SF・ファンタジー

星の最期

1,811文字 約4分で読了
作者:lue
「ベテルギウスは間もなく寿命を迎え  超新星爆発を起こし 天体上からその姿を消すのではないか」 天文学者の間では こう考えられている ベテルギウスはオリオン座の一等星 冬の大三角を形成する星の一つと言えば ピンとくる人も多いのではないだろうか 古来より 人々の夜を明るく照らし 広い天体上でも十指に入るまばゆさを放っていたこの星は 近年 減光を繰り返し とうとう二等星になるまでその明るさを落とした ベテルギウスは 元々 変光星と呼ばれる星で 暗くなったり明るくなったりを繰り返す星ではあるが 現在 観測史上 類を見ないほどに暗くなってしまっている この事から ベテルギウスはもう間もなく寿命が尽き 星の死―― … すなわち星としての一生を終え 最後に超新星爆発を起こし 天体上から消滅するのではないか こう まことしやかに囁かれている 果たしてそれは 本当なのだろうか? 天体の間もなくというのは 何十年や何百年が一瞬という世界なので それらが人間の感覚で すぐ訪れるとは限らないし 私達が生きてるうちに起こるとも限らない 結論を言うと 半分は事実であり本当である しかし もう半分 その真相は寿命などではなく 真実は他にある ベテルギウスはこれまで 人々の夜を 長い事 ずっとずっと照らし続けてきた しかし 近年の人類は 科学の発展により電気を発明し 自力で 夜を明るく照らす事に成功した これは 人類が夜に打ち勝ち 夜を克服したとも言えるだろう それを目の当たりにしたベテルギウスは思った 「私の役目も終ったのだろう」 と 無論 夜の全てを電気が照らせるわけではない 電気の通わぬ地では 未だに夜は星明かりを頼りに 人々や原生生物が暮らしているのだが だから 大半の星は 今も夜空から我々を照らし続けてくれている けれど 星にも意思があり意志がある 人にも性格があり 個人差があり 考えにも違いがあるように 星も各々 考え そして感じている事は様々なのである だから ベテルギウスは思った 「私はもう必要ない存在なのだろう」 と それぞれ 考える事が違うのだから そう考える星が出てきても 別段 不思議ではない ベテルギウスは寿命を迎えたわけではない 単に 自分の使命を終えたと考えたのだ 「ならば 私はもう不要だろう」 そう考えたベテルギウスは活動を終息させる決意をする これがすなわち 近年のベテルギウスの減光の原因なのである 夜を照らす必要がなくなったのであれば 我々はもう必要ない これがベテルギウスの答えだ では 寿命ではないのであれば 超新星爆発は起こらず 減光した状態のまま 残り続けるのだろうか? それはまだ 分からない ベテルギウスは云う 活動を終らせる決心はしたが その先の事はまだ考えてない と 役目は終えたと感じたが これまで夜空をずっと明るく照らしてきた それ以外の自分を想像出来ないのだという 夜空を照らすのをやめ ただの一惑星として 数ある星に紛れて 静かに余生を過ごすのか それとも 存在価値を失くした者として やはり 天文学者の言うように 遠からず超新星爆発を起こし 天体の塵となり 華々しく星としてのその生涯に幕を下ろすのか 今はまだ分からない と ――― もしかしたら ベテルギウスを観測出来なくなるかもしれない それは 明日かもしれないし 百万年後なのかもしれない ベテルギウス自ら 生涯を閉じるかもしれないし 本当に寿命がくるその時まで 生き続けるかもしれない それは 私達には分からないし ベテルギウスにも まだ分からない だから思う 今 観測出来る星々を 強く心に焼き付けておこうと 見慣れた星空ではあるが その中のたった一つの星ではあるが それが存在し続ける事は 永遠ではないし永久でもないのである もし 星としての結末がどうなったとしても 観測する我々に出来るのは その行く先を見届け そして心と記録に残す事だけである ありがとう ベテルギウス 貴方がこれまで 人類の夜をずっと照らし続けてくれた事を 私は決して忘れない ゆっくりお休み 星が最期を迎えるその時まで 我々は観測し続け そして 最後まで彼らを愛すのみである 「どんなものでも いずれ終わりは訪れる」 それは 星も 人類も その事を忘れずに 皆も天体観測にいそしんでほしい (ちなみに 地球からベテルギウスまでの距離は 約642光年 光が一年掛かって辿り着く距離 (約9兆4600億km) が 一光年の定義なので 現在 我々が見ているベテルギウスの姿は およそ 642年前のものという事になる つまり 実際にはもう642年前には爆発している可能性もある 肉眼では確認出来るのに 実際は既に宇宙の塵となり 跡形もないかもしれない そう考えると なかなか不思議な気分である)
2026/10/24 ・ 👁️ 17回 ・ 💬 0件

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