コメディ・日常
安上がりの鍋
533文字
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今日、役所に婚姻届を出した。
必要事項を空欄に書き入れて、押印して、窓口に出すだけ。
なんだろう、これ。
イメージとしては、この男と背中合わせにぐるぐると太い縄で縛り上げられた気分。
5年一緒に暮らした末の、これ。
最初は、それでもまあまあ恋っぽかった。
でも、そのうちどんどん互いに隣にいることが当たり前になって。
時が経てば経つほど、この男の私への思いの薄っぺらさを見せつけられる。
ケチで。口うるさくて。
自分も色々いい加減なくせに、それを棚に上げて。
最初はイラつく度に喧嘩もしてみた。
けど、もう何だかそれも面倒。
喧嘩したからってこの人が改まるわけでもない。
そう。
私も、大した女じゃない。
ズボラで、雑で、酒飲みで。
人のことなんて、言えないの。それは知ってる。
だから——別れられない。
お互いのダメなところに安心する。
そんなことを思ってしまうのが、もうダメ。
ダメなのにね。別れられない。
——ダメなところを許し合えるのが一番幸せよ。
母親が、昔そんなことを言ってたっけ。
なんだか、ちょっと笑ってしまう。
「今日、鍋にすっか。寒いし、ラクだし」
「いいね。あ、ビール切れてたわ」
鍋。
準備も片付けもラクで、適当で、安い材料でもとりあえず温まる。
安上がりの鍋みたいな夫婦。
——まあ、いいとするか。
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