昔、あなたが教えてくれた。
最初の抽象絵画ができた理由を。
何が描いてあるか、分からない。
でも目が離せない。
そんな作品を見た画家が描いた絵がはじまりなんだって、あなたは教えてくれた。
自分の感じたことが、もし作者の意図と違っても別の意味が生まれることもある。
不正解にも意味はある。
とあなたは自分の考えを続けて語った。
私はその時、あなたみたいだと思った。
私はあなたを見つめる。
キラキラした目で、美術館の絵を見つめるあなたの横顔を。
――
高校を卒業して、お互いの道に進む。
私は教師を目指し教育学部へ、あなたはずっと夢だった美大に。
学生同士の恋人関係なんて、いつか綻ぶ。
どこか諦めに似た一般論で、大好きなあなたと疎遠になっていく事実から心を守った。
久しぶりに会ったあなたは、絵にのめりこんでいた。
クマすら隠さない、髪はボサボサ。
手先はボロボロ。
「忙しいの?」
「うん。」
「前も言ったけど、あなた体弱いんじゃん。」
「……そうだね。」
「やめろなんて言わないけどさ、例えば画力を活かせる他の道とか……」
「……。」
「……ごめん。ねえ、前に言ったお店行かない?
あなたの好きなパンケーキが有名だか――」
「ごめん、忙しいから。」
ガタッと立ち上がりあなたはお金を置いて、そそくさとカフェを出る。
スマホから謝罪のメッセージを送る。
私は理解しようとした。理解できないまま、それでも見ずにはいられなかったあなたを。
大学を卒業し、私は晴れて教師の道に進む。
ほどなくあなたの訃報を聞いた。
お葬式には、もちろん行った。
何度か会ったことのあるあなたのお父さんは涙の止まらないまま、死因を説明してくれた。
……でもどこか現実味がなくて、その言葉はグシャグシャになった紙のように形を失って、私には届かなかった。
日常に戻る。
不器用な人、スポットライトが当たらない人は世の中にたくさんいる。
そんなことは重々承知だ。
私にとって、それがたまたま最愛の人であっただけ。
――雫が一滴、書類の上に落ちてしまった。
いけない……、もう思い出すな。
もう思い出すな!
周囲の先生方にばれないように、迷惑にならないよう、涙を拭い心を強く律する。
あなたの言葉を思い出しながら、PCで今期のテスト問題を作成する。
「作者の気持ちを答えよ。」
正解は作らなきゃ。大事でしょ……。
正解から外れたら、バツをつけなきゃいけない。
でも理解できなくても、あなたは鮮やかだった。
不正解でも、あなたとの鮮やかな思い出は消えてくれない。
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「あーあ、きょうもピッカピカにはれてるな」
てるおくんは、ベランダのまどをあけて、おっきなためいきをつきました。
おそとは雲ひとつない青空です。おひさまが、まぶしそうにニコニコ笑っています。
ほんとうなら、お外でおにごっこをしてあそべる大好きな天気のはずでした。
でも、今のてるおくんには、このおひさまがちょっぴりうらめしく思えます。
なぜなら、3日まえにおじいちゃんから、最高にカッコいいプレゼントをもらったからです。
それは、カエルの目玉がついたみどり色のカッパと、おそろいのみどり色の長靴でした。
「雨、ふらないかなぁ」
てるおくんは、まいにち部屋のなかでカッパを着て、長靴をはいて、ぴょんぴょんとジャンプしていました。
お母さんには「お部屋で長靴をはくのはやめて!」とおこられてしまいます。
外であそぶのは楽しいけれど、いまのてるおくんは、どうしてもこのカッパと長靴を「本番」でつかいたくてたまらなかったのです。
4日目の午後、ついにそのときがやってきました。
お部屋でミニカーであそんでいると、急にまわりがうす暗くなりました。
おひさまが、大きな黒い雲にかくれたのです。
ポツ。……ポツポツポツ。
まどのガラスに、ちいさな水滴がぶつかる音がしました。
「あ、雨だ!」
てるおくんの心臓が、ドキン、と大きくはねあがりました。ずーっと待ちのぞんでいた、ほんものの雨です。
「おかあさん! 雨! カッパ! 長靴!」
てるおくんは、あわてておもちゃを放りだし、玄関へダッシュしました。うれしすぎて、手と足がいっしょにうごいてしまいそうです。
「おちついて、てるちゃん。あせらなくても雨は逃げないわよ」
お母さんの声なんて、耳にはいりません。てるおくんは、カッパをハンガーからひったくりました。
「うわっ、手が、手が通らない!」
あせればあせるほど、カッパのそでに腕がうまくはいりません。
みぎの穴にひだりの手をつっこんでしまい、カッパのなかでモゴモゴともがきます。やっと頭を出せたと思ったら、今度はボタンがうまくはまりません。
「ちがう、そこじゃない! ひとつズレた!」
ボタンをかけちがえて、カッパのすそがチグハグになってしまいました。
でも、もうがまんできません。てるおくんは、そのままのいきおいで長靴に足をツッコみました。
すぽん、すぽん!
あつめの靴下をはいていたので、すこしきつかったけれど、力まかせにおしこみました。
「いってきます!」
ガチャンと扉をあけて、てるおくんは飛びだしました。
お外は、しっとりとした雨の世界。
空からふってくる冷たいしずくが、カッパの頭のフードを「トントン」とやさしく叩きます。
「わあ……!」
はじめて着たカッパは、雨をちゃんとはじいて、てるおくんを守ってくれました。
あしもとを見ると、アスファルトのくぼみに、ちいさな水たまりができています。
てるおくんは、みどり色の長靴で、そのまんなかへ思いきりジャンプしました。
バシャーーーン!
あがった水しぶきが、おひさまの光とはちがう、キラキラとした宝石のように輝きました。
てるおくんは嬉しくて、カエルのように何度も何度も、水たまりをぴょんぴょんはねまわりました。
「ゲコ、ゲコ、ゲコ」
どこからともなく、カエルのなき声が聞こえてきました。
てるおくんはあたりを見わたしましたが、カエルのすがたは見えません。
「あれれ? カエルさん、どこにいるの?」
てるおくんが草むらを見ると、ぴょんぴょんとカエルが出てきました。
カエルも、てるおくんと同じ、雨を待っていたようです。
「あっ! いた! きみも雨が好きなの?」
てるおくんはカエルと同じようにぴょんぴょんとはねながら、となりで話しかけます。
「てるちゃん、かぜひくからもう帰っておいで」
お母さんがやさしく声をかけます。
「はぁい。じゃあまたね、カエルさん!
また、雨がふったらあそぼうね!」
てるおくんはカエルとやくそくをして、おうちに帰っていきました。
「てるちゃん、雨、楽しかった?」
「うんっ! カエルさんとつぎのあめの日も遊ぶんだ!」
「そう、よかったね」
お母さんはやさしく笑いながら、てるおくんの頭をタオルでふいてあげました。
「さあ、おやつにしましょう」
「やった! きょうのおやつはなんだろう?」
くんくん。
「あっ! クッキーだ!」
「せいかーい。手をあらっていっしょに食べよう」
「わーい!」
てるおくんは元気にへやに入っていきました。
つぎのあめの日は、いつだろう。
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「りゅうちゃん放課後一緒に帰ろ? わたし今日お留守番なの」
「ぼく今日、裏山行くよ。かなちゃんも行こうよ」
「またスライムおじさんのとこ? 先生は行っちゃだめって、言ってたよ」
「でもおじさん言ってたんだ。スライムと遊びたかったら一緒にいる時間がいっぱいいるって」
「危なくないの?」
「ぜんぜん」
チャイムが鳴り、色とりどりのランドセルが流れるように校舎から出てくる。ほとんどは同じ方向へ流れ進みそれぞれの帰路を正しく辿る。
その中で二つ。小さな二人は群れから逸れ、悪びれる様子もなく裏山へと進む。
まだ黄色い太陽はジリジリと二つの帽子を照らし、麓の木々は歓迎するように葉を鳴らした。
「あ! おじさん!」
リュウジは川べりに倒れている人を指差し、駆け出す。「おじさん」の右のふくらはぎには水色のスライムが覆うように乗っていた。
周りの何匹かはそれを眺めているかのように無造作に散らばり囲っていた。
「おお。お前か」
「りゅうちゃん! おじさんスライムに襲われてる!」
「おじさん、大丈夫なの?」
「さっき、ちょっと枝で切っちまってな。今、スライムが治してくれてんだ」
しばらくもたたないうちに仕事を終えたスライムはぴょこぴょこと跳ね、または擦り進み、当然のように徘徊を始める。傍観していたスライムたちも同様に活動を始める。
「あのスライムはおじさんの友達?」
とリュウジはおじさんのふくらはぎには興味を示さず、他のスライムに紛れてしまったおじさんの友達を探していた。
「どうだろうな。たまたまだからなぁ。でも治してくれたんだから友達なんだろうな」
「おじさんは、ここで、何してるの?」
はっきりとした口調で、思い切ったようにカナが問う。
「おじさん」はよっこらせと木の枝を拾い、砂利を避け土肌に直径1メートルほどの円を描く。
次にその枝でスライムを刺し円の線上にポテっと落とす。
「見てなよ」
スライムは線に沿ってずりずりと進み始める。進んだ跡の線は薄くなっていた。
「線を食べてるの?」
とカナ。
「ははは! そうかもしんねぇな。ほら、もうすぐ一周しちまうからお前さんらで線を足してやんな」
二人は拾い上げた枝で円から線を描き延ばす。スライムは正しく沿って進む。
気が付けば周りのスライムたちも加わり、みな線を「食べて」いた。
「ぼくたち友達になれたかな!?」
眩しいリュウジの瞳に、男は柔らかく頬を緩め、頷く。
「そのうち顔を覚えてもらえるさ。そしたら助けてくれるかもしんねぇな」
「ねぇ、おじさん」
飽きたのかカナは枝を放っていた。
「スライムは、生きてるの?」
「……なぁお嬢ちゃん。ここのスライムは何で水色なんだと思う?」
「川があるから?」
「そう正解だ! 木の上にいるスライムは緑だし、這いずり回ってるスライムは茶色だ」
「それで、生きてるの?」
「スライムって食べれるのかなぁ?」
カナの後にリュウジが続け、リュウジは「おじさん」の表情を見てギクリとする。
「なぁ、お前ら。もうここには来るな。今まで黙ってたけどな、スライムがいる所には熊が出るんだ。だからスライムにもう近づくな」
「だっておじさん! スライムと友達になれるって言ってたじゃん!」
リュウジはこの「大人の言葉」に経験がある。
またごまかそうとしている。
嘘をつこうとしている。
「じゃあこうしよう。スライムは絶対食べちゃいけねえ。何があってもだ」
「死ぬの……?」
怯えるカナと、リュウジは眉間を寄せ未だ男を睨み上げていた。
「死ぬより怖いことが起きる」
とわざとらしく声を低くする男に
「おじさんは、嘘ついてる!」
リュウジは食ってかかる。
「ぼくたちがスライムと友達になったら、友達取られちゃうから、おじさん嘘ついてるんだ!」
まいったなと言わんばかりに男は頭をボリボリ掻き、
「じゃあ本当に約束だ。スライムは友達だ。だから絶対いじめたり、ましてや食べたりするんじゃねえぞ。分かったな」
と、下手な白旗を上げ、宥め、子どもらに背を向けた。
当たり前じゃんと、言い捨て、すっかり機嫌を損ねたリュウジは、ひったくるようにランドセルを拾い上げ、背負う。
バイバイも告げずに歩き出すとカナの走り寄る音がした。
「りゅうちゃん! スライムぜったいおいしいんだよ」
「かなちゃん、スライムは友達だよ。食べちゃだめだ」
「でもきっとその内おじさんが全部食べちゃうよ」
「え……?」
「そうなる前にさ、食べてみようよ。こないだバーベキューでパパから火の付け方教えてもらったの!」
「焼いたら、そうか、お腹壊さないよね」
「お塩とタレも持ってくるね!」
「うん! かなちゃんと一緒に来て良かったよ!」
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よく、「燃えるような夕焼け」という時がある。でも、あれは例えじゃなくて、本当に燃えてるんだと思う。
秋になると、空が高くなるという。空気が澄んで、夕暮れ時の赤色が一年で一番、不気味なほど鮮やかに見える季節だ。窓から見上げる今日の空も、まさに一面の茜色だった。うろこ雲の一つ一つが、内側から激しく発光しているように赤い。
僕はベランダに出て、冷たい金属の手すりに寄りかかった。耳を澄ますと、どこからか「パチパチ」という音が聞こえる。乾燥した落ち葉を踏む音ではない。もっと高い場所——空のずっと上の方から降ってくるような、何かが爆ぜる音だ。
――パチ、パチ……バチッ。
音が少し大きくなった。気のせいか、熱気のようなものまで肌にまとわりついてくる。十月の終わりの冷たい風が吹いているはずなのに、頬がじりじりと焦げ付くように熱い。そして、むせ返るような、妙な匂いが漂ってきた。
僕は目を細めて、赤く染まった雲の塊を凝視した。
「……嘘だろ」
そこにあったのは、ただの雲の影ではなかった。赤と黒のグラデーションの中で、人の形をした何かが、もがき苦しむように身をよじらせている。一本、また一本と、黒い腕のようなものが虚空に向かって伸びては、真っ赤に燃え上がって崩れ落ちていく。そのシルエットの一つの輪郭が、見慣れた斉藤の後ろ姿と不気味なほど一致していた。
斉藤は先週から学校を休んでいる。先生は「家庭の事情」と誤魔化したが、誰も斉藤と連絡が取れず、「神隠しではないか」と噂になっている。
――まさか。
空を見ながら固まっていると、空からパラパラと白い粉が落ちてきた。雪ではない。それは僕の手の甲に落ちて、黒い煤(すす)のような跡を残した。むせ返るような匂いの正体は、きっとこれだ。
夕焼けが美しいのは、空気中の塵や埃が太陽の光を乱反射するからだと、理科の授業で習った。でも、もしその塵が、空で焼かれている「誰か」の灰だとしたら……。
日が沈みかけ、空の赤みが急速に失われていく。もうすぐ、夜が来る。誰かの断末魔を残して。
明日の秋晴れも、きっと美しい夕焼けを見せるだろう。その時、空の向こうで燃え上がるのは、一体誰なのだろうか。
ひらひらと舞い落ちてきた白い灰を払い落としながら、僕はあの美しい空の「燃料」に選ばれないようにと、心の中で祈っていた。
(了)
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6/29
今年は珍しく夏のボーナスが出た。
年末年始に頑張った甲斐があった。
ただ今は休みが欲しい。
どう考えても精神的にも肉体的にも休養が必要だ。
巷で流行ってる「スパイス」を買ってみようと思う。
「ラストドラッグ」なんて言われてるけど、違法じゃないみたいだし依存性もタバコ以下らしいからものは試しだ。
近くに売ってる店あって良かった。
7/5
今日は休日。
大してすることもなかったので「スパイス」を飲んでみた。
1錠1500円は高くないか? どうなんだろう、と思ったけど。
飲んだ直後は何も思わなかったけどまず飯が美味い。
やたら美味い。思わず笑った。
冷凍チャーハンが馬鹿みたいに美味しく感じられた。
さらにだ。
ビールで頭が真っ白になった。
美味すぎる。
美味すぎた。
ヤバいなこれ。
7/8
月曜日に何の副作用も二日酔い感も無かったので平日だけど「スパイス」飲んだ。
仕事終わりの疲れがあったせいか少しふわふわしている。
ただの白米なのに感動出来た。
外食するのが馬鹿らしい。
いや外食の方がやっぱり美味く感じるのかな。
まぁいいや。
気持ちいい。
7/9
牛丼買ってきた。
なんだか味が濃くてキツかった。
やっぱり白米がいい。
味覚が敏感になっているのかな。
それより今日は音楽だ。
イヤホンで爆音で聴いたら胸の奥まで音が押し寄せた。
まさに怒涛。絶頂。
涙が勝手に流れてきた。
この歳になって音楽に感動出来るなんてな。
「スパイス」とはよく言ったものだ。
7/11
あいつが10錠12,000円でいいって言うから20錠買った。
下手に外食やらしょうもない飲み会に行くくらいならスパイス飲んで白米の方が何千倍も満足感ある。
今日はやたら眠たい。
疲れてるのか。
やっぱり連休が欲しい。
7/15
スパイス→ビール→白米&しらすにウーロン茶。
最強。
楽しくて仕方がない。
加奈に振られたのも今となっては運命だった。
彼女がいたらスパイスに倍の金額かかってた。
7/18
仕事したくない。
帰ってからも仕事仕事仕事。
せっかくスパイスあってもゆっくり楽しめない。もったいない。
社食が不味すぎてとうとう食パンに変えた。
食パンとコーヒーの方が遥かに美味しい。
やっぱり味覚が変わったのかな。
塩分摂りすぎたり添加物が無いと美味しいと思えないよりマシ。
7/30
熱が出て病院に行った。
栄養失調らしい。
野菜も摂ることにしようと思ってトマト買ってみた。
今の野菜は高いな。
でも塩ちょっと振るだけでこんなに美味しいなんて知らなかった。
最近はウーロン茶もエグく感じる。
水最強。
8/5
母親から盆は帰るのかと連絡がきた。
せっかく連休でスパイス楽しめるんだ。
家族がいるなんて冗談じゃない。
8/13
盆休み最高。
スパイス最高。
そういえば最近風俗にも行ってないがそもそも性欲がわかない。
なんてコスパいいんだスパイス。
「ラストドラッグ」とはよく言ったものだ。
楽しすぎる。
8/15
盆休みが終わる。
仕事行きたくない行きたくない行きたくない。
誰とも会いたくない。
家にいたい。
いやだいやだいやだいやだ。
8/16
携帯解約した。
SNSがうっとうしい。
音楽があればいい。
もう仕事は行かない。
スパイスは定期便にしてくれた。
8/17
ブッチした初日ともあってはらはらしたけど今は落ち着いた。
少し前からコンビニの500円ワインにハマってる。
なんてうまさだ。
8/22
親が乗り込んできて大変だった。
びょう院だの施せつだのうるさかった。
かみ切ってないくらいなんだっていうんだ。
やせたんじゃない。
食事が改ぜんされたんだ。
てん加物のないけんこう的な体だ。
新しい仕事さがすか。
8/29
やっとけいさつからかい放された。
い法じゃないってはじめから言ってるのに。
ばかめ。
やっとスパイス飲める。
8/30
スパイスかみくだくとこんなに甘いなんてどうして今まで気づかなかったんだ。
かんだ後の水がまたうまい。
きもちいい。
9/
ぜんぶおいしくない。
スパイスだけおいしい。
まずいものはたべなくていい。
まずいものはぜんぶどく。
9/20
木がうたってる。
小とりがうたってる。
ちきゅうがまわってる。
きもちいい。
1 0 が つ
か な
こ えが きき た い
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聖地巡礼
という言葉があるがこれもそれに該当するのだろうか。
彼女のことを推しだと思えば確かにそうかもしれないが。
駅で降りると雨が降っていた。傘を開く。
君が好きだった赤い色の傘を。
駅前の喫茶店、君とよく一緒に入った。
君はここのチーズケーキが好きで、 残り惜しそうに最後のひとかけらを食べていたことを思い出す。君がいなくなって、もう十年も経つのにここの喫茶店は変わらない。
――いや、変わったか 。
マスターが息子さんへと代替わりした。
味は一緒。いや、君に言わせたらちょっと違うのかもしれないが。 喫茶店を出ると 2人で一緒に歩いた、通りを歩く。
学生時代この道を何度君と歩いただろう。
君との記憶を遡って行く。
それはタイムマシーンに乗ったかのように。 君がそばにいることがあまりにも当たり前すぎて君のいない日々が来るなんて夢にも思わなかった。君のいない世界をあまりに辛い。
タイムマシーンがあれば、今すぐ君に会いに行くのに。
君の魅力的な笑い声を聞くために……
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北の町で、こんな話を聞いた。
────────────
たどり着いたのは、田舎の無人駅だった。 ガス燈の心もとない明かりが、ホームと駅名標を照らしていた。
駅名標に目をやると、文字はかすれてしまっていて、読むことができなかった。 ホームの時計も私の腕時計も止まっていて、今が何時なのかも分からない。 あたりには家の明かりひとつ見えず、虫の声さえしない。聞こえるのは、自分の呼吸だけだった。
ホームにぽつんと置かれたベンチには、黒いカバンを胸に抱きトレンチコートに身を包んだ男がひとり、座っていた。帽子を目深にかぶっていて顔は良く見えないが、唯一見える男の口元に、私は懐かしさを覚えた。
――誰かに似ている。
そう思ったけれど、それが誰なのか思い出せない。記憶をたどろうとすると、胸の奥がかすかに痛んだ。
その男は、蝋人形のような印象で気配を全く感じない、まるで絵のようだった。
――この人は、なにか知っているだろうか。
そう思い、男に声をかけようと手を伸ばしたそのとき、鳴り響く汽笛が、私を現実に引き戻した。
列車がホームに到着し、ドアが開く。
「それに乗るといい。君は、まだ早い。」
男は少し顔を上げ、列車を見ている。 弾かれたように飛び乗ると、私の背後でドアが閉まった。振り返ってガラス越しに見ると、男は、微笑んでいた。
満天の星空の下、再び絵のように沈黙した男のカバンが、もそり、と動いた。
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とあるホテルの裏路地に、みすぼらしい少女が住んでいた。彼女はホテルの従業員が建物の裏から捨てる残飯や使えなくなった品々を漁り、生活の基盤を整えている。たまに衣類やタオルがあるとラッキーだ。少女は、路地裏でネズミと一緒に這い回る生活に慣れきっていた。
そんな日々を送りながら、ふと路地裏をちょっと出て小銭稼ぎに行こうとした時だ。路地裏の入り口を出てすぐ、ポロシャツのちょび髭男と出会った。小綺麗な身なりと、微かな香水の匂い、それから腕に巻かれたピカピカ輝く金の腕時計を見て、少女は「彼はホテルの客だ」と気づいた。
ちょび髭男は、少女をまじまじと見つめ、数秒後に口を開く。
「紙とペンだ」
「はい?」
「紙とペンを持ちなさい。それからファイルもあった方がいいな。君はもっと別の時間潰しをすべきだ」
言いながら、ちょび髭男は足元を見た。少女もまた足元を見ると、目線の先には、ちょび髭男の履く美しいグリーンのサンダルと、少女の履くみすぼらしいスニーカーがある。貧富の差が一目瞭然だなと少女が思って足を見つめていれば、突然ちょび髭男が自らの履くサンダルを脱ぎ始めた。
「これをあげよう」
「へ、いや、貰えませんよ。こんな綺麗な靴は」
「いいから」
彼は何処からともなく取り出した紙袋に脱いだサンダルを入れると、少女へ押し付けた。少女が当惑していれば、やがてホテルの入口付近から大きな声が聞こえる。
少女が顔を向ければ、淡いレモンイエローのポロシャツを着た青年がこちらに向かって何かを叫んでいた。仲間か何かだろうか。
少女がぎょっとしている間に、ちょび髭男が歩き出してしまう。靴はどうするのだと少女が足元を見やると、不思議な事に、彼はいつの間にか眩しいグリーンの革靴を履いていた。
手品でも見せられたのか。そう呆然としている少女を置いて、ちょび髭男は去って行った。少女の手元には、グリーンの美しいサンダルだけが残る。
その夜、少女は夢を見た。あのホテルから、まるでおとぎ話に出てきそうな世にも美しいサファイアブルーの大きな馬車へ乗り空へ帰っていく人達の事を。彼らは皆、カラフルなキャンディに似た見た事のない衣装へ身を包んでいた。
もしやあのちょび髭男もいるのかと目を凝らせば凝らすほど、少女はその人々の鮮やかさに魅入られ、見惚れ、いつしか夢から覚めていた。
そうしてあくる日、少女は自分の足にピッタリの綺麗なサンダルを履いて外へ出た。しかし、その足はいつもの習慣となったゴミ漁りへは行かない。紙とペンを買いに、彼女は世界を歩き出したのだ。
夢に見た、あの美しい時間を書き起こす為に。
続きを読む
君は
イライラすると
言葉遣いが
丁寧になる。
今もそう
何か言っても
「わかりました」
「さようでございますか」
まるで
ロボットみたい。
何度も起こしに来てくれたのに
起きられなかった
私が悪いんだけど。
「今週は
残業や早出で疲れてたんだって。
ごめんね?」って顔を覗き込むと
「さようでしたね。
ですから
元気が出るホットケーキを
ご用意しました」
年下なのに
ほんと
良くできた彼氏だ。
『生意気ロボット』より
続きを読む
婚外恋愛
だから
会うことも
直接的な言葉を避けて
文面に残す。
どこかの公式LINEのように
装ってるの。
そろそろ
その言葉のバリエーションも
隠す方法も少なくなって。
キーワードの
スペアありますか?
LINEのスペア
好きを伝えるスペアが
たくさん欲しいです。
まだ終わらせたくない。
まだ伝えたいこともあるから。
続きを読む