が伝う。私達の恋が、幕を閉じる音がした。
\ 次の作品を探す /

読者の感想・応援メッセージ