SF・ファンタジー
旅の記録01『深夜の列車』
729文字
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深夜の列車
飛び乗った列車は、映画か何かで見たような、和風とも洋風ともつかないレトロな雰囲気だった。 客車は二人がけの座席が向かい合って配置されていて、大人が四人まで座れるようになっている。 私は窓側の席につき、外を眺めた。 ぼんやりと見える山の輪郭(りんかく)やぽつぽつと見える家の灯りが、私の後ろへ、後ろへと流れていく。
それにしても、ベンチに座っていた『男』とは、いったい何者なのだろうか。 男が抱く鞄には、何が入っていたというのだろうか。
さっき出会った人から聞いた話が、しゃぼん玉のようにふうわりと浮かぶ。 私はそれを窓の外の景色に託し、目を閉じた。 列車の揺れとレールのつなぎ目を通るときのガタンゴトンというあの衝撃音が私の心と身体を眠りへと引きずり込んだ。
「乗車券を拝見します。」
声が聞こえ、ぱっと目を開けた。
「乗車券を、拝見します。」
声は、頭の中でもわんもわんと漂っている。 視線を、声が降ってくるほうへゆっくり移動させると、レトロな制服に身を包んだ車掌が立っていた。
じょうしゃ、けん……?
ぽかんとしていると、車掌は私の右手へ視線を移し、
「そちらです。」
と言った。
――え?
驚いて右手を見ると、買った覚えのない切符が握られていた。目が泳ぐとは、今の私の状態を表しているのだろう。それでも、これ以上車掌を待たせてはいけないと思い、状況がよく分からないまま切符を手渡した。車掌は無表情で受け取ると、パチンと切符を切り、私に返した。
「見つかるといいですね。」
車掌はそう言って微笑み、車両を後にした。
手渡された切符には、小さな猫の形の穴が開いていた。 そして、古風な書体で、
北の町
と書かれていた。
列車は、ガタンゴトン、ガタンゴトンと音を立て、私を見知らぬ町へと運んでいった。
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