SF・ファンタジー
瓶の中のメロディ
727文字
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遠い遠い昔、人魚姫は恋をした。
それは海の上の船に乗っていた素晴らしい肉体を持った人間の男性だった。
男性はある嵐の晩に船が沈み海に落ちた。
人魚姫は彼を抱えて白い浜辺まで泳いで行った。
そしてそっとキスをしてまた海の底へと潜って行った。
人魚姫は彼のことを忘れなかった。
彼への思いを歌に込めた。
歌は小さなあぶくになって海の中を漂った。
あぶくになった歌を人魚姫は瓶の中に入れた。
恋する気持ちが輝いて瓶の中で小さな魔法になった。
海の上のあの人は一体どうしているのだろう。
人魚姫は毎日考えた。
そして彼のことを考えるたびに歌を歌った。
歌はやはり瓶の中に閉じ込めた。
人魚姫は知っていたのだ。
どんなに好きになっても、人魚と人間は結ばれない。
だからこの想いをそっと瓶の中に閉じ込めて永遠にしてしまおうと。
そうして人魚姫は年老いた。
何百年もの歳月が流れた。
当然だが人間はそんなに長生きはできない。
海の上には今日も船が行く。
ある晩のことだった、嵐で船がバラバラになって海の底に沈んでいった。その船に乗っていた男性を一人のまだ歳の若い人魚姫が救い出した。
彼女は男性に恋をした。
年老いた人魚姫が恋をしたように、まだ少女の人魚姫は人間の男性に恋をしたのだ。
彼女は決して諦めない。
年老いた人魚姫は、瓶の中で魔法へと変わった自分の歌を差し出した。
「行ってごらん地上へ」
自分が行けなかったその先へ。
魔法には代償がつきものだけど、きっとこの子ならば大丈夫。
私の分も恋をして、幸せにおなり。
瓶の中の魔法は一つだけ願いを叶えてくれる。
その代わり自分が大切にしているものを1つだけ差し出さなくてはならない。
少女の人魚姫は迷うことなく、瓶の魔法を飲み干した。
――さて、続きの物語は皆様のご存知の通り――
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よく知っている童話の前日譚を考えてみました。
魔女が実は人魚姫と同じような思いを抱えていたんじゃないかな、なんて考えてみました。
コメントとても嬉しいです✨