ホラー・怪談

彼女のかわいい顔

918文字 約2分で読了
作者:ReiN.
 「え?」  >○○生命:死亡保険金 150,000円  通帳アプリを確認すると、記憶にない振り込みがあった。  死亡保険金。  ○○生命は、彼女が入っている死亡保険だ。  彼女はソファでぼんやりテレビを見ている。茶髪が少し乱れていた。  思わず伸ばした指がその髪に触れる。 「なに?」 「いや、生きてるよね?」 「当たり前じゃん」 「ねぇ、これ見て」  通帳アプリを見せる。 「え?見ていいの?いち、じゅう、ひゃく、…意外に入ってるね」   「そういうことじゃない。よく見て」 「何が?」 「いや、死亡保険金って」 「何言ってるの?」  相変わらず、何も考えていない顔。 「ここ」  私は指を指す。 「給料34万入ってるね」 「そこじゃない」  彼女は、じっとスマホ画面を見る。 「……34万」 「見えない?ここ」 「なにいってるの?」  呑気な顔から困惑した顔になった。  とりあえず、ぺたぺた顔を触る。 「なに?やめてよー」  嬉しそうに目を細めている。  違う、そういうことじゃない。  「ちょっと、保険会社に問い合わせてくる」  「うん。いってらっしゃい」  彼女は手をひらひら振り、またテレビを見始めた。 ―― 「おかえり。で、どうだった?」 「えっと、死んでるみたい」 「誰が?」 「あなたが」 「そんなわけないよ」  彼女がころころ笑っている。 「とりあえず、寝よう」  呑気な彼女の声に、なんとなく頷いた。 ――  翌日、彼女からメッセージが届く。  >なんか私、存在しない扱い受けてるんだけど…いじめ?  急いで返信をする。  >とりあえず、帰ってきて。  1時間程度。  彼女が困惑した顔で帰ってきた。 「どういうこと?」  私が聞きたい。   「ちょっと待って、みんなに聞いてみる」  私は、何人かに連絡をした。  返事は似たようなものだった。  >まだ日が浅いから無理ないよね…。  >あの子のためにも前向きに生きよう。  彼女はソファの上でポテチを食べながら私を見ている。  ポテチの音だけがやけに大きく聞こえた。 「……なんでそんな顔するの?」  私のスマホには、  既読だけが増えていった。  彼女にスマホ画面を見せる。   「私死んでるじゃん」  彼女の指先には、まだ塩がついていた。 「じゃあ私、働かなくてよくない?」   「生活費どうするの?」  彼女が笑顔で通帳アプリを指した。  その顔は、いつも通り何も考えていない顔だった。
2026/10/03 ・ 👁️ 33回 ・ 💬 0件

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