SF・ファンタジー

瓶内ユニバース

999文字 約2分で読了
作者:森陰五十鈴
 あなた、またその瓶を見ているの?  確か、宇宙創造の実験で、珍しいものができたんだっけ。 〝知的生命体の住んでいる惑星〟ですって? 鉱物ばかりの試薬の中から、どうして生命体なんてできるのよ。まして、知性を持つ生き物なんて。  ……コンタミには気を付けなさい、とあれほど言ったのに。  硝酸もアルコールも使った? 洗い方が悪かったんじゃない? それともアルコールが残ってたのかしら。アルコールで生命体ができるんだとしたら、それはそれで怖いんだけど。  原因は特定できてるの? まだ? 困るじゃないの、新発見にしても、再現性がないと教授に怒られるわよ、ていうか私が困るの。先輩だからきちんと面倒見ろって言われてるんだから。少なくともデータ出して貰わないと。  当時のデータは残ってるって? あら、記録はきちんと取っているのね。そこは偉いわ。だからそのうち挑戦してみるって……できれば、今して欲しいのだけど。  え? このまま観察していたい?  でも、うちは生物学科じゃないから、仮に立派な論文ができても卒業要件にはならないんじゃあ……なるのかしら。そこは自分で確認してみて。  ……じゃなくて。  いい? うちは宇宙創造研。あなたの研究テーマは、『宇宙膨張限界の測定』でしょう? それなのに、恒星どころか惑星一つぽっちにかまけている場合じゃないと思うのよ。諦めて本分に戻ったほうが身のため。お題変更しても、卒論には間に合わないわ。どうしても観察したいなら、院に上がってからにしなさい。 「今が面白いんだ」って言われても。え、惑星上の知的生命体が、互いに互いを虐殺し合っている? しかも自分たちの住む星を自ら壊してもいる? なにそれ、知性の欠片もないじゃない。本当に知的生命体? でも文明は築いているのなら、そう言えなくもないのか。  で、そろそろ終わりそうだから、最後まで見ていたい、と。気持ちは分からなくないわね。知的生命体が『惑星崩壊』の原因の一つになるとしたら、新発見になりそうだし。ちょっと期待しちゃう。  うーん……でも、卒論……。  分かった。じゃあ、こうしましょう。私も協力する。  私もその惑星観察するわ。だからその間、あなたは卒論の実験をするように。  大丈夫よ、ちゃんと記録するし。映像も残しておくから。  私も興味出てきちゃったしね。  お礼は、論文の謝辞のところに私の名前を出してくれればいいから。  ところで、その惑星、名前はあるの? 『地球』? ふーん。なんか安直な名前ね。
2026/10/07 ・ 👁️ 62回 ・ 💬 0件

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