恋愛
ズルい恋文
686文字
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「最近、僕の下駄箱にラブレターを仕込んでるヤツがいるみたいなんだ」
放課後の教室で僕がそう言うと、僕の後ろの席に座る君は日誌を書きながら「そう」とだけ呟いた。冷静沈着、興味なさげなその態度にムッとして、僕は学生服の胸ポケットから一枚の封筒を取り出す。
真っ白で少し小ぶりな封筒には、可愛らしく膨らんだハートのシールが貼られていた。宛名はしっかり僕の名前。わざとらしさ満点な愛らしい文字を刻む封筒をヒラヒラ見せつけても、君はやっぱり無反応。
仕方がない。僕はシールを剥がして封を開け、中に入っていた四つ折りの紙切れを広げる。
「ちょっと」
日誌を書いていた君が、やっと僕の方を見た。ニヤッとした笑みが零れるのを誤魔化して、僕は演技めいたデカいため息をついてみせる。
「ここ数日、毎日なんだぜ? 毎回紙切れいっぱいに、僕への愛が書かれているんだよ。よくもまあ飽きないよねえ。どんだけ僕の事が好きなんだか」
「……困っているなら、やめさせれば?」
「ええ? そんな事出来ないよ。だってこんなに僕の事を大好きって言ってくれてるのに、やめさせるなんて可哀想だろう。僕は、この学校を卒業するまでこのラブレターを享受する気だ。別れが来る日まで、目一杯僕を愛して貰うのさ」
そう堂々と笑えば、君はカッと目を見開き……すぐに勢い良く席を立った。
「そういうの、ズルいと思う」
いつもより更にハッキリした声で僕を一刀両断した君は、その後「トイレに行ってくる」と矢継ぎ早に言って教室を出て行った。ああ、いやはや、尻尾を巻いて逃げ出すとは。
「君の方こそ、ズルいんじゃあないの」
僕の呟きなど、真面目で不器用な君はつゆ知らず。
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