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8月の140字小説まとめ 2026年
4,044文字
約9分で読了
8.1 夕霧/ひまわり/君の笑顔
夕立の後、珍しく夕霧が出ていた。
霞んだ ひまわりの花に君の笑顔が浮かぶ。
僕は夢を見ているのだろうか。
夕立の後に夕霧なんて出るはずがないのに。
目をこすってもう一度前を見ると、薄紅色に染まった入道雲が輝いていた。
きっと僕は真夏の陽炎の夢を見たんだ。
8.2 花火の残骸/濡れたアスファルト/最後の夏
夏の最後の思い出に君と行った花火大会の翌日、僕はボランティアの清掃に行った。花火の残骸を片付けアスファルトに水をまく。
また来年来ようねって約束をして。
綺麗になった道路を見て昨日の思い出に浸る。
来年もまた君と見に行けます様に!
8.3 風鈴/冷たい麦茶/届かない声
日陰になった 縁側で冷たい麦茶を一口。
風鈴の音がちりんと響いた。
お盆は死者たちが帰ってくるという。
ともに過ごした君はもういない
君に伝えたい言葉を僕は何故言わなかったのか。
お盆になったら君もきっと帰って来る。
君の仏前でその言葉を伝えよう。
8.4 線路沿いの猫/夕焼け/約束の場所
僕の飼い猫が行方不明になってしまった。
あちらこちら探して回る。
沿線沿いを歩いて行ったよ、という話を聞いて僕は歩いて行った。夕焼けの町、遠い昔君と約束した場所で猫はいた。
やっぱり君の生まれ変わりなんじゃないか……
僕は猫を抱きかかえた。
8.5 打ち上げ花火/浴衣の帯/遠ざかる背中
君と打ち上げ花火を見たのは去年。
綺麗な浴衣の帯がお別れの時に揺れていたのを思い出す。
まるで琉金のしっぽみたいだ。
君がいなくなった隣の席は寂しく、一人で見に行った花火大会。
金魚すくいで琉金を連れて帰った夜。
……もう一度君に会いたいよ
8.6 朝の蝉/溶けたアイス/君の指
「行ってきます」
君は毎朝ラジオ体操に出かける。
帰ってきたら私はアイスを渡す。
「頑張ったね」
「うん!」
アイスのついた指を舐める君。
今年も蝉のなく朝。
「行ってきます」
君は高校生になって子供達にラジオ体操を教えている。
私はアイスを用意した。
8.7 盆踊り/提灯の灯り/亡くなった祖母
祖母は盆踊りが好きだった。
祭りの提灯の灯りの下で 私は盆踊りを踊る。ふと 隣を見ると祖母が踊っていた。
あぁ、もうお盆だから帰ってきたんだ。
祖母の踊りはとても風情があり浴衣の柄がいつも涼しげだ。
こうやって一緒に踊れるのは今日1日だけなのだ。
8.8 熱帯夜/エアコンの音/隣の寝息
眠れぬ熱帯夜にエアコンの音に混じって、隣から寝息がする。
そんなバカなと思って横を見るが誰もいない。
私は目を閉じて眠ろうとするがやはり隣から寝息がする。
私は電気をつけた。
隣には夫が横になっている。
確認してみたが、やはり息はしていなかった。
8.9 ひまわりの種/自転車の後ろ/あの夏
君の自転車の後ろに乗って疾走したあの夏。
大きな ひまわりが山のように咲いていてじっとこっちを見ているようだった。
「あれは食用のひまわりだよ」
と君が教えてくれた。
ひまわりの種を食べながらビールを飲むとそのことを思い出す。
8.10 雷雨/停電/君と二人
突然の雷雨で停電してしまい真っ暗な中君と二人だけ。
どうしよう、ドキドキする!
これって恋?
ううん、きっと違う。
だって君は女の子で私も女の子なんだもん。
違うよね?
いや違う!
やっぱり私は君に恋をしたみたい。
8.11 祭りの帰り道/金魚すくい/失くした指輪
祭りの帰り道彼女と出会った。
久々に会った彼女は手に指輪をしていなかった。
「失くしたのよ」
と言っていたが本当だろうか。
本当は別れたんじゃないだろうか……
彼女はどこか危うくて、
まるで金魚すくいの金魚の様にすぐに死んでしまいそうだ。
8.12 入道雲/屋上のタール/青春の終わり
青い空と入道雲。
屋上に上がれば君がいて、いつも授業をサボっていた。
青春というのは決して綺麗なものばかりではない。むしろドロドロに溶けたタールのような煮え切らない想いが心に渦巻く。
懐かしいと思い出す。
それでも青春は美しかったのだ。
8.13 西瓜割り/目隠し/君の笑い声
「西瓜割りしようよ!」
突然そういう声が聞こえて目隠しをされた。
君の笑い声が聞こえる。
ぐしゃり!
西瓜のように僕の頭が割れる。
目隠しがずれて隙間から君の笑い声と笑顔が覗いた。
8.14 夏の夜/欠けた月/再会
いつかの再会を誓って僕たちは別れの挨拶をした。
ある夏祭りの夜。
屋台で偶然君と再会する。
一緒に境内で欠けた月を見ながら、昔話をする。
「また会える?」
いいよ明日の晩に
明日はきっと満月だから……
8.15 終業式/制服の匂い/最後のチャイム
終業式が終わり最後のチャイムが鳴る。
「これから夏休みかぁ」
「どこか行く予定ある?」
「いや特には」
「俺も特に予定はない」
「それなら夏の間どこか行かない?」
「それデートのお誘い?」
「違うし!」
彼女の制服から微かに柔軟剤の甘い匂い。
8.16 夜のプール/水面の月/秘密
夜の学校のプールに二人でこっそりと泳ぎに行く。きっとこんなことがバレたら先生や親に怒られちゃう。
水面に月が映って真っ暗で、とってもドキドキする。
それなのにこんなにも楽しい!
君と二人で秘密を共有する。
いけないことをしている気分!
8.17 灼けた砂浜/波の音/君の手
焼けた砂浜を君の手を引きながら歩いて行く。
波の音が聞こえるから、ここは 砂漠でないはずだ。
いつまでもいつまでも終わらぬ先を越えて行く。
波の音がするからもうすぐ海に着くはずだ……
それなのにどこまで行っても砂しかない。
どこまで行っても砂、砂、砂……
8.18 夕立/傘のない二人/濡れた肩
突然の夕立に私たちは2人走った。
グラウンドを走り抜けて校舎に入った時には2人ともびっしょり。
それでも君は私の濡れた肩を気にして教室にあった 自分のタオルを貸してくれた。
そういうところが好きだったんだ。
けれど私は思いを伝えられず、卒業したっけ。
8.19 風の強い日/帽子が飛んで/追いかける君
風の強い日だった。
帽子が飛んで追いかける君。
ほんの一瞬の出来事だった。
飛び散る鮮血。
今も思い出しては、頭の中が真っ白になる。
繰り返し繰り返し、あの日の記憶がよみがえる。
君はもういないのに……
8.20 朝露/蜘蛛の糸/儚いもの
昨日は流星群の夜で星がいっぱい降ってきたから、朝起きたら蜘蛛の糸に星たちがたくさん引っかかっていた。
それは朝露みたいにキラキラと光って、とても儚い1つの銀河系になっていた。
蜘蛛の巣の銀河で星たちは夢を見る。
夢の中で生命が生まれ文明が生まれるのだ。
8.21 夏の終わり/風鈴の音色/別れ
風鈴の音色に導かれ夏の終わりがやってきた。
夏の終わりは悲しそうに別れを告げる。
風鈴の音色がチリンチリンと音を立て、夏の終わりは去ってゆくのを悲しんだ。
夏の終わりは風鈴の音色に少し似ている。
8.22 台風一過/青空/心の隙間
台風一家がやってきて、大雨を降らした後に台風一過とさって行く。
後にはいつもより青い青空とほんの少しの心の隙間ができて、そこに虹がかかるのだ。
いつもより青い空と心は、虹を迎え入れてキラキラと輝いた。
雨上がりの水たまりにそんな空と心が反射していた。
8.23 線香花火/火花の最後/短い命
線香花火が終わったら一緒に出かけようと約束していた。
線香花火の命は短い。
花火の最後はジジッ……と音を立てて消えてゆく。
最後の花火が消えた時、君もまた暗闇に消えてしまった。
彼女が幽霊であることに気がついたのはその時だった。
8.24 学校のプール/閉鎖の看板/思い出
今年は 酷暑であるため学校のプールが閉鎖になってしまって看板が出ていた。
僕が子供の頃は夏休みのプールが楽しい思い出だったけど、息子はプールに入れない。
だから休日市民プールに連れて行く。
学校のプールの代わりに楽しい思い出になればいいな。
8.25 夜風/白いカーテン/君の影
夜風が吹いて白いカーテンが揺れている。
ふと君の影がそこに写っている様な気がした。君と他愛のない話を毎日していた。
君の気配があるのが当然でいなくなるなんて全く考えなかった。
だから白いカーテンが揺れているのを見ると、君がそこにいるような気がする。
8.26 流星群/願い事/叶わない恋
今夜は流星群だ!
願い事をたくさんしよう!
ちっとも叶わない恋の願い事を!
すると姉貴が呆れたような顔して出てきた。
「あんたね!何人もの女の子と付き合えるわけないでしょ!そんなんだから何一つ叶わないのよ!」
「いいじゃん皆と付き合いたいんだし!」
8.27 古い写真/色褪せた君/あの日の光
私は古い写真をそっと撫でた、色あせた写真に写る君の姿は あの頃と変わらずセピア色に染まった写真はそれでも君の頬はバラ色だと感じることができた。
あの日の光の中、若いままの写真の君。
私はすっかり年老いてしまったよ。
8.28 空蝉/秋の気配/寂しさ
木の幹には空蝉がくっついていた。
蝉たちはこれでもかというほど元気な声で鳴いていたが、どうも最近は少し声が控えめになったような気がする。
まだまだ強い日差しの中に秋の気配がやってきた。寂しさを携えて。
蝉たちの恋の季節はそろそろ終わりのようだ。
8.29 残暑/汗ばむ手/最後のキス
残暑が私のところにやってきた。
「もうすぐお別れですね」
と言って私の汗ばむ手に最後のキスをした。
焼けつくような暑さから解放されるのは嬉しいけれど 残暑の寂しそうな顔を見たら、私も寂しい気持ちになった。
夏の終わりはいつだって物悲しい。
8.30 夕陽/長い影/君と歩いた道
夕陽が、長い影を落とす。
君と歩いた道を歩きながら僕は目を細めた。
小さかった君は今では立派な大人になった。
寂しくないといえば嘘になる。
駅に着くと、君と子供達の姿。
「おかえり」
年に一度でもこうやって会えるのが嬉しい。
8.31 夏の残照/枯れた花/さよなら
向日葵はすっかり枯れて幽霊の様な姿をしていた。夏の残照が照らし出す。
まるでこの世に『さよなら』を言っている様ではないか!
立ったまま死にたえ夏の終わりを体現している。
いいやきっと来年、新しい種から新しい向日葵たちと出会えるのだ。
その日を夢見る。
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