SF・ファンタジー
箱庭の君
679文字
約2分で読了
放課後、夕日が沈むのを見ながらファミレスでパフェを食べる学生が一人いた。彼の黒髪が夕日で真っ赤っかになるのは美しい。心なしかその瞳も夕日の赤色に浸食されている。
少年が何を考えているのかうかがい知れない。無心でパフェを食べているのか、それともこの世界が瞳を閉じて眠る事に心を躍らせているのか。「作られた明日」を憂いているのか。
人のほとんどいないファミレスで、彼は黙ってパフェを食べ続ける。その落ち着いた佇まいは、さしずめ機械仕掛けの人形のようだった。
器が空になる頃に、少年は静かに席を立って店を出る。夕日はまだ沈んでいない。交差点に差し掛かり、赤信号で彼が立ち止まる。家に帰るのだろう。夕日はまだ沈んでいない。彼が帰るのには丁度いい仄暗さだ。
「今日も楽しかったですよ」
少年がポツリと呟いた。独り言のようで、独り言ではない。少年は空を見上げ、しっかりと「こちら」を見据えて笑った。
「貴方の方はどうですか?」
問いには答えなかった。彼の爛々とした瞳は、全てを見通しているようで怖かったから。まるでこの箱庭を知り尽くしているかのような、「私」の中の虚像を見透かしているような、夕暮れの瞳。
「また会いましょうね。たまにはドリンクバーくらい奢って下さいよ」
信号が青になった。少年は歩き出し、私から意識を逸らしていく。私を忘れていく。そして、思い出したようにまたこちら側を覗いてくるのだろう。空想の中なのに、彼だけはいつだってその輪郭をはっきりさせていた。
夕日が沈んでいく。目を閉じる。少年がいなくなる。意識が溶ける。また、彼の放課後を勝手にでっち上げてやろうと、目論んだ。
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