コメディ・日常

ひらりと落ちて

302文字 約1分で読了
作者:綴
お爺さんが廊下をゆっくり歩いてきて、縁側に腰を下ろした。 「婆さん、お茶」 返事はない。 しばらくすると、黒猫が喉を鳴らしながら寄って来た。 お爺さんの横に座ると、手の甲をザリザリと舐め始める。 「なんじゃ。飯ならさっきやったじゃろ」 それでも猫は舐め続ける。 お爺さんは目を細めて、猫の頭をゆっくり撫でた。 ふわりと風が通り抜ける。 桜の花びらがひらひらと舞い、湯呑みに落ちて揺れた。 「ぶぇっくしょい!」 盛大なくしゃみのあと、目尻に涙がにじむ。 お爺さんは指でそっと目元を押さえた。 そのとき、湯呑みの緑茶が、小さく波打った。 桜の花びらが、ゆらゆらと優しく揺れる。 猫がゆっくりと目を細める。 お爺さんは、猫の頭をそっと撫でた。
2026/10/25 ・ 👁️ 3回 ・ 💬 0件

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