その他
あまりにもオセロ
1,026文字
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目を開くと世界がモノクロになっていた。
きっとこれは夢だ。私はそう思った。
外に出ると空は白い、地面は灰色で、人の顔も灰色でどこまでも色味がない。
話し声も色がない。
誰の言葉も響かない。
そこで、ふと思った。
そもそも私の日常生活に色なんてあっただろうか?
昨日のことを思い出そうとしても、やはり何も思い出せないのだ。毎日が灰色で、白から黒へのグラデーション。
それが私の日常だった。
色のない世界でそれを 普通と思い込んでいただけかもしれない。だから色が消えたところで、今までと何も変わらないのだ。
夢だと思った今の状態は、もしかしたら変わらない現実なのかもしれない。
白い日もあれば黒い日もあるかもしれないけれど、私の世界には色がなかったのかもしれない。
鮮やかな日常をまぶたの中に思い描こうとする。
だが何も思い出せないのだ。
色が消えたところで、私は何も困らない。
世界はどこまでも色がなく、そのことに私は困らないのだ。
心の中がざらついて、何の感情も浮かんでこない。
色のない夢……いいや色のない現実。
夢の中で赤信号を渡る。
色がないのに赤信号だとわかる。
夢の中で青信号で止まる。
色がなくても青だとわかる。
……なんだ、色なんて必要ないじゃないか。
そう思うと私は泣きたくなった。
空を見上げれば灰色の雲が出ている。
ポツリポツリと雨が降る。
地面の灰色のブロックの上に、黒いシミを作っていくのだ。
それはオセロのように黒く黒く染め上げていく。
やがてあたりが黒1色に包まれた。
何もない闇の中を、私を歩いて行く。
……なんだ、光なんていらないじゃないか。
私はポロリと泣いた。
その時に初めて私は悲しいと思ったのだ。
色なんていらない、見えなくても気にならない、そんな世界に。
きっと夢の中でも現実でも、私は色なんて必要としていなかったのかもしれない。
色のない日常。昨日と変わらない今日。
それは延々と過ぎてゆく。
嬉しいとも悲しいとも思わない日々が、毎日蓄積してゆく。
そのことに疑問も感じなかった。
私は初めから色のない世界で生きていたのだ。
そのことに気がつかず、何の感情も湧かなかったのだ。
私の世界はとっくに死に絶えていたのかもしれない。
私自身は生きているのに……
そのことに気がついて初めて悲しいと思った。
一粒の涙が地面に落ちて白く輝いていた。
その白の中には、実際は いくつもの色彩が含まれていたのだ。
闇よりも暗い黒から白へと塗り替えられてゆく。
それはオセロの様に……
……そして世界は色彩を取り戻したのだ。
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