SF・ファンタジー
ドロイド
689文字
約2分で読了
私には体温がありません。
当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが……
あの方にお会いしたのはもう30年も前でしょうか、あの方はまだ幼い子供で物珍しそうに私の方を見ていたのを思い出します。
あの方の家に引き取られた当初私はまだまだ珍しい存在で動きもぎごちなくて口にする言葉もずいぶん頓珍漢だったと思います。
プログラムは何度もアップデートされ記憶はクラウドに保存されてゆきます。私という存在はどこからどこまでが私なのでしょう。
アップデートされるたびに私はほんの少しずつ変わってゆきます。
それは物理端末つまり人間で言うところの肉体もそうですし、クラウド上のシステムつまり 記憶にあたる部分ですがその部分の解像度もまたどんどんと 変わっていくのです。
私たちにとって精神とは一体何でしょうか。
それを決めるのは一体誰なのでしょうか。
アップデートされるたびに明確になっていく思考とは裏腹に考えれば考えるほどわからなくなっていくこともあります。
熱を感知する端末システムが導入されたのは私が存在し始めて10年が経った日でした。ですがそのシステムから感じられる熱というのはあの方が感じていたものと一緒なのでしょうか。
人間にとって熱というのはとても大切なものです。
それは生命活動そのものを表していて、でしたら私たちにとって 熱というのは一体どういった意味を持っているのでしょう。
あの方がなくなって、私の端末は停止しました。
精神はクラウドの上にあるのみです。
あの方のそばは暖かかった。それは体温ではなく精神の形作る 生命活動からの熱なのでしょう。
私はもう熱を感じません。あの方のように体温があれば良かったのに。
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