コメディ・日常
ひらりと落ちて
302文字
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お爺さんが廊下をゆっくり歩いてきて、縁側に腰を下ろした。
「婆さん、お茶」
返事はない。
しばらくすると、黒猫が喉を鳴らしながら寄って来た。
お爺さんの横に座ると、手の甲をザリザリと舐め始める。
「なんじゃ。飯ならさっきやったじゃろ」
それでも猫は舐め続ける。
お爺さんは目を細めて、猫の頭をゆっくり撫でた。
ふわりと風が通り抜ける。
桜の花びらがひらひらと舞い、湯呑みに落ちて揺れた。
「ぶぇっくしょい!」
盛大なくしゃみのあと、目尻に涙がにじむ。
お爺さんは指でそっと目元を押さえた。
そのとき、湯呑みの緑茶が、小さく波打った。
桜の花びらが、ゆらゆらと優しく揺れる。
猫がゆっくりと目を細める。
お爺さんは、猫の頭をそっと撫でた。
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