福子 / 生きていない駅|旅の記録 03
顔を上げると、隣のベンチに座っていたおばあさんは、いつの間にか姿を消していた。 あのおばあさんから鍵にまつわる不思議な話を聞いたような気がするのだけど、どういうわけか、記憶はぼん...
短編・掌編を中心に書いています。 少し不思議で、どこか心に引っかかる物語が好きです。 児童文学、幻想寄りの短編、連作「北の町で、こんな話を聞いた。」などを執筆中。 noteではシリーズ作品、minneでは「北の町から届く物語の手紙」も公開しています。
顔を上げると、隣のベンチに座っていたおばあさんは、いつの間にか姿を消していた。 あのおばあさんから鍵にまつわる不思議な話を聞いたような気がするのだけど、どういうわけか、記憶はぼん...
その鍵は、私にそっくりな男によって、私の首筋に挿し込まれた。 男が鍵を回すと、カチリ、と音がした。 次の瞬間、私の身体は左右にぱかーんと割れた。 痛みはなかった。血も出なか...
ポストに封筒が落ちる、コトン、という音を聞いて、私は再び歩き出した。 北の町にあるポストは、円筒形の、古いタイプのポストだった。 こういうポストは観光客向けの演出として残さ...
駅前の喫茶店で軽く朝食を済ませると、店員に営業時間を確かめてから店を出た。 素朴だけれど、コーヒーだけでなく料理もおいしかったから、お昼もここでと思ったのだ。 背中でドアが閉まる...
私はその駅で列車を下りた。 夜はまだ明けておらず、ガス燈の心もとない明かりが、朝の気配をまとった駅員すらいないホームをぼんやりと照らしていた。 ホームの端に立つ古びた駅名標に目を...
深夜の列車 飛び乗った列車は、映画か何かで見たような、和風とも洋風ともつかないレトロな雰囲気だった。 客車は二人がけの座席が向かい合って配置されていて、大人が四人まで座れるよう...
北の町で、こんな話を聞いた。 ──────────── たどり着いたのは、田舎の無人駅だった。 ガス燈の心もとない明かりが、ホームと駅名標を照らしていた。 駅名標に目をやると、文...