SF・ファンタジー
朝焼けと目覚まし時計
962文字
約2分で読了
風変わりな夢を見た。
夢の中に数字がいっぱい散らばった服を着た少女が出てきた。
「おはようございます!」
「…おはようございます」
少女はとびっきりの笑顔で笑う。
「あのどこかでお会いしたことがありますか?」
直感的に俺は彼女を知っていると思ったが一体どこで会ったのかさっぱり思い出せない。こんなことを聞いては不躾だろうか。
すると少女は笑顔で言った。
「いつも会ってるじゃありませんか。私はあなたにいつも挨拶してますよ」
そう言われて一体いつ会っているのか全く思い出せないのだ。
「私たちの仕事はね、まだ夢の中にいる人を現実の世界に連れてくることなのです。大きな声でおはようって言って今日という1日を始めることなんです。だけどあなたときたらいつも私の声を止めてまた二度寝しちゃうんですもの。ダメですよちゃんと起きてください。あなたに素敵な1日を始めて欲しくって起こしてるんですから」
そう言われて彼女が何なのか分かった。
「君は俺の目覚まし時計か……」
「ええでも……私、もう声がダメになっちゃったかもしれない」
少女はそう言った。
キラリと涙が光ってその光が眩しくって目を開けた。
目覚まし時計の針が止まっている。
だから今朝は音がしなかったのだ。
時間はもう8時。
「やばい!」
遅刻する!俺は慌てて身支度をして家を飛び出した。
結局遅刻してしまい大目玉を食らったが、俺はぼんやりと 夢のことを考えていた。
もう随分と長い間あの時計を愛用していたのだ。
決して高価なものではない。
小学1年生の時に買ってもらってから社会人になった今にも使っていた。
壊れていたとしてももう寿命なのだろう。
そうは思ったが、夢のこともあって新しく買い換えるという気にはならない。
週末に目覚まし時計を修理に持って行った。
もし治らなくてもそれはそれで仕方がないのかもしれないが……
しばらくの間 目覚ましはスマホで代用する。
枕元にあの時計がないのはほんの少し寂しい。
初めて買ってもらった時計だったのだから。
1週間ほどして時計屋から電話があり、さらにその1週間後、修理された時計は帰ってきた。
時計の針をセットする。
明日の朝焼けは彼女が知らせてくれるのだろう。
布団の中でかすかにコチコチと動く時計の音がする。
そのリズムは俺を夢の中に誘ってくれる。
心地良い、いつもの音だ。
……暁の光と共に彼女の音がする。
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