恋愛

彼女の隣

1,255文字 約3分で読了
作者:ReiN.
 駅の改札口に彼女がいた。    私は久しぶりに見る彼女へ歩み寄る。  「お疲れ様。ここ最近忙しかったの?え!?リュックでか!」  彼女はイヤホンをしている。背中には大きなリュック。  彼女は相変わらず意地悪で、私は慣れている。  私は気にせずいつも通り、話しかける。  「ねぇ、無視しないでよ」  彼女は片側のイヤホンを外し、次はスマートフォンを弄る。  「なにしてるの」  私は横からスマートフォンの画面を覗いた。  地図アプリが開かれている。  彼女が電子掲示板を見て、人差し指で行き先を追っている。 「こっちだよ、いつも行ってるじゃん」  私は彼女に手招きをする。  彼女が付いてくる。 「ほら、おいで」  二人で駅のホームに着く。 「なんで今日はそんなに怒ってるの?私なにかしたかな?」  彼女はまだ黙っている。  最後にちゃんと話した時のことを思い返すけれど、思い当たらない。  電車がゆっくりホームに到着した。  彼女が右足で電車に乗るから、私も右足で乗った。  彼女が大事な日に、願掛けで右足から乗るのを私は知っている。    彼女が椅子に座ったから、私も隣に座る。  彼女の隣が、私の席なのは昔から変わらない。 「ねぇ、好きだよ」  反応がない。いつもだったら反応があるのに。 「いい加減、反応して」  私は少しだけイライラした。 「もういい」  私も彼女を無視することに決めた。  でも、やっぱり彼女が気になる。  隣の席を見ると、彼女はどこも見ていない瞳で窓を眺めていた。  あんまり見ない顔だけど、そんな顔でも私は好きだった。 「あ、そろそろ……」  彼女が電光掲示板を見て呟く。 「そうだね……いこっか」  電車が停止して、駅のホームに着く。   「ちょっと肌寒いね」  私はそう言いながら、彼女の隣を歩く。  彼女を見ると手をコートのポケットに突っ込んでいる。   「ねぇ、そのリュック何が入ってるの?」  相変わらず無視をされている。  しばらくお互い無言で歩いていると、彼女が立ち止まる。 「花屋だね」  彼女が花屋に入っていった。  私も入ろうかと思ったけれど、プライベートなことだしなんとなくやめた。  彼女は手ぶらで出てきた。 「リュックに入れたの?」  次はコンビニ。  コンビニは一緒に入っていいだろう。 「あ、これ買ってー。ペプシ」  彼女は微笑みながらペプシを2本、カゴに入れた。 「なんだ、怒ってないじゃん。ありがとう」  一緒にコンビニを出た。 「ペプシおいしいよね。君も好きだよね」  彼女は返事をせず、また歩き始めた。  私も隣を歩く。  見慣れた坂道を上っていく。  「こっち、久しぶりだね」  彼女は何も言わない。  鼻から短く息を吸って、口から吐く。何度か同じことを繰り返していた。  しばらくすると、石の門が見えてきた。  「あ、やっぱり、ここだったんだ」  彼女の息が徐々に浅くなる。  彼女の歩幅が狭くなり、足取りが速くなる。  コートのポケットから出た手が、強く握られていた。  私もついていく。    私と彼女は、一つの御影石の前に立った。  「久しぶり」  彼女は言葉を途切れさせながら、そう言った。  「うん、久しぶり。ようやく私たち話せたね」  そして、彼女はペプシを御影石の前に置いた。  私は彼女の頭に手を添えた。
2026/10/27 ・ 👁️ 2回 ・ 💬 0件

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