ホラー・怪談

サボテン

787文字 約2分で読了
作者:開津文太
 砂漠の中を、一人の男がさまよっていた。  延々と続く砂。方角さえ分からないまま、水を求めて歩き続ける。  喉はカラカラで、渇きは限界に達していた。  歩き疲れ、座り込んでしまう男。  ふと、顔を上げると、人だかりのようなものが見えた。  ――水を恵んでもらえるかもしれない!  そう思った男は、フラフラとその人だかりの方へ歩を進めた。  近づくにつれて、人ではないことが分かった。人だと思っていたものは、サボテンであった。  男は希望が砕け散ってしまったように思えた。だが、かすかに覚えていた知識があった。  ――サボテンを切れば水が飲める。  男は早速ポケットから折りたたみナイフを取り出し、近くにあるサボテンへ向かった。  ナイフは短く、サボテンの棘が手に刺さり痛みを感じたが、今はそれどころではない。  切り込みを入れると、サボテンから勢いよく水が吹き出した。  その水は赤かった。  男はおっかなびっくり、一度離れたが、背に腹は代えられないと、その水を両手で受け止め、飲んだ。  水は甘かった。  もう一度飲む。やはり甘く、美味かった。  久しぶりの水に歓喜した男は、水を存分に飲む。さらには空になっていた水筒へもその水を入れて補充した。  一しきり水を飲んだ後、辺りを見渡した男は気付いた。  ――何かがおかしい。  サボテンはどれも同じ形をしていないのは当然だが、それでもおかしい。  まっすぐに立っているものもあれば、横になっているもの、走っているように見えるもの、両手を合わせ祈っているように見えるものまであった。  嫌な予感がした男は、その場から離れようとした。  しかし、足が動かない。  恐る恐る下を向いた男は絶叫した。見た光景に男は取り乱す。もはや遅かった。  そして、響き渡っていた叫び声が、砂漠から消えた。  砂漠の中で、サボテンが群生している。  その内の一本は干からびていた。  もう一本は、水筒とナイフが持たされているように、サボテンと一体化していた。
2026/10/14 ・ 👁️ 67回 ・ 💬 0件

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