ポエム・詩
まちぼうけ
1,004文字
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まだか、まだ来ないのか。
イライラしつつ顔を上げる。
だから言ったんだ。
「じゃあ○○○モールでね」
「△▽駅で」
全く君は、いつだってそうだ。
そんな曖昧な約束で、 ちゃんと会えるわけがないのに。
いいか、施設は広いんだ。
私は東入り口で、君はインフォメーションで。
ふたりの時間を一体どれだけ無駄にしてきたことか。
時計をちらと見、それから、もう十何度目かのベルを鳴らすも、やはり君は電話に出ない。
焦燥にも似た怒り。
ああ、まただ。
まだ気がつかないのか。
次こそはもっと綿密な計画を。詳細かつ狂いのない、隙のない約束を。幾度となく思いを巡らせては、同じ事を繰り返す。
見ると、若い男が安堵の表情を浮かべながら、私のすぐ隣を駆け抜けていった。
男はばつが悪そうに笑いながら、同い年くらいの女のもとへ近づいてゆく。
その女は、ひどく嬉しそうな顔で男に寄り添った。
ふたりが仲良く肩を並べ、私の目の前を通り過ぎていった。
仕合わせな横顔に、仕合わせな横顔が重なる。
なんとまあ、呆れたことだ。
女はさっきまで、身体を揺らしながら足踏みをし、私と同じようにイライラしていた。
その感情も、今はもうすっかり忘れてしまっている。
そして次回、性懲りもなく 同じ過ちを 繰り返すのだろう。
ふたりの小さくなってゆく背中を見届け、もう一度だけ時計を見ると、私は小さくため息をついてその場を離れた。
土曜日の午後、いつも決まった時間に、私は必ずそこを訪れる。
そうして電話と時計とを交互に見つめ、時に辺りを探しながら、またイライラと空を見上げる。
そこには私と同じように誰かを待つ人、人、人。
最後の一組が目の前から消えるのを見届けて、私はようやくその場を離れる。
ふと見ると、映画館の入り口から少し離れたところで、ふた組前に立ち去ったペアが喧嘩をしていた。
「見ろよ、映画がもう始まっちゃったじゃないか。君のせいだぞ」
「何よ、あなただって前回、同じことをしたじゃないの」
まあまあ、赦してやんなさいよ。
これからのふたりの時間のためにも、チケットを無駄にしないためにも、ここは怒りを鎮めてさ、途中から楽しめばいいじゃないか。
心の中でそのふたりを宥めつつも、先ほどまで苛々していた自分を思い出して恥じた。
来週も、さ来週も私はここに来るのだろう。
君を待つために。
はじけるような笑顔と、何とも言えない安堵感、ふとした気の緩みを味わうために。
もう二度と、君は来ないと分かっているのに。
(おわり)
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