恋愛

ナガミヒナゲシ

686文字 約2分で読了
彼女はまた下校中に足を止め、その花をスマホカメラに収める。 ナガミヒナゲシの淡い赤色の花を。 「何度も言ってるけどその花、害がある外来種なんだよ?」 「うん、聞いた聞いた」 「じゃあ具体的には?」 「うん、聞いた聞いた」 ――こいつ。 「アレロパシーって言って、周りの花とかが育ちにくくなるの。」 「自分勝手な人みたいだねー」 「……あと茎とか葉から出る乳液は、かぶれる程度の毒あるから触らないでね」 「かぶれる程度、ね」 「そんな花を見かけるたび、撮って何が楽しいの?」 彼女は私の言葉に、ようやくスマホから目を離した。 そして、どんどん近づいてくる。 いや、ちょっと近すぎな――。 「ッ……!」 彼女の柔らかな唇が、私の頬に触れた。 「な、何なの?」 「前、いきなり唇にしたら怒ったから」 またスマホに目を戻す彼女。 「そういう問題じゃないって」 「好きな花なんて、人それぞれじゃん。 そりゃ迷惑な人もいるだろうけどね。」 「……」 「恋人と同じ名前の花、嫌いになる方がおかしくない? 『永見 雛芥子(ナガミ ヒナゲシ)』さん」 「はあ、もう好きにしたら……」 「はーい、好きにしまーす」 私は無知な人が嫌い。 両親は「可愛い」からと、何も知らずに私の名前をつけた。 私は自分が嫌い。 人と関わるのが怖くて、毒のある言葉を吐いて遠ざける私が。 そして、それを全部知ってて愛してくれるこいつが―― ――大っ嫌い。 ああ、顔が火照って熱い。 「ねえ、もう終わった?」 「うん!早く帰ろ」 「はい、はい」 あなたは振り向かず私の前を歩く。 呆れる声と裏腹に、 愛する人のキスで、少しだけスキップしてしまったことだけは。 ……どうか、あなたに知られませんように。
2026/10/14 ・ 👁️ 21回 ・ 💬 0件

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