その他

川

566文字 約2分で読了
作者:開津文太
 一人の藩士が、城下町で切腹した。  政を顧みず、贅沢三昧の藩主が年貢を上げる事に対して、再三諌言したが聞き入れられず、遂には主を諌めるために、腹を切るに至ったのだ。  しかし、城下町の中心で、大衆の面前で切腹した事に、恥をかかされたと思った藩主は怒って、藩士の遺体を領内に流れる川に投げ棄ててしまった。  その年の秋から、大雨が降り、風が吹き荒れ、川が氾濫して、作物が不作になってしまった。  不作がいつまでも続き、これには藩主のみならず、領民まで困ってしまい、藩士の祟りだと噂するようにまでなった。  或る日、藩士の嫡男が朝起きると、枕元に手紙があった。読んでみると、死んだはずの父の筆跡でこう書かれていた。  ならぬことはならぬ。為すべきを為せ。  嫡男は手紙を母に見せ、二人は決心した。  その年も、天候が荒れ、川が氾濫しそうになっていた。  嫡男と母は白装束で身なりを正し、川に飛び込んだ。二人は流されて、遂に遺体も見つからなかった。  すると、荒れていた天候は収まり、川も静まり、その年は豊作となった。  領民たちは喜び、藩主もこの話を知り大いに反省して、以降は質素倹約に努め、政にも精を出して名君と言われるまでになった。  この話は今でも地域に残っている。  話に出てくる川は三(さん)洲(ず)と呼ばれており、必ず三人で川に近寄ってはいけないと、今でも伝え続けられている。
2026/10/10 ・ 👁️ 32回 ・ 💬 0件

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