コメディ・日常

あまりのない答え

1,069文字 約3分で読了
作者:福子
 『チョコレートが5こあります。お友だち3人で同じ数ずつ分けると、1人分は何こで、何こあまりますか。』  給食まであと少しの四時間目、算数。わたしはテストの文章問題に取り組んでいた。  きっと、学校が終わってから、誰かの家に仲良し三人で集まったんだ。  わたしは鉛筆を握ったまま考えた。  チョコレートが五個。  お友だちが三人。  一人に一個ずつ配ると、二個あまる。  二個、あまる……。  ……あまった二個は、どうするんだろう。  もう一個ずつ配る?  そうすると、二個もらえる子が二人。一個しかもらえない子が一人。  ……あれ?  それじゃあ、一人だけ損しちゃう。  頭の中のお友だちのうち、二人はチョコレートを両手に持っているのに、一人だけ、片手に一個しか持っていない。  ……かわいそう。  わたしは、もう一度問題を読んだ。  どうして五個なんだろう。  三人で分けるなら、三個か六個にすればいいのに。  でも、問題には五個と書いてある。勝手に一個増やすわけにはいかない。  うーん。  わたしは鉛筆のお尻を唇に当てた。  リンゴだったら、切ればいい。  おせんべいだって、割ればいい。  でも、チョコレートを同じ大きさに割るのは、難しそうだ。  うーん、と悩んでいると、ピカーンとひらめいた。  そうだ!  この前のバレンタインに、チョコレートを作ったじゃないか。  小さく割ったチョコレートを、ボウルに入れて湯せんでとろとろに溶かす。それをプラスチックの製氷皿に流し込んで、冷蔵庫で固めてラッピングしたのを思い出した。  製氷皿のくぼみは、みんな同じ大きさだった。  だったら、五個のチョコレートを全部溶かして、三つのくぼみに同じ量ずつ流し込めばいい。  そうすれば、三人とも同じ大きさのチョコレートがもらえる。  あまりはゼロ。  これなら、誰も損をしない。  わたしは嬉しくなった。  さっそく、解答欄に意気揚々と答えを書いた。 『チョコをとかして、三つに作りなおす』  わたしは満足して、次の問題に進んだ。      *  翌日、算数のテストが返ってきた。  わたしは、ウキウキで答案を見た。  あれ?  チョコレートの問題に、大きなバツがついている。  首をかしげながらバツ印を見ると、その横に先生の赤い字があった。 『わり算を使いましょう!』  わたしは口をとがらせた。  なんでバツなの?  ちゃんと三人で分けたのに。  問題文をあらためて読んでみても、やっぱり、チョコレートは五個だった。  わたしの頭の中にいるお友だちの一人が、また、一個だけのチョコレートを持っていた。  わたしは、先生の赤い文字と問題文を交互に見つめ、深いため息をついた。  というか、最初から、割り切れるようにおやつを用意しておけばいいのに。
2026/10/27 ・ 👁️ 14回 ・ 💬 0件

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