児童文学

嵐の夜の演奏会

853文字 約2分で読了
作者:しとえ
雨風が強い晩でした。 暖炉の火のそばで温まっているとふと扉を叩く音。 コンコン! 誰かが訪ねてきます。 扉を開けると小さな男の子が立っているではありませんか、土でドロドロの足。 「どうしたの坊や?」 「あのねボク空の上から落ちちゃったの」 しょぼんとしている男の子の頭には小さな角。 迷子になった雷の坊やです。 外では雷が響きます。 「坊や!坊や!どこに行った!」 雷のお父さんが探しているのでしょう、外は嵐。 川の水はあっという間に増えて行きます。 「お父さん探してるね」 「どうしよう。ボクがここにいるってどうしたらわかるかな」 「うーん」 私はしばらく考えました。 「雷の音に負けないように大きな声でボクはここだよって言ったら聞こえるかな」 男の子はそう言いました。 「そうだね聞こえるかもしれないね!」 私はもともとミュージシャンでした。 家には楽器や機材、マイクだってあります。 坊やを連れて楽器の部屋へ。 「わーすごい!」 ドラムのセットを見て男の子は大興奮! 「お父さんのみたい!」 「お父さんもこんな感じのドラムを叩いているの?」 「うん、お父さんは雷さまだからすごくタイコが上手いんだ!」 「じゃあこれを叩いてマイクで空に向かって叫んだら お父さんに届くんじゃないかな」 「叩いていいの⁉」 男の子は大喜びでドラムの前に座りました。 夜の演奏会の始まりです。 窓のそばにスピーカー、音を大きくして空にまで届け。 男の子は太鼓を叩きマイクで大きな声で歌い、私はシンセサイザーを弾きました。 大音量が響きます。 その音を聞いた雷さま。 「息子の声がするぞ!上手に叩いているじゃないか!」 慌てて空から降りてきました。 「坊や!」 「あのねお父さん、お姉ちゃんと太鼓を叩いてお父さんに聞こえるように一緒に演奏したんだ」 そう嬉しそうに話す坊や。 「お世話になりました」 そう言って深々と頭を下げる雷さま。 後には晴れ渡った朝の空と虹。 こうして2人は帰って行ったわけですけど、雨の日時々空を見上げては、坊やと雷さまが一緒に演奏しているのかもしれないなと思って私はにっこり微笑みました。
2026/09/18 ・ 👁️ 96回 ・ 💬 0件

\ 次の作品を探す /

読者の感想・応援メッセージ

まだ感想はありません。

0 / 1000文字