恋愛

次の日に何をしよう

967文字 約2分で読了
作者:ReiN.
 音が止まる。  窓を叩く風の音が止まる。  テレビが止まる。  「……?」  急に全てが止まった。  ふと、腕時計を見る。  19時45分19秒。  そこで秒針が止まっている。  外に出てみる。  全てが止まっていた。  歩く人、落ちかけの葉っぱ、今にも走り出しそうな飼い犬。    ……これはいわゆるSFの時間停止?  とりあえず、家に帰ろう。  冷蔵庫も止まっていた。  何も起きない。だから、何もしない。   ────  それから何回も、19時45分19秒に世界が止まる。  この能力を使っている人はなにか制約があるのだろう。  暇だからぼーっとする。    なぜ止めるんだろう。何かしたいのかな。  犯罪じゃなければいいけれど。  世界が止まっている時間は測れないけど、あまり長くない気がする。  長くても体感30分くらいで日によってバラバラだ。  ぼーっとテレビを見る。  瞬きもせず、口を半開きのままの芸能人。  瞬きしないなんてすごいなぁ。  そりゃそうか、時間が止まっているからね。  私もこの時間停止の間になにか有意義なことをしようかなぁ。  今まで埃を被っていた『アルジャーノンに花束を』を手に取る。  賢くなった気分だけが残る。  でも、明日になったら忘れるだろう。    ────  19時45分19秒。  今日も時間が止まった。  私はいつもの通り、『アルジャーノンに花束を』を開く。  ふと、誰かが家に入った音がする。    時計を確認する。  19時45分19秒。    気づいた。私の家に時間停止した本人がきた。  私は、好奇心で時間が止まったふりをする。  姿勢はどうしよう、本を読んでいて、ふと前を見る姿勢になろう。  そうしたら顔が見える。  ドアがノックされる。  はーい、と内心返事をしながら待つ。  ドアが開く。 「……凛?」  聞き慣れた声。  顔が動かせないが声の主が分かった。  恋人の瑠美の声。 「…あ、凛もやっぱり止まってる」  止まってないよ。  内心冗談を言いながら、瑠美が何をするかドキドキする。  瑠美はそっと、私の髪の毛に触れ、優しく撫でる。  思わず、顔を見そうになる。  そして、瞬きがしたい。 「かわいいね」  ありがとう。  瑠美もかわいいよ。  顔が近づいてくる。  凛の吐息が、唇にかかる。  あ…キスされる。 「初めては、やっぱり凛の意識があるときがいいかな。またね、凛」  私の頬を撫でた後に、ドアノブに手をかける。 「…意気地なし」  私は、小声でつぶやく。  瑠美が、こちらを向いた。  明日は瞬きしてみよう。  キスされる前に。
2026/10/24 ・ 👁️ 3回 ・ 💬 0件

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