SF・ファンタジー

バク然とした夢と不安

1,702文字 約4分で読了
作者:lue
やぁ まんまる月夜の素敵な夜に こんばんは 吾輩はバクである バクというと 夢を喰うという言い伝えの アリクイに似た 中型の動物を想像する人も多いと思うが 大よそ そのイメージで間違いない 『夢を喰う』なんていうと 怖がる人もいるかもしれないが だが 待ってほしい 人間の記憶には限界がある 毎日見る夢を 毎日すべて記憶しておく事は不可能だし そんな事をしたら すぐに脳がいっぱいになってしまう そこで 我々バクが君達 人間の夢を喰うのである そうする事で 君達の脳の記憶領域を確保し 日々の暮らしに支障が出ないよう 必要な情報を記憶出来る状態に保つ 言ってしまえば 古くから続く 人とバクとの共生関係だと思ってほしい 決して 怖いものじゃない それに君達だって いつまでも 悪夢を引き摺りたくはないだろう? さて 今晩 こうして君の夢に出てきたのには ちょっとした理由がある と 言うのも 近年 我々バクは 深刻な食糧危機に直面している 理由はいくつかあるのだけど まず一つは 人の睡眠時間が減った事 仕事や勉強に追われ 深夜まで起きてる人は 昨今 決して珍しくはないと思う それに加え テレビにパソコン スマホが普及した事で つい 夜遅くまで起きている人がとても増えた これはすなわち 人が寝ている時間が減っているという事であり = 夢を見ている時間が減っている という事実にも繋がる 我々 バクにとっては 由々しき問題である けれど それだけならまだ大丈夫 危機と呼ぶほどじゃない 人間が米やパンを食べられなくても 魚や野菜を食べて生きていけるように バクにとって喰う夢は 主食ではあるものの それだけを食べて生きてるわけじゃない それに睡眠時間が減っているといっても それが 絶対にゼロになる事はない 人は必ず寝る 日々のどこかで 必ず夢は見るのである 問題はここから 人の見る夢が睡眠時間の減少に伴い 減った事で 我々が日々 備蓄しているエネルギー 人間で言うところの 保存食とも呼べる存在に 手を付けねばならない事も増えてきた 夢は夢でも レム睡眠時における 記憶の整理整頓の際に生じる事象ではなく 君達が将来 ああしたい こうしたい ああなりたい こうなりたい 未来に対し抱く願望 そちらの方の夢 人はこの夢を叶えるために 大量のエネルギーを生み出し そして消費する そして その夢が成就した暁に 今まで費やしてきたものとは比較にならない程の 莫大な量のエネルギーが発生する 人間の目には見えず 視覚としては捉えられないので あまり実感が湧かないかもしれないが それはひとつの小さな宇宙を生み出すに匹敵するくらい 大量で良質のエネルギーが発生するのである その一部を 発生する量からすると本当にほんの一部を 『夢を喰う』事で 我々バクの食料として備蓄しているのである もし 睡眠時における 夢が減少していても そちらの方から得られるエネルギーで 我々は生きていけるはずなのだ ところが だ 最近の人間はそちらの方の 未来や将来に見る夢の方まで さっぱり見なくなってしまった 世界情勢の悪化や雇用の不安定化など 理由は様々にあるのだろう それは人と人の夢に密接に関わって生きてきた 我々 バクにもよく分かる けれど 見る夢も抱く夢も そのどちらも 充分な量を得られなくなってしまっては バクの一族は滅びる他 道はない 今 バクは 人が失くしてしまった夢と運命を共にしようとしている 破れた夢の残骸を喰い繋ぐ事で なんとか生き長らえてはいるが それも いつまで保つか分からない 叶った夢とは反対に 諦めた夢は世に溢れていくばかりだけど 人の夢が叶わなかった時 その叶わなかった夢を いつまでも引き摺る事のないように それを食べてしまうのも 我々バクの務めではある しかし それはあまりにも不味く そして栄養価もとても低い 人間と同じで諦めた夢だけでは 食べていけないし 生きてはいけないのである だから 人間よ どうか 今一度 夢を見てほしい 抱いてほしい 我々も滅びたくはないし それに素敵な夢を見る 人間という種族が好きである だからどうか バクのためにも そして人間自身のためにも どうか もう一度 夢…を…… …… … ああ もうすぐ夜が明ける 夢が醒める この夢は喰わずにゆくから どうか 今伝えた事をゆめゆめ忘れないでほしい さぁ そろそろお別れの時間みたいだ 君達がまた素敵な夢を見る事を 今からきっと楽しみにしているよ それじゃあ ―――
2026/10/27 ・ 👁️ 9回 ・ 💬 0件

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