日本の秋は、夜が長くて過ごしやすい。
『秋の夜長』という言葉がある通り、暑さが和らぎ、暗闇の時間が少しずつ長くなるこの季節は、人間だけでなく海外の怪物たちにとっても実に快適な時期なのである。
しかも近年の日本では、ハロウィンの仮装文化がすっかり定着した。パレードの群衆の中には、日本にたどり着いた『本物』たちが混ざって騒いでいることもある。
「おや、そちらも本物だね」
「ええ、わかりますか。そちらこそ、なかなかの老舗とお見受けします」
パレードの喧騒の中、不自然な歩き方をしていたゾンビの私に声をかけてきたのは、これまた本物のドラキュラだった。異国の地で同類に出会えた嬉しさから、私たちはすぐに意気投合した。
「せっかくの夜長だ。どこかで一杯やっていかないか」
「いいですね。ちょうどあそこに『仮装のお客様、二割引き』という居酒屋がありますよ」
私たちは仮装した若者たちに混じって居酒屋の暖簾をくぐり、奥のテーブル席に腰を下ろした。人間の店員は私たちの姿を手の込んだコスプレだと信じ込み、愛想よく注文を取りに来る。
「俺はレッドアイにしよう。トマトジュースとビールのカクテルだ」
ドラキュラは店員に向かって真剣な顔で付け加えた。
「それと、唐揚げとポテトにはニンニクが使われていないか、厨房に確認してくれないか。ガーリックパウダーが少しでもかかっていると、体調を崩してしまうんだ」
「承知いたしました。コスプレだけでなく設定にもこだわっているんですね」
店員はいたく感心した様子だった。
「私は、アルコール度数が低いサワーを、氷多めでお願いします」
店員が去ったあと、ドラキュラは不思議そうに眉をひそめた。
「ずいぶん控えめじゃないか。酒は苦手なのかい」
「ええ。あまりアルコールが強すぎると、傷口が消毒されてしまってヒリヒリするんですよ」
私は腐りかけの頬をさすりながら、メニュー表を眺めてため息をついた。
「それにしても、最近の日本の居酒屋は生肉のメニューが減ってしまって嘆かわしい限りです。昔はユッケだのレバ刺しだの、好物をいくらでも食べられたのですが」
「まあ、今夜はローストビーフあたりで手を打とうじゃないか」
赤いカクテルと薄いサワーで乾杯し、それからは他愛のない世間話に花が咲いた。日本の秋がいかに快適か、どの街のパレードが一番紛れ込みやすいか。
心地よい酔いと楽しい会話に夢中になっているうちに、気づけば周囲の客はすっかりまばらになっていた。
ふと壁の時計を見上げたドラキュラが、もともと青白い顔をさらに蒼白にして立ち上がった。
「おい、まずいぞ。もうこんな時間だ」
「楽しくて、つい予定より撤収が遅れてしまいました」
私たちは慌てて伝票をつかみ、帰り支度を始めた。仮装割引が適用された会計を済ませ、急いで店の外へと飛び出す。
「それじゃあ、俺は空港へ急ぐことにするよ。また来年の十月に会おう」
「ええ、また来年。お互いに道中気をつけましょう」
短い挨拶を交わし、私たちは夜の闇へと消えた。
私たちがハロウィンの時期にだけ日本へ集まるのには理由がある。
十月は、日本の言葉で『神無月』という。日本中の八百万の神々が、出雲という場所へ会議に出かけて不在になるため、この一ヶ月間だけは日本各地の神聖な力が弱まり、私たちのような西洋の怪物でも居心地よく過ごせるようになるのだ。
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坂道の端に、黄色く色づいたカラマツの針葉が落ちていた。アローザの村を歩きながら、千紘は軒先の木彫りの動物を見つけるたび、足を止めた。猫シッターの仕事を始めてから、旅先でも猫の姿が気になる。
木製ソリが壁に立てかけられた小さな工房の戸が、少しだけ開いていた。削りたての木の匂いに誘われ、千紘は中を覗いた。
作業台の上に、手のひらほどの木彫りの猫がいた。前脚を揃えて座り、しっぽの先だけが不思議な方向へ曲がっている。
「ハロー」
彫刻刀を持った若い女性が顔を上げた。胸元の名札には、リアとある。
「そこ、直す予定なんです」
リアはしっぽの先を指さした。ゆっくりした英語だった。
「失敗、ですか?」
「バランスがよくないんです。親方にも、もっと自然に整えるようにと言われて」
千紘は猫の背中を覗き込んだ。木目は額から尾へ流れ、曲がった先端で小さな渦を巻いている。削ってしまうには惜しい形だった。
「うちの猫も、こんなしっぽですよ」
千紘は携帯電話の写真を見せ、指先を鍵のように曲げてみせた。保護したときからしっぽの先が折れ曲がっていたこと、走るときにはいつも片側へ揺れることを、知っている単語と身振りで懸命に伝えた。
リアは写真と木彫りを交互に見た。
「変じゃないですか?」
「いいえ。とてもかわいいです。これがないと、あの子じゃないくらい」
千紘は胸元で両手を丸め、猫を抱く仕草をした。
リアは彫刻刀を置いた。木彫りを窓辺へ持っていき、光にかざす。しっぽの影が作業台に細く伸びた。彼女はその先を指でなぞり、しばらく黙っていた。
「……直さないでおこうかな」
独り言のような声だった。
「この子の個性にします」
リアの顔に、ようやく迷いのない笑みが浮かんだ。
千紘はその猫を買うことにした。リアは薄紙で包みかけた手を止め、少し考えてから、小さな紙袋に猫を入れた。しっぽが袋の口から覗いている。
「あなたの猫に、よろしく」
覚えたての英語でそう言って、リアは袋を差し出した。
工房を出ると、秋の風が山あいを吹き抜けた。千紘はアローザ駅へ向かいながら、日本に帰ったら、あの子のしっぽをいつもより丁寧に撫でてやろうと思った。
旅の鞄の中で、木の猫は少し傾いて座っていた。曲がったしっぽは、もう直す必要のない形をしていた。
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顔を上げると、隣のベンチに座っていたおばあさんは、いつの間にか姿を消していた。 あのおばあさんから鍵にまつわる不思議な話を聞いたような気がするのだけど、どういうわけか、記憶はぼんやりしているし、そこにおばあさんが座っていた痕跡も気配も感じられなかった。
私は、眉間にしわを寄せ、自分の手の中の缶コーヒーを睨みつけた。
夢でも見ていたのだろうか。 ……いや、そんなはずはない。 眠っていたのなら、缶コーヒーを地面に落としてしまってもおかしくないのに、私の左手は、今も意志を持って缶を握りしめている。 私は強い緊張で震える息を吐き、それにしても、と、つぶやいた。 握りしめた缶コーヒーはすっかり冷たくなっている。冷めた、ではない。キンキンに冷えているのだ。それだけ、時間が経っているということを表していた。 おそるおそる時計を見ると、お昼はとっくに過ぎていた。 この公園に来てから、三時間以上経っている。 全身を震えが駆け巡り、呼吸が苦しくなった。 キンキンに冷えたコーヒーを飲み干すと、空き缶をゴミ箱に入れ、逃げるように公園をあとにした。
いったいここはどこなのだろうか。 私は、どこに来てしまったのだろうか。
どうやら私は、ふらふらと駅まで戻って来たらしい。 この町で暮らしてみようと思ったけれど、得体のしれないこの町に、私は凍りつくような恐怖を覚えていた。
帰ろう。 何を探しに来たのかも、何が見つかるのかもわからないけれど、もう、そんなのはどうでもいい。
駅舎に入ろうとして、私はビクッと身体を震わせ立ち止まった。 駅は、生きていなかった。 建物は蔦(つた)が絡み、中は落ち葉とほこりだらけで、改札口には錆びたチェーンがかけられていた。
混乱する脳内で、たったひとつ理解できたのは、私はこの町に留まらなければならない、ということだけだった。
足は自然と、あの喫茶店に向かっていた。
とりあえず、何か食べよう。 お腹を満たして、紅茶でも飲んで、心と身体を落ち着けよう。 それからだ、これからどうするのかを考えるのは。
喫茶店に明かりがともっている。 ドアを開けると、今朝と同じ店員がにっこり笑って、いらっしゃいませ、と言った。 私はカウンター席に座り、オムライスを注文した。「すみません、オムライスはやってないんですよ。」 私は目を丸くした。「え、だって、今朝、このお店で一番のおすすめだって……。」 私の言葉を聞いて、今度は店員さんが目を丸くする番だった。「いえ、一番のおすすめはナポリタンです。それに、お客様がこの店にいらっしゃったのは、今が初めてですよ……。」
とりあえず、ナポリタンを注文すると、店員さんは調理を始めた。「……オムライスがおすすめと、朝の私が言ったんですね?」 パスタをゆでながら、店員さんがそう言った。「はい、とても美味しかったです。はやりのふわとろではないですが、素朴で、懐かしくて、優しい味でした。」 私は、手元のお冷をもてあそびながら、グラスの水面に映る自分の顔を見つめた。「……今朝、朝早くにそこの駅に降り立って、心細さと混乱の中、このお店の明かりを見つけました。そして、オムライスを頂いて、町を歩いてみようと思えたんです。」 ふう、とため息をつき、ケチャップの少しツンと鼻を刺激する匂いをゆっくり味わった。「でも、不思議なことが続いて、混乱して、もう帰ろうと思ったのに、駅は……空っぽでした。」 お待たせしました、と、店員さんがナポリタンを私の目の前に置いた。 スクランブルエッグが添えられていて、卵とケチャップの香りが私を満たしていった。「このお店を始めるとき、おすすめをオムライスにするかナポリタンにするか迷ったんです。……そうですか、美味しかったですか。」 店員さんは、ゆっくり目を閉じると、銀色のトレーをぎゅっと抱きしめ、嬉しそうに微笑んだ。 そして今度は、ゆっくりと目を開けると、少し悲しそうな瞳を私に向けた。「あの駅は、廃線になってからずっと、何年も前から使われていません。それなのに、ときどき、あの駅に降り立ったとおっしゃる方が、この町にいらっしゃるんです。」 店員さんは、何か言いたそうに顔をゆがめたれど、ごゆっくりどうぞ、と言って、調理場に戻った。
ナポリタンも、オムライスに負けないくらい美味しかった。 食後にレモンティーとケーキを味わっていると、店員さんが私に近づき、あの、と声をかけた。「寝泊まりするところはお決まりですか? もしまだでしたら、ここの二階でよければ空いています。」 私は二、三度まばたきをして、いいんですか? と気の抜けたような、間の抜けた声で聞き返した。「はい。軽食ではありますが、お食事もご用意できます。ご希望であれば、オムライスも。」
こうして私は、北の町で暮らす初めての夜を、喫茶店の二階で過ごした。
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とある異国の旅の途中
名も知らぬ老人に声を掛けられた
刻まれた皺に苦労の陰を忍ばせる老人は かく語りき
「もし そこゆくお方…」
「旅のお方と心得るがいかがかね…?」
私は頷く
「ならば少し 話を聞いてはくれぬだろうか」
老人は何やら 懐をまさぐりながら話を続ける
「私には病床の妻がおってね」
「なんとかしてやりたいのだが…
医者には 途方もない額が必要だと言われたよ」
老人は哀しそうな目をしながら 続ける
「そんな金は残念だが… どこにもない」
「だが私は 妻を助けてやりたかった
どうしても 金が必要だった」
「そんな折 耳にしたのが
なんでも願いを叶えてくれる『奇跡の石』の噂さ」
「噂が真実かは分からなかった
しかし私は藁にもすがる思いで この噂を信じ込んだ」
「きっと この石を手に入れれば
信じられないような金額で売れるだろう と」
「金が手に入る…
さすれば 妻の命も助けてやれるだろうと」
老人は一筋 涙をこぼした
「それから 私は各地をさまよい
『奇跡の石』を探し求めた」
「そして苦労の末に ついにその石を探し当てた」
まさぐっていた懐から 拳大の物体を取り出す
「これがその石さ」
…なるほど
確かに見事 綺麗な石である
奇跡を信じそうになる程には 雰囲気のある石だった
「ところが…だ」
しげしげと石を眺めていた私は 老人の声で我に返る
「いざ石を手に入れても 誰も私の話を信じてはくれなかった」
「そんなのは嘘っぱちだと! その石はインチキだと!」
老人は苦虫を噛み潰したような 悔しそうな表情をする
「旅のお方…」
「どうか この石を買ってはくださらんか」
「きっとこの石は願いを叶える『奇跡の石』」
「どうか 私の妻を助けてはくださらんか…?」
一筋だった老人の涙が
堰を切ったように どんどんと溢れ出す
ふむ…
私はしばし考え込む
そして 涙を流し哀願を続ける老人に言葉を掛ける
「その話は本当に本当なのか?」
「…!」
「ああ 本当だとも!
信じてくれるか 旅のお方」
「それならば」
淀みなく 私は続ける
「その『奇跡の石』を使って 願いを叶えたらどうか」
「…?」
「『奇跡の石』は なんでも願いを叶えるのだろう?」
「ああ… そうだとも」
「ならば その石に願えばいい」
「『妻の病気を治してくれ』と」
「…!」
「生憎だが金はない」
「しかし なんだったらその石に
大金を手に入れられるよう願ってもいい」
「あ… あ…」
「どちらにせよ どう転んでも
それで奥さんの命は 無事 助かるだろう」
「……」
「それではご老人 私は旅を急ぐ身」
身をひるがえし ゆっくりと歩き出す
「これで失礼する」
そして 私は振り返る事なく
老人と『奇跡の石』から遠ざかるのだった
……
その時 老人が
どんな表情をしていたかは 分からない
今となっては
その石が本物だったのかも 知る由もないが
私は旅人
過去は振り返らず
今日も今日とて
あてのない旅を楽しむのである
(これから旅に出る者に
一つ アドバイスをするならば
見知らぬ異国の旅先では
簡単に財布の紐を緩めてはいけないという事だ
「旅は情け人は心」と言うなれど
結局は最後に物を言うのはお金である
そう 先ほどの老人のようにね
以上 その事を胸に刻んで旅を楽しんでほしい)
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「なんかまた、……雨が降りそうだなあ」
窓の外を見上げて|陽太《うちの子》が呟いた。
そして、私と目が合うと、いつも通り優しく抱きついてくる。
「おはよう、ベル。今日も元気そうでよかったよ」
ベルと呼ばれた私は、ここのうち、清見家の犬だ。
|赤ちゃん《パピー》の頃、引き取られてきた保護犬。
遥か昔、まだミックスなんて洒落た名前じゃなく、雑種って呼ばれてた……陽太が生まれる前だったから……、ええと何年前だったかしら?
「ねえ、ベル」
ロートルな頭で記憶を呼び戻しているというのに、容赦なく陽太が話しかけてくるせいで、私は考えることをさっさと諦めた。
「この前、天草に『うちに十七歳の犬がいるんだ』って話をしたらさ、」
天草というのは、陽太の学校の友達の名前らしい。
この春に新しい学校に行き始めてから、
「昨日の授業では、なんちゃら先生が」
とか、
「今日のテストで、かんちゃら先生が」
みたいに先生の名前しか聞いたことがなかったから、初めて、
「今日、天草がね!」
って、話してくれた時には、びっくりしすぎて魂が抜けそうになったわよ。
……あ、これは棺桶ギャグね。
「ね、聞いてる?」
記憶を煮干しみたいに噛みしめながら思い出していたら、隣にいる陽太が不満げに唇を尖らしていた。
あなたは赤ちゃんの頃から、変わらないわね。
唇を尖らすと、ひよこのような表情になるの。
「フゥン」
少しだけ声を漏らして陽太の体にのっそりと寄りかかってやると、陽太は安心したように、私の頭を撫でてくる。
あったかい手ね。
「でね、その天草がね。ベルに会ってみたいって」
あら。
「うちのベルは、黒ラブと柴のミックスだから大きいよ、て言ったら「ますます会いたい」って言うんだ。天草んちは八百屋さんだから、おじいちゃんが生き物はダメ、って言うんだって」
昔ながらのお店なのね。
そこの角の八百屋さんなんて、お母さんと買い物に行くたびに、猫がザルに乗ってたわよ。
「だからさ、」
陽太の瞳がキラキラと輝く。
雨上がりの葉っぱに残った雫のように。
「今日、連れてきてもいいかな?騒ぐようなやつじゃないから」
真剣な顔して。
ばかね、そんなに気を遣わなくても大丈夫よ。
陽太の大切なともだちなら、私も会ってみたいわ。
私は老犬だ。
年は陽太よりひとつしか変わらないけど、お医者さまからは人間として数えたら百を超えてると言われた。
ここに来た当初は子熊みたいだね、なんて言われた真っ黒な毛も、今ではだいぶ白が目立っている。
目は見えづらいし、鼻もイマイチ、立つのもニンゲンみたいに、
「よっこらせ」
だしね。
小さい頃は陽太のお気に入りのミニカーをスクラップ送りにした自慢の歯も、今ではビスケットがやっとだ。
あの時、あなたは顔を真っ赤にしてわんわん泣いたけど、私がいなくなったらまた泣くんでしょうね。
がんばってつくった工作を壊された時も、学校で履いてた靴を無くした時も、陽太は私にしがみついてきた。
びしょびしょの湿った顔を私に押し付けながら。
だけど私は、陽太が大人になるまで側にいてあげられない。
桜の花びらを追いかけ回して笑い転げながらの散歩も、真っ青な海を見た帰り、車の中で一人と一匹で寄りかかりながらのうたた寝も、もうできない。
――だからね、陽太。
あなたの大切な人に、あなたを託したいのよ。
泣き虫なあなたを。
おばあちゃんになった私に、変わらず優しさをくれるあなたを。
「あ、晴れ間が出てきた」
陽太の声に顔をあげると、雲の切れ間から神様が降りてくるような朝日が漏れてきていた。
「傘、持っていかなくてもいいかな」
陽太はお母さんが作っておいてくれたお弁当をバッグに詰め込むと、バタバタと洗面台に向かう。
『天草』と友人になってからの陽太は、髪型を気にするようになった。
学校での出来事を話してくれることも増えたし、笑顔もたくさん見せるようになった。
ともだち、なんて言ってるけど、本当は好きな人なんじゃないかしら。
きっと可愛い女の子ね。
「じゃあ、留守番頼むね、ベル」
玄関で靴を履いて、つま先を二度ほどトントン、と鳴らす。
扉を開けて、すっかり晴れてしまった空を陽太は仰ぐ。
でも。
「あ、向こうは真っ黒だ」
遠くの山の方角には鈍色の雲が居座っているのに気付いたらしい。
傘を持って行くか迷っているのね。
「やっぱり、折りたたみを持っていこう」
渋々といったように、手にした陽太の折りたたみ傘を私は、
「え!……ベル⁉︎」
軽く齧って引っ張った。
「ちょっと?なんで?」
陽太は私が心配だから、強くは引っ張れない。
すぐに諦めて、折りたたみ傘を離す。
私は傘の上に、よいしょ、と座り込んでやった。
「もしかして、」
視線が合うように陽太はしゃがみ込むと、私の耳の下の毛を撫でる。
昔はふさふさで艶やかだった毛も、今は少なくなり色褪せてしまったけど、陽太はいつだって私を愛しそうに撫でてくれる。
「傘はいらない、って言ってるの?」
ええ、そうよ。
私は座ったまま尻尾を二度ほど横に振る。
「ベルは雨が降らないって、言ってるの?」
そうじゃないわよ。
陽太が傘を持っていかなければ、天草と「相合傘」ができるでしょう?
二人で一緒の傘に入って、昨日より仲良くなって帰ってきなさいよ。
私のそんな気持ちが伝わるはずはなかったけれど、陽太は弾けるような笑顔を見せる。
「ベルを信じるぞ! 今日はもう雨は降らない、って。」
……そうじゃないけど、まあいいわ。
私はのそのそと立ち上がって、思い切り尻尾を振る。
膝の関節はギシギシ軋むけど、まだまだこれくらいはできるのよ。
「じゃあ行ってきます! 天草はデカいけどいい|男《ヤツ》だから、ベルも仲良くしてな」
……え?
天草って男なの?
てっきり可愛い女の子だと思ったのに。
ガチャリと閉まる鍵の音を聞きながら、私は思いを馳せる。
陽太が、デカい天草と相合傘で帰ってくる姿を。
♢
太陽が空のてっぺんに昇った頃、雲がその輝きを塞ぎ始め、やがて雨が降ってきた。
いつものように、窓から外を眺めていた私の目に映ったのは。
可愛い女の子と相合傘をする陽太でも、デカい男の子と相合傘をする陽太でもなく――。
弾ける雨粒の中、びしょ濡れなくせにキラキラした笑顔で笑い転げながら走ってくる、陽太と天草だった。
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僕と彼女は仲の良い友人だ。幼馴染であり、腐れ縁でもある。しかし恋人ではない。
僕は彼女を恋愛対象として意識することもあったが、今の関係が壊れてしまうことを恐れて、最後の一歩は踏み出せないでいた。
夫婦漫才のように仲良く喧嘩をしていると、他の友達に二人の仲をよく冷やかされた。そうすると彼女は決まって、こう言った。
「私は男女間の友情は成立すると考えているの。彼のことは親友だと思っているわ」
ある時、彼女と二人で宅飲みをしているときのことだった。
「僕たちは、友達以上恋人未満、というやつなのかな」
「それはちょっと違うわね。強いて言うなら、友達以上親友以下。友情と恋愛感情は一直線上に並べて比べるものではないと思うから」
それを聞いて僕は心底ガッカリした。彼女はどこまでいっても僕のことを友人としか見ていない。普段ならば、そこで引き下がるところだが、そのときは酔っていたせいか、抑えていた気持ちがあふれ出してしまった。
「『男女の友情は成立する』という君の考えが間違っていることを、僕は証明したいんだ」
言い終えてから、ひどく恥ずかしいことを言ってしまったと後悔したが、もう手遅れだった。彼女は驚いて真顔になった後に、すぐに僕が何を言いたいのか察したらしく、ニヤニヤしながら言った。
「……へえ、それは楽しみね。絶対に無理だと思うけど」
自信満々の彼女は賭けを持ちかけてきた。期限を区切り、そこまでに彼女の考えが間違っていると証明できれば、僕の勝ち。そうでなければ、彼女の勝ち。そういう勝負だった。
それから僕は気持ちを切り替えた。彼女に「友人」ではなく「恋人」として認めてもらえるように努力を始めた。
二人で食事をするときは、行き当たりばったりで居酒屋に入るのではなく、事前に雰囲気の良いレストランを調べて予約した。会話では彼女の言葉に肯定的に耳を傾け、歩道では車道側を歩くなど、異性としてのエスコートを徹底した。
ただ、僕のそうしたアピールに対する彼女の反応は鈍かった。気取ったレストランでは退屈そうに視線をさまよわせ、僕が意見を合わせて議論を避けようとすると「なんだかつまらない」と不満を漏らした。客観的に見ても、僕の努力が彼女に刺さっている手応えは全くなかった。
そして期限が迫った日、僕は彼女を夜景の見えるレストランに誘い、正式に告白をした。
「君のことがずっと好きだった。これからは、僕と恋人として付き合ってほしい」
一世一代の告白のつもりだった。しかし、彼女の反応は驚くほどあっさりしたものだった。
「ええ、もちろんOKよ。これからもよろしくね」
これまでと変わらない気安い感じで、グラスを傾けながら彼女はそう答えた。
少し拍子抜けはしたが、ともかく告白は成功し、賭けにも勝ったと僕は喜んだ。
「これで僕の勝ちだね。男女間の友情は成立しなかった」
しかし、彼女はすぐにそれを否定した。
「以前、話したように、友情と恋愛感情は一直線上に並べられるものではないの。別ベクトル。独立したパラメータ。恋愛関係になっても友情には影響がないのよ」
「どういうことだ?」
「あなたとは恋人になったけれど、それと同時に友人関係は続いている。私はそう考えているわ」
僕は混乱した頭で必死に考えた。もしかしたら、最初から全く勝ち目のない勝負をさせられていたのではないか。
嬉しそうに微笑む彼女が追い打ちをかける。賭けに勝った方は、ひとつだけ何でも要求できるという約束だった。
「これからは恋人として付き合っていくけれど、デートは今まで通り気取らない店で食事して、親友として遠慮なく議論を戦わせること。もちろん支払いは割り勘だからね」
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一日の授業が終わり、眼鏡を外して軽く伸びをする。窓の外、夏めく木漏れ日が心地良かった。
「ちょっといい?」
振り返ると、男の子が声をかけてきた。
「なん、ですか」
怪訝そうに答える私に、彼はポリポリと黒髪に茶色メッシュの頭をかいた。
「授業、全然頭に入んなくてさ。レポート作るの苦労しそうだから、ノート、コピーさせてもらえないかなって」
私は素朴な疑問をぶつけた。
「どうして私のを?」
「だって、えらく熱心に書いてたから。すげぇなと思ってさ。急で申し訳ないけど、頼むよ」
そう言って、両手を合わせる。
そこまで言われると、私も悪い気はしなかった。
「別にいいけど」
私はびっしり書いたノートを渡した。
「サンキュー! 待ってて」
彼はそう言うなり、教室を飛び出していった。
私は恋愛をした事がない。中高と女子校だったし、無口で暗かったから友達も少なかった。大学でもサークルに入らず、同年代の男の子と話したのも今日が久しぶりだった。
「お待たせ!」
しばらくすると、彼が戻ってきた。
「助かったよ、ありがとう」
「どういたしまして」
私はノートを受け取ると、鞄にそれを詰めて席を立った。
「いたいた。何やってんの?」
ちょうど、学内唯一の友達が教室にやってきた。私はそれを無視するように外へ出る。
「あ、待ってよ!」
友達は、訳もわからず私を追いかけてきた。
正門に向かって二人で並んで歩いていると、友達がニヤニヤしながら言った。
「知ってるよ、さっきの彼。同じ二回生で、結構人気ある人だ」
「そうなの?」
空調の効いた校舎を出たから、真夏の陽気がやけに体を火照らせる気がした。
「もしかして恋の始まり?」
「まさか」
私なんて、誰からも見向きもされない。昔からそうだったんだから。
私は自分にそう言い聞かせながら、正門をくぐった。
数日後の昼。学食でお気に入りのハヤシライスを注文し終えた時だった。
「それ、会計一緒で」
驚いて隣を見ると、先日の彼だった。
「ちょ、ちょっと!」
「ノートのお礼さ。……迷惑?」
「迷惑じゃない、けど」
「ついでに一緒に食おうよ」
「……でも」
「いいからいいから」
彼が笑った。
うまく説明できない感情を覚えながら、私は言われるがまま彼と同じテーブルについた。
「案外気があるんじゃないの?」
構内のカフェでお昼の事を話すと友達が言った。
「ただのお礼だよ」
「化粧っ気無いけど、綺麗な顔してるもんあんた」
「茶化さないで」
彼の事なんて、なんとも思ってない。でも……でも、じゃあなんで友達に話してるんだろう。
私は、汗をかいたグラスに残ったアイスティーを勢いよく飲み干した。
それからの私は、構内で自然と彼を探すようになった。見かけると身を隠して、目で追うだけだけど。
そして、彼が男女問わず友達が多い事がよくわかった。誰にでも明るく笑いかける彼を見て、思っていた通り、私とは住む世界が違う事を知った。
ある日、彼が女の子と二人で帰っているのを見かけた。私は慌てて隠れて、それをやり過ごした。
「……バカみたい」
自分が情けなくなった。彼の事が気になり始めていた事にか、何かを期待していた事にか、それすらもわからず、ただ、胸が苦しかった。
母さんが、自分の価値は自分で作りなさいと、昔からよく言っていた。だから私は勉強に打ち込んできた。皆が謳歌する青春は私に無関係なもの。わかっていた。わかっていた、はずなのに……。
「久しぶり」
校舎の裏に一人佇んでいると、突然彼が声をかけてきた。
「な、なんで……」
「なんでって、見かけたから。なんか最近、避けてない?」
「そんな事……。彼女、待たせちゃ悪いよ」
「彼女? ああ、サークル仲間さ」
「そう、なの」
「俺、なんか気に触る事したかな」
「ううん。なんにも」
「そっか……。なら、いいんだ」
そう言って踵を返す彼の表情は、どこか寂しそうに見えた。
「あ、あの!」
私は意を決して彼を呼び止めた。
「……うん?」
「あの時、なんで私にノート借りたの? 単なる気まぐれ?」
彼は少しだけ困ったような顔をしてから言った。
「笑わないでくれる?」
「うん」
「光みたいに、見えたから」
「……え?」
「真剣にノートをとってる君の横顔がさ。……西日のせいかな」彼はよそ見しながらポリポリと頭をかいて続けた。「輝いてる光に見えたんだ」
鼓動が、速くなる。頭が、ぼうっと熱くなる。
光に? 暗くて無口で、誰にも興味を持たれないはずの、私が?
「また、ノート見せてくれる?」
彼は少し恥ずかしそうに言った。
私は今にもこぼれ落ちそうな涙を堪えながら、精一杯に強がって笑った。
「……時々、ご飯おごってくれるなら」
澄み渡るキャンパスの青空から、キラキラと眩い光が降り注いでいた。
ー了ー
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町にソフトクリーム屋さんがオープンしました。
いろんな種類のソフトクリームが売っているのです。
それを聞いた 食いしん坊なキツネさん。
「今日オープンだって!一緒に食べに行こうよ!」
キツネさんが仲良しのタヌキさんをさそいます。
「僕お金持ってないよ!」
タヌキさんは言いました。
「大丈夫、ジャーン!」
キツネさんは葉っぱを取り出してお金に変えました。
「バレたらおこられちゃうよ!」
「大丈夫、大丈夫。そんなにばれないよ」
キツネさんは頭に葉っぱを乗せて人間の男の子に変身します。
「タヌキさんも葉っぱを乗せると、ドロン!」
同じように男の子に変身しました。
だけど耳がうまく隠せません。
「どうしよう、こまったな」
するとキツネさんは、ボウシをわたしました。
「これをかぶったら、大丈夫だよ!」
「ありがとう」
タヌキさんは、ボウシをかぶりました。
「キツネさん、しっぽ!」
「おっと、いけない!」
キツネさんはコートを着ました。
これでもう大丈夫、どこからどう見ても二人は 人間の男の子です。
町のソフトクリーム屋さんまで二人は歩いて行きました。
「ソフトクリームくださいな!」
そう言ってキツネさんは葉っぱのお金を出します。
「いらっしゃい 坊や、どの種類がいいんだい?」
お店のおばちゃんが、たずねます。
「うーん」
キツネさんは ソフトクリームの写真を見ます。
「全部!」
「全部だね。じゃあ特別に虹色のソフトクリームを作ってあげるからちょっと待ってて、坊や」
お店のおばちゃんは、虹色をしたソフトクリームをキツネの坊やに渡しました。
「わーすごく大きい!」
二人は目を輝かせます。
一番上はストロベリー味、二番目はみかん味、三番目はレモン味、四番目は抹茶味、五番目はほうれん草、六番目はソーダ味、そして七番目はさつまいも味がします。
「僕も同じのがいいな!」
タヌキさんも同じものを作ってもらいました。
二人は夢中で食べています。
口の中がキンキンに冷えて、息を吐き出すと虹になりました。
びっくりしている二人。
おばさんは笑います。
「美味しいだろう。とびっきり美味しい季節の果物と野菜とそれから 虹をすりおろして入れたからね」
二人はおばちゃんの顔をよく見ました。
「あれ?もしかして山姥のおばちゃん?」
「そうだよ、やっと気がついたね」
とおばちゃんは笑いました。
「できれば、葉っぱのお金じゃなくて本物のお金を持ってきて欲しかったけどね」
二人は顔を見合わせました。
「ごめんなさい、本物のお金ないの」
「じゃあ、お金は払わなくてもいいけど、たまにお手伝いに来てくれないかな」
おばさんはそう言いました。
「はーい!」
二人は元気よく返事をしました。
さてその後、町のソフトクリーム屋さんに時々二人はお手伝いに行きます。
ソフトクリーム屋さんは とても繁盛しているそうですよ。
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たこ焼きを転がす技術はたこ焼きを焼けるという特技に直結する。
暇を持て余した研究室は、アシダカグモから卵嚢を奪い、とりあえずガンマ線を当てることになった。
現在のゲノム編集の主流である分子のハサミを用いて特定の遺伝子配列を書き換えるクリスパー・カスパインや、細胞に瞬間的に特殊な電気パルスを当てて小さな穴を開け、外から目的のDNAを細胞内に侵入させるエレクトロポレーション等の手間とコストに眉間を盛り上げた老研究者は、まあとりあえずガンマ線当てておくかと、安価な牛肉をステーキにするように半ば投げ槍然にガンマ線を卵嚢に照射した。
この実験にそもそもの目的は存在しない。
結果、唯一生き残ったメスの一匹は、その八つの脚を広げることなく折り畳み丸まったままで餌を与えられるがままに成長した。末端毛束に至るまでの体毛は白かった。
脱皮を繰り返しおよそ成虫とみなされるサイズにまで達してもなお怠惰に丸まったままなので、ついに呆れた研究者は虫籠に納め、チームの一員の男がそれを託され戸惑いのまま男は家に持ち帰ることになる。
リビングの端に鎮座するガラス箱の中、純白の小石ほどの塊は、たまに関節を伸ばすくらいでやはりじっとしている。
男は日誌に「姫はどうやら寛いでいる」と記すのが日課になった。
それは男の休日に起こった。
「ひとりタコパ」と称される独身男の祭事に、純白の被ガンマ線遺伝子変異製雌アシダカグモはその脚を広げた。
のっそりと、控えめに、しかし確固たる意志があるかの如くガラス壁を内側から音を立てて掻き、純白の被ガンマ線遺伝子変異製アシダカグモの姫はその時ようやく外界を望んだのだ。
男は全ての窓と扉の隙間を埋め、純白の姫をついに解き放つ。
純白の姫はひと通り室内を彷徨ったのち、テーブルをよじ登り、半円状にくり抜かれた窪みが規則正しく整列する鉄板を臨み、歩みを止める。
男は昂然と口の片方の端を上げ、黄乳白色の生地を熱せられた鉄板に流し込む。窪みを埋めてもまだ流し込む。
「いいかい、姫。生地はサラサラなくらいがちょうどいいんだ。粘りがあるのは僕の好みじゃない。それとタコは熱湯に潜らせるくらいでいいのさ。湯に浸すとせっかくの旨味が逃げてしまう」
上機嫌に言説を垂れ流しながら、男は手際よくタコのブツ切りや刻んだキャベツ、細かくしたチーズをまぶし、先の鋭利なキリで穴と穴の間に線を引くように切り込みを入れる。
被ガンマ線遺伝子変異製アシダカグモの純白は湯気の踊る鉄板を見つめ続けている。
鉄板に接している側が焼けた頃合いを見計らい、男は両手にキリを持ち、まず焼成された生地を九十度回転させ、出来た隙間に溢れた生地を詰め込み、もう九十度回転させ、生地はドーム状に焼成部を晒す。
事が起こったのは二回目である。
男が再び鉄板に生地を流し込むやいなや、純白の姫は鉄板に飛び込んだ。
声を上げて狼狽する男を余所に、姫は生地に二本の脚で切り込みを入れて周り、先と同じく四本の脚で九十度回し、隙間に器用に生地を押し込んでまわった。
せこせこと。
最初に回した一個に戻ってくると、これまた器用にひょい、と転がす。
彼女は沈然として繰り返した。
窪みに入り切れなかった生地とキャベツの欠片をかき寄せ抱えられるだけ抱え、姫は鉄板を降り、テーブルの端でゆっくりとそれらを食す。
おそるおそるソースを差し出すと癪に触ったのかぷいっとそっぽを向いた。
研究室の研究の研究者の報告に拠れば、たまたまそういう行動がプログラムされたに過ぎない、ということに終始した。
ガンマ線照射とはそもそもそういう物である。
しかし、純白の被ガンマ線遺伝子変異製アシダカグモの姫は、今日もガラス箱の中で八つ脚を折り畳み、あの香りを泰然自若と待っている。
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ゴウンゴウン
食洗機が頑張ってる
ゴウンゴウン……ゴウンゴウン
音楽が流れる
いつものオペラっぽい……
じゃなかった
レッレレレミッミッファッレッミー
レッレレレミッミッファッレッミー
くるみ割り人形だ
このくらいは知ってるもんね
細かく跳ねる柔らかな金管
愉快に応える弦の音色
おどけたフルートも入ってきた
やたらシンバルが響くな
どんどん重層的になっていく
すっかりお祭り騒ぎだ
いつでも私の中にいる楽団
ちょっと適当がすぎる
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