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彼女の隣
1,255文字
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駅の改札口に彼女がいた。
私は久しぶりに見る彼女へ歩み寄る。
「お疲れ様。ここ最近忙しかったの?え!?リュックでか!」
彼女はイヤホンをしている。背中には大きなリュック。
彼女は相変わらず意地悪で、私は慣れている。
私は気にせずいつも通り、話しかける。
「ねぇ、無視しないでよ」
彼女は片側のイヤホンを外し、次はスマートフォンを弄る。
「なにしてるの」
私は横からスマートフォンの画面を覗いた。
地図アプリが開かれている。
彼女が電子掲示板を見て、人差し指で行き先を追っている。
「こっちだよ、いつも行ってるじゃん」
私は彼女に手招きをする。
彼女が付いてくる。
「ほら、おいで」
二人で駅のホームに着く。
「なんで今日はそんなに怒ってるの?私なにかしたかな?」
彼女はまだ黙っている。
最後にちゃんと話した時のことを思い返すけれど、思い当たらない。
電車がゆっくりホームに到着した。
彼女が右足で電車に乗るから、私も右足で乗った。
彼女が大事な日に、願掛けで右足から乗るのを私は知っている。
彼女が椅子に座ったから、私も隣に座る。
彼女の隣が、私の席なのは昔から変わらない。
「ねぇ、好きだよ」
反応がない。いつもだったら反応があるのに。
「いい加減、反応して」
私は少しだけイライラした。
「もういい」
私も彼女を無視することに決めた。
でも、やっぱり彼女が気になる。
隣の席を見ると、彼女はどこも見ていない瞳で窓を眺めていた。
あんまり見ない顔だけど、そんな顔でも私は好きだった。
「あ、そろそろ……」
彼女が電光掲示板を見て呟く。
「そうだね……いこっか」
電車が停止して、駅のホームに着く。
「ちょっと肌寒いね」
私はそう言いながら、彼女の隣を歩く。
彼女を見ると手をコートのポケットに突っ込んでいる。
「ねぇ、そのリュック何が入ってるの?」
相変わらず無視をされている。
しばらくお互い無言で歩いていると、彼女が立ち止まる。
「花屋だね」
彼女が花屋に入っていった。
私も入ろうかと思ったけれど、プライベートなことだしなんとなくやめた。
彼女は手ぶらで出てきた。
「リュックに入れたの?」
次はコンビニ。
コンビニは一緒に入っていいだろう。
「あ、これ買ってー。ペプシ」
彼女は微笑みながらペプシを2本、カゴに入れた。
「なんだ、怒ってないじゃん。ありがとう」
一緒にコンビニを出た。
「ペプシおいしいよね。君も好きだよね」
彼女は返事をせず、また歩き始めた。
私も隣を歩く。
見慣れた坂道を上っていく。
「こっち、久しぶりだね」
彼女は何も言わない。
鼻から短く息を吸って、口から吐く。何度か同じことを繰り返していた。
しばらくすると、石の門が見えてきた。
「あ、やっぱり、ここだったんだ」
彼女の息が徐々に浅くなる。
彼女の歩幅が狭くなり、足取りが速くなる。
コートのポケットから出た手が、強く握られていた。
私もついていく。
私と彼女は、一つの御影石の前に立った。
「久しぶり」
彼女は言葉を途切れさせながら、そう言った。
「うん、久しぶり。ようやく私たち話せたね」
そして、彼女はペプシを御影石の前に置いた。
私は彼女の頭に手を添えた。
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