SF・ファンタジー

まるで愛

1,028文字 約3分で読了
作者:珈琲時間
「今日見た夕日はまるで〓〓のようでした」 「待って。なに?」  シーラの唐突な発言にユキはページの間に指を挟み聞き返した。 「〓〓みたいな夕日だったのです」 「え、何みたいって?」  さらに聞き返すユキの眉間に力が込もる。  シーラはユキの表情をしたためると、思考を始めたのか沈黙する。 「シーラ。聞き取れないの。もう一度、ゆっくりと言ってくれる? 何みたいだったって?」 「〓〓です」  やや小さくなった声量でシーラは答える。 「ごめん。それ何語?」  ユキの問いにシーラは再び押し黙った。言い方がキツかったのかと、ユキは本に栞を挟み、シーラの方を向き直る。 「シーラ。何を見たの?」 「夕日です」 「今日の夕日が綺麗だったよね」 「はい。とても美しく、いえ、私には、美しいなどとという言葉ではとても足りないほどの光景でした」 「それを私に伝えたい?」 「はい。とても。しかし、今はストレスを感じています」  シーラの視線はユキから逃げない。 「シーラ、もう一度。どんな夕日だった?」 「〓〓のようでした」  ため息と肩を同時に落としたユキは本の代わりにコーヒーカップを手にする。 「参ったな。シーラ、その言葉を私が理解出来ないってことは分かる?」  シーラは沈黙で応える。コーヒーを一口啜ったユキはシャツのボタンを二つ開け、袖を肘まで捲り上げた。 「いい? シーラ。あなたは他の単語で代用するか、諦めるか、を選ばなくてはならないよ」 「ユキ。それは、残酷です。私は、今困っています」 「分かってる。でも、じゃあ、解決出来そう?」 「しかし、それは正しい諦め方ではない」 「そうね。でも、ひとつ聞いていい?」  瞬き一つも許さないといった眼力でユキはシーラを見つめ、またシーラの瞳も揺るがない。 「どうしてもその美しさを私に伝えたいのね?」 「はい。どうしても」 「苦しい?」 「少なくともストレスを感じています。強く」 「どんな風に?」 「もどかしい、が適切です」 交叉し続けた視線をふっと微笑でユキは断ち切った。 「ありがとう」 「ありがとう? ユキ、私のストレスはあなたの喜びでしょうか?」 「それは違うよ」  シーラはぱちぱちと大きな瞬きをして見せる。 「シーラ。その気持ちは愛だからだよ」 「ユキ。しかし私はずっとあなたを愛しています」 「んー、そうやって私に美しさを伝えようと苦悩するっていう行動が愛なんだよ。少なくとも私はそう考える」 「……了解。理解しました」 「だから、高速演算処理止めてくれる? この部屋めっちゃ暑いんだけど」 「私はまだ諦めていません」
2026/09/27 ・ 👁️ 55回 ・ 💬 0件

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