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私はトマトが好きだ
1,130文字
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今日は、彼女が来る日。
付き合い始めて、2回目の来訪。
私は朝から部屋の掃除をし、彼女が来るのを待つ。
来るのは、15時。私は汚くもないのに無駄に部屋を片付ける。
最後の一冊の本を本棚にしまい、掃除が終わる。
お菓子ある。夕飯の材料もある。彼女が好きなポテトも。
チャイムが鳴った。
私は、いつもより音を立てて玄関へ向かう。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
彼女は、昨日まつエクサロンに行ったらしい。
彼女の睫毛を見ると、ブラウンのナチュラルにしたみたいだ。
化粧と相まっていつも以上に柔らかい印象。
「あ、ポテトあるよ。今揚げるね」
「そうなの?ありがとう」
私はポテトを揚げ始める。
「私ポテト好きなんだよね」
知っている。
付き合う前から、外食した時にポテトばかり食べているから。
テーブルの上にポテトが乗った皿を置く。
「ありがとう」
そう言いながら、彼女はポテトを口に運ぶ。
彼女の口は小さい。
本人は少し気にしているけど、私はよく視線が吸い込まれてしまう。
一本目を食べ終える。
彼女はすぐに二本目に行かず、ポテトの上で手を泳がせている。
熱かったらしい。
二本目をとった。
息を吐く。少し浅い息。
私は、それを見ていた。
別に珍しいことじゃない。
ポテトは揚げたてだし、誰だって熱い。
なのに、なぜか目が離せなかった。
ケチャップを付けようとして、少しだけ指先に赤が付く。
彼女は気付かない。
私はトマトが好きだ。
だから、気付いた。
ナプキンを手渡そうと思った。
思っただけだった。
私は、彼女の手元から目が離せない。
彼女の爪は長い。普段ネイルをしている。
私は何気なく自分の爪を見た。
長いけれど、切れば大丈夫。
二本目を食べ終える。
彼女は塩を落とさないように指先を揃える。
少し、塩っ気がある方が好きらしい。
私はそれを見ていた。
ポテトを見ていたわけじゃない。
彼女の指先を見ている。唇を見ている。
私は自分の爪を見た。
ほんの少し指を動かした。
「食べたら?」
彼女が言う。
指の動きが見えたらしい。
「うん」
私はポテトを食べる。
味はした。でも、何の味かはわからない。分からなくていいと思った。
お互いに無言でポテトを食べる。
私は、彼女の指を見ながら。
彼女のネイルは、薄いピンク。
私は、前日に自分のネイルを落としてよかったと安堵する。
今さら見ることじゃない。
彼女の指も、唇も、付き合う前から同じだった。
ポテトを食べ終える。
「ねぇ」
「なに」
「ずっと私のこと見てたでしょ」
彼女には、ばれていたらしい。
私は、そっと窓の外を見た。
窓の外は既に暗くなっていた。もう冬だから日が沈むのが早いらしい。
彼女がナプキンで指先を拭く。
でも、少しだけ赤が残った。
彼女は手を私に見せている。
「手、洗おうか」
「うん」
私は、電気を消して、彼女の赤がついた手を取った。
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コメントありがとうございます😊
タイトルとのギャップも含めて楽しんでいただけたようで嬉しいです!
でも、読んだら恋愛小説でした。
楽しませてもらいました。