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指輪は知っている
697文字
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テレビを二人で見ている。
彼女の肩に頭を乗せている。それが私の定位置。
「そういえば、フォトウェディングいつにする?」
「フォトウェディング?何のこと?」
彼女が少しだけ拗ねたように。
「この前、撮ろうねって言ったじゃん。記念に」
「記念?」
「いやいや、誕生日に指輪渡したじゃん」
「……え?」
誕生日の記憶はある。
その日は、仕事があって夜に夜景がきれいなレストランに行った。
ただそれだけ。
彼女は、不機嫌そうな顔をしつつ、困った顔。
「忘れたふり?面白くないよ」
そう言いながらスマホの画面を私に見せる。
画面には、笑いながら泣いている私と照れ臭そうに笑っている彼女の顔。
指には、指輪がはめてある。
スマホから視線を外し、彼女の指を見ると指輪が。
そして、思わず私の指を見たら指輪がはめられていた。
さっきまでは、無かったはずの指輪。
デザインは同じ。緩い曲線をえがいているシンプルな指輪だ。
「…………」
指輪を外して内側を見る。
私と彼女のイニシャルと石がついている。
石は二つ付いている。多分、誕生石。
彼女は、自分の指輪を嬉しそうに撫でている。満足気だ。
「うん。そうだね」
私は相槌を打つことしかできなかった。
自分のスマホを開く。
写真やメッセージ履歴。
確認をしたら、全く記憶にないのに、彼女に指輪を貰ったことは確からしい。
「ねぇ、あの日、なんて言ってくれたっけ?」
記憶がないプロポーズの言葉、聞いていないのが悔しかった。
「また言うの?恥ずかしいから言えないよ」
彼女が指輪を指先で引っ搔きながら言う。
「じゃあ、フォトウェディングの時に、また言ってあげる」
「……うん」
でも、私は最初の言葉を聞いていない。
それが、とても後悔している。
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