恋愛

雪の花

519文字 約2分で読了
作者:しとえ
この身を花に変えて あなたに会いに行きましょう だからどうか悲しまないで  辺りはまた雪の降る季節になっていた。 遠い昔聞いた雪姫伝説を思い出し窓の外を眺める。 この世界に雪が降り始めるようになったのは、雪姫が会いに来るようになったからだという。 雪姫がまだ人間だった頃、たとえ自分の命が尽きたとしても愛した相手のところにその身を花に変えて会いに行くと約束したそうだ。 以来この地には雪姫が死んだ季節になると雪の花が降るようになったらしい。 「六花起きていたか」 夫の声がした。 「うんまあね…」 余命宣告をされて半年。 あと一体どれだけ生きていられるだろう。 「あのさ、私が死んだら雪姫みたいに雪になってまたあなたに会いに来る」 そう言うと夫は沈黙した。 「バカなこと言うなよ。来年の雪も一緒に見るんだ」 「そうだね。そうなれたらいいな」 窓の外の雪は大きな牡丹雪に変化していた。 真綿のような雪が降る。 きらめく絹でできた真綿の雪が。 「そうだ来年も再来年もその先もずっと」 「うん、そうだね」 きっとそんな日は来ない。 真っ白な雪は全てを埋め尽くす。 真綿のような雪が降る。 きっとお別れの日にも。 そうしたら私は必ず この身を花に変えて あなたに会いに行きましょう だからどうか悲しまないで
2026/09/29 ・ 👁️ 85回 ・ 💬 0件

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