コメディ・日常
どんぐりの木の下で
1,282文字
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ある日小学校の頃の友人から一本の電話がかかってきた。
久しぶり!元気にしてた?
どうやら、しばらく地元を離れていたがまた戻ってきたらしい。
そんな他愛のない挨拶から始まり、昔埋めたタイムカプセルの話になった。
友達とタイムカプセルを埋めたのは小学校の卒業式の時。
あれからもう三十年経った。
本当は埋めてから十年後に一緒に掘り起こそうねと約束したのだが、そんなことはすっかり忘れていた。
十年、二十年、そして気がつけば三十年、あの卒業した日から一度も会っていないことに気がつく。
私が中学受験で違う中学校に通うことになったから会うことがなかったのだ。家は近所だったのに訪ねていくことがなくなってしまった。案外人生というのはそういうものかもしれない。
そばにいて近くても会わずにずっと長い間過ごしてしまう。
クラスメイトだってクラスが変わったら、もう一緒に遊ばなくなってしまう子もとっても多いのだから。
「埋めた場所ってここで合ってたっけ?」
「多分ねー」
そう言いながら二人で学校からほど近い神社の裏にやってきた。
「どこだっけ?場所覚えてる?」
「確か手水の横のどんぐりの木のそばだよ」
「あーそういえばここだっけ。でも三十年も経っちゃったし見つかるかな」
「そうだね。こういうのテレビ番組で見たことあるけど結局 出てこなかったりすることの方が高いよね」
「うーん、まあそれはそれで仕方ないよね」
園芸用の手持ちスコップを片手に私たちはどんぐりの木の根元を掘り始めた。
「待って何か当たった」
「え?嘘!」
それは錆びたクッキー缶だった。
あの当時、私たちが埋めたものだ。
ドキドキしながら蓋を開ける。
中に入っていたのはドロドロの紙らしきものだった。
「あー、30年も経ったらこうなっちゃうよね」
「まあむしろ、出てきただけマシじゃない?」
2人で顔を見合わせクスクスと笑う。
これはある程度予想していた結果だ。
正直に言って出てこない可能性が大きいと思っていた。
だからもうこの錆びついたクッキー缶が出てきただけでも私たちは満足していた。
「ねえ、手紙に何て書いたの?」
彼女がそう聞いてくる。
「もう忘れちゃったよ」
私は恥ずかしくなってそう言った。
「そうなんだ!私は覚えてるよ!」
「えぇ?」
私が彼女の方を見ると、これでもかと言わんばかりの得意顔をしている。
そういえば同級生だった時、彼女のこんな顔をよく見たな……と思い出す。
「私は、ちはるちゃんとずっと友達でいられますように!って書いた」
満面の笑みを浮かべそういう彼女。
変わらないあの頃と。
そんなはっきりした性格の彼女がとても好きだった。
「私も……同じこと書いた」
私は小さな声でそう言った。
「やっぱり!私たち親友だもん」
そう言って屈託ない笑顔で笑う彼女を見て私もつられて微笑んだ。
たとえ十年、二十年、あるいはもっと長い時間会わなくても、私たちは親友だ。
それは一瞬でこの心の距離になる関係だからだ。
あの日、一緒にクッキー缶を埋めた彼女がそこにいた。
どんぐりの木の下で、いつかの未来を信じていたあの時間に私たちは戻っていた。
私たちは誓い合ったのだ。
約束のこの場所でまた会おうと……
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