SF・ファンタジー
博士の愛した惑星 ●●▲●▲▲●●
2,899文字
約6分で読了
■月■日
博士と、別の星の言語で行っていたこの日報も、ひとりぼっちの私の日記となってしまいました。
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博士が死に、せっかく学んだ言葉も、もはや私以外に読める船員はいません。
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この交換日記……日報のきっかけは、博士の一声でした。ある日、こんなことを言い出したのです。
「せっかく宇宙に出るんだ。他の星の言語のひとつやふたつ。覚えなくてどうするんだ。」
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「▲▲▲▲●●▲●▲▲▲。●▲●▲●●▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲。」
博士は、自分は読めないくせに、私にそんなことを言ってきたのです。そのせいで、私は辞書を片手に、同じことを2回書く必要が出来てしまいました。
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でも、なんだかんだ私も楽しんでいたのだと思います。
なぜなら、博士が死んだ後も、私は未だに、同じ内容を別の星の言語で書き続けているのですから。
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さて、あんなに地球を愛していた博士は、30日前、皮肉にも宇宙の中で亡くなってしまいました。原因は、私たちの宇宙船が、宇宙人からの砲撃を受けたことです。
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思えば5年前、宇宙の研究をしている博士が、”とある星が地球を滅ぼそうとしている”という情報を手に入れたことから私たちの旅は始まりました。
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博士は地球を守ろうとし、爆速で宇宙船を作り、操縦士の私だけを連れ、宇宙に飛び出しました。
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順調な旅路、しかし、宇宙船が地球から50万キロほどの距離の時、悲劇が起こりました。
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地球を攻撃する砲撃が、私たちの船に直撃したのです。
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轟音でした。初めて砲撃を受けたときの感情を、私は忘れることができません。
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最初の数発は問題なく耐えることができましたが、攻撃は桁違いでした。私たちの船は、数百、数千、数万と砲撃を受け、エンジン室が壊れてしまいました。
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「操縦士を失うわけにはいかない。修理は俺が外に出て行う。」
「●●●▲●▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲。●●▲●▲●▲●▲●▲。」
そう言って出て行った博士は、遂に作業中に砲撃を受け、死んでしまいました。
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全てが詰んで、もうどうでもよくなりました。ただ最後に、博士と宇宙船と、博士が愛した地球を見たいと思いました。
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どうせ残された燃料はあと一日分くらいです。明日は私は、最後の燃料を使い、“地球に少しでも近づこうと思います”。
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■月■日
最後の燃料を使い果たした瞬間、驚くべきことが起きました。
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なんと、宇宙船が地球の引力に捕まり、燃料なしで、地球の周りを進みだしたのです。
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もうこの宇宙船は自力ではどこへも行けません。砲撃は未だに続き、船内には今も轟音が響いています。
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それでも、操縦席から見える地球は、青く、青く、美しく見えました。どうやら宇宙船が代わりに砲撃を受けることで、地球のことを守れているようだったのです。
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博士も、博士の作った宇宙船も、死に絶え、燃料が切れても、愛する地球のことを、守り続けていたのです。
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宇宙船は引力に任せ、地球の周りを周ります。このペースだと、残りの食料分で、1周くらいは周れるのかもしれません。そしてきっと、私が死んだあとも、この宇宙船は、博士が愛した地球を、守り続けていくのでしょう。
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私は、私の命が尽きるまで、この轟音の特等席で、美しい星を見続けようと思います。
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2050年、ちょうど10回目の月面着陸を成功させた人類は、月の地面に埋まっている、一冊の本を発見した。それは、”月に生命体が存在した”証拠となる、”異星人の手記”だった。
本の内容のうち、半分は解読が出来なかったが、書き手が、”地球の言語でも記していた”ため、研究者たちは、文章の内容を理解することができた。
手記の最後のページには、こんな言葉が、”地球の言語だけで書かれていた。”
「未来を生きる、美しい地球の皆さまが、いつかこの日記を読んでくれますように。」
その記述から45億年、月という名の宇宙船は、今も地球を守り続けている。
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