ホラー・怪談
おかえり、ポテトサラダ
860文字
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仕事が終わり、帰宅をした。
黒い冷蔵庫を開ける。
彼女と家電量販店に行った時の冷蔵庫。
二人暮らしにちょうどよく気に入っている。
「あ、なにこれ。おいしそう」
入れ物の中には、おいしそうな鮭が入っていた。
「あれ、こんなの作ってたっけ」
冷蔵庫から入れ物を取り、レンジで少しだけ加熱する。
「わ、いい匂い」
蓋を開ける。
少しだけの加熱だから煙は出ない。
見た感じ、温かいかわからない。けど、鮭を一口。
「あ、塩レモンだ」
彼女は、昔からほぼ毎日料理をしている。
仕事で大変なのに、作るのは、好きらしい。
彼女は笑いながら「料理は趣味」と言っている。
ドアが開く音がした。
控えめな音。彼女らしいドアの開き方。
「ただいまー」
彼女が帰ってきた。
「おかえり。これおいしいね。作ってくれてありがとう」
彼女の顔を見る前に大きな声で玄関に向けて声をかける。
「どれのことー?」
カツン。
彼女が玄関でパンプスを揃えている。
「この鮭のやつ」
「鮭?鮭なんか買ってたっけ?」
「仕事帰りに買ったんじゃないの?」
「いや、まだ高いから買ってないよ」
心当たりがないらしい。
軽く首をかしげたまま、リビングへ入ってくる。
「なにこれ?」
「だから、鮭の塩レモン焼き?」
彼女は食べかけの鮭を見つめている。
「私作ってないよ」
彼女が食べかけの鮭を一口。二口。
美味しかったらしい。
「え?いやいや食べたらだめだよ!」
「でも、美味しいし」
「とりあえず、窓鍵かかってるかな」
私は、鍵がかかっているか確認をした。
「特に問題なかった」
「じゃあ、鍵交換と警察だね」
普段通りの声色でいう彼女。
――――
鍵交換。警察への届け出が終わって数日。
仕事が終わり帰ってきた。
「あ、ポテトサラダがある」
彼女が帰ってくるまで、まだ時間がある。
少しだけ食べよう。
「美味しい」
顔の筋肉が緩む。
「ただいまー」
「おかえり。ポテトサラダおいしいね」
「え?」
彼女が速足でリビングに来る。
「私作ってないよ」
「嘘……」
彼女が考えこんだ。
たまに見る、何かを真剣に考えている顔。
「次は何が入っているかな?」
真剣な顔なのに、言っていることは呑気だった。
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