SF・ファンタジー

人生は蚊取り線香に劣るのか

793文字 約2分で読了
作者:lue
蚊取り線香は 人生とよく似ている 灯火を産声として ぐるぐると回りながら ゆっくりと 最後には燃え尽き その生を全うす 燃え尽きた後は 何も残らない点においては 尚の事 人生とそっくりだが 強いて述べるなら 人間は燃え尽きても 尚 志は受け継がれる (事もある) 物質的な意味においては 最後は無に帰すのが美しく 本来 あるべく姿と考える 故に 蚊取り線香は 人生よりも優れた存在だと言える 人間は無に帰すには時間が掛かり 何より人の手が必要だ 故に劣っている ならば人生は 蚊取り線香以下の儚くも醜きものなのか 案ずる事はない 蚊取り線香は 火を点けた瞬間から ただただ終息へと向かい そして最後には燃え尽きる 始めから終わりへと向かい 歩き 副次的に 蚊を取りはするが (本来の役目ではあるが) 蚊取り線香本人にとっては 実はそんな事は どうでもいいと思っている 見据えた物事に対して一直線 というのは 武士のごとく潔くも感じるが 実のところ そうでもない (回りくねってもいるし) 何せ 何も生み出さない 奴らは一切の他人の意見も受け入れずに ただひたすら 己の成すべき事に向かってひた走る事しか出来ない 愚かで罪な存在なのである それに対して 人間はどうだ 人生はどうだ 人と人 手を取り 支え合い 譲り合い 協調し 時に反発し合い そして深く深く理解し合う なんと美しい事か 蚊取り線香には到底 成し得ない芸当である 尊ぶは人情であり 人の和であると捉えると 驚くなかれ なんと人生は蚊取り線香をも超える存在なのである そうして なんだか 蚊取り線香を憐れに思えてきた私は 外から内に向かって燃え尽きる点を不憫に感じ ついには 『内から火を点けてみる』 という暴挙に出るのであった こうして 過ぎし夏を懐かしみ そして 移りゆく秋を迎え入れるのでした (ほら 来年になると湿気っちゃうし… それは蚊取り線香にとっての死 どうせ死を迎えるのであれば せめて燃やし尽くしてやろうと思うのは 蚊取り線香に対する せめてもの餞であり 手向けであると私は考える)
2026/10/13 ・ 👁️ 51回 ・ 💬 0件

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