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地獄を眺めて
1,041文字
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今日も私にとって、目の前の出来事はすべて地獄だ。
「はあ、今日も仕事疲れた。
今から家事するか……」
「毎日頑張ってて偉いね」
「うわ、もうこんな時間じゃん。
あの人が帰るまで間に合うかな?」
「もっと旦那に家事振っちゃいなよ〜」
「ただいまー」
「あ、お帰りなさい!」
私の最愛の人は、一瞥もくれず伴侶のところへ優しい笑顔で向かう。
「ねえ、今幸せ……?」
当然、死人の私の声はいつも通り届かない。
神様。
私そんなに悪いことしたかな?
――
「ごめん、あなたとは、その。
友達以上の関係は……無理。
それに私、好きな男の子がいて……。」
あなたに告白したとき。
全く期待していなかった――
そういえば、嘘になる。
でもやっぱり「友達以上」を求めていたのは私だけで。
無理、ムリ、むり――。
頭の中で響いて、歩いているはずなのに足の感覚がない。
そのあとはよく覚えていない。
故意だったのか、それともショックから放心し車に気付かなかったのか。
気付けば、少し透けた体で自分の遺体を眺めていた。
下校中に車道へ出てしまい、轢かれてしまったみたい。
葬儀前から、両親は全身の水分がなくなるんじゃないかってくらい泣いていた。
親不孝してごめんね。
でも。
そんなことより私はあの子が、葬儀に来てくれなかったことが気になったのが一番の親不孝かも。
この体は便利だ。
どこへでも行ける。
自分だったものが焼かれたあと、あの子の家へと向かった。
しばらく見ていたが、どうやら不登校になったようだ。
やっぱり、責任を感じさせてしまったのかな?
それからはずっと傍で見ていた。
少しずつ、前向きになったかのように振る舞うあなたを。
夢ができ、受験勉強を毎日頑張るあなたを。
住む場所が変わり、一生懸命働くあなたを。
私のことを忘れたかのように、あの男と一見幸せに結ばれたあなたを……。
やめてよ。
お願いだから。
――
寝室で横になるあなたの傍で、私も寝るような姿勢をとる。
どうせ、すり抜けると分かりきっている手を重ねる。
あれから毎晩、あなたは呟く。
「ごめんね……、ごめんね……」
結婚してからは、隣の男に聞こえないように、小さな声で。
そして、声を殺して泣いてから眠りにつく。
自分の旦那に相談もせず。
バレないように。
私こそごめんね、その涙拭ってあげられなくて。
お願いだから、もう忘れてよ私のことなんか……。
なんでこんな『幸せ』なはずなのに、引きずってんの。
なんで今でも、私との写真なんか部屋に飾ってんの。
神様、お願いだからこんな地獄を見せないで。
お願いだから成仏させて。
お願いだから……。
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