SF・ファンタジー

奇跡の輝石

1,246文字 約3分で読了
作者:lue
とある異国の旅の途中 名も知らぬ老人に声を掛けられた 刻まれた皺に苦労の陰を忍ばせる老人は かく語りき 「もし そこゆくお方…」 「旅のお方と心得るがいかがかね…?」 私は頷く 「ならば少し 話を聞いてはくれぬだろうか」 老人は何やら 懐をまさぐりながら話を続ける 「私には病床の妻がおってね」 「なんとかしてやりたいのだが…  医者には 途方もない額が必要だと言われたよ」 老人は哀しそうな目をしながら 続ける 「そんな金は残念だが… どこにもない」 「だが私は 妻を助けてやりたかった  どうしても 金が必要だった」 「そんな折 耳にしたのが  なんでも願いを叶えてくれる『奇跡の石』の噂さ」 「噂が真実かは分からなかった  しかし私は藁にもすがる思いで この噂を信じ込んだ」 「きっと この石を手に入れれば  信じられないような金額で売れるだろう と」 「金が手に入る…  さすれば 妻の命も助けてやれるだろうと」 老人は一筋 涙をこぼした 「それから 私は各地をさまよい  『奇跡の石』を探し求めた」 「そして苦労の末に ついにその石を探し当てた」 まさぐっていた懐から 拳大の物体を取り出す 「これがその石さ」 …なるほど 確かに見事 綺麗な石である 奇跡を信じそうになる程には 雰囲気のある石だった 「ところが…だ」 しげしげと石を眺めていた私は 老人の声で我に返る 「いざ石を手に入れても 誰も私の話を信じてはくれなかった」 「そんなのは嘘っぱちだと! その石はインチキだと!」 老人は苦虫を噛み潰したような 悔しそうな表情をする 「旅のお方…」 「どうか この石を買ってはくださらんか」 「きっとこの石は願いを叶える『奇跡の石』」 「どうか 私の妻を助けてはくださらんか…?」 一筋だった老人の涙が 堰を切ったように どんどんと溢れ出す ふむ… 私はしばし考え込む そして 涙を流し哀願を続ける老人に言葉を掛ける 「その話は本当に本当なのか?」 「…!」 「ああ 本当だとも!  信じてくれるか 旅のお方」 「それならば」 淀みなく 私は続ける 「その『奇跡の石』を使って 願いを叶えたらどうか」 「…?」 「『奇跡の石』は なんでも願いを叶えるのだろう?」 「ああ… そうだとも」 「ならば その石に願えばいい」 「『妻の病気を治してくれ』と」 「…!」 「生憎だが金はない」 「しかし なんだったらその石に  大金を手に入れられるよう願ってもいい」 「あ… あ…」 「どちらにせよ どう転んでも  それで奥さんの命は 無事 助かるだろう」 「……」 「それではご老人 私は旅を急ぐ身」 身をひるがえし ゆっくりと歩き出す 「これで失礼する」 そして 私は振り返る事なく 老人と『奇跡の石』から遠ざかるのだった …… その時 老人が どんな表情をしていたかは 分からない 今となっては その石が本物だったのかも 知る由もないが 私は旅人 過去は振り返らず 今日も今日とて あてのない旅を楽しむのである (これから旅に出る者に 一つ アドバイスをするならば 見知らぬ異国の旅先では 簡単に財布の紐を緩めてはいけないという事だ 「旅は情け人は心」と言うなれど 結局は最後に物を言うのはお金である そう 先ほどの老人のようにね 以上 その事を胸に刻んで旅を楽しんでほしい)
2026/10/22 ・ 👁️ 21回 ・ 💬 0件

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