エッセイ

言い訳の太陽

856文字 約2分で読了
作者:しとえ
 今年の秋は涼しい。 8月が終わるなり毎日のように雨が降って、九月の一ヶ月間はずっと雨だった。 例年 このシーズンになるとまだまだ暑い日々にうんざりしていたのに、今年は早々と 秋物の洋服を出して羽織っている。  十月に入って 久々の晴れ渡った空。 こんなに晴れているんだもの、出かけなくっちゃもったいない。今日は仕事が休みだ。 毎日仕事と育児に追われて、なかなか休める時間がない。 子供を学校に送った後、一人車を走らせて秋のバラが綺麗なそう遠くない名所に行く。  バラで有名なお寺で、定期的にちょっとしたイベントもやっている。中に喫茶店があるから、お寺の拝観の後に、ちょっとよってみることにした。  境内に入ると大量のバラと、幻想的な提灯の飾り付けがでも帰ってくれた。どこか日常の懸想を忘れさせてくれる。 花曼荼羅という言葉があるが、この境内はさながらその花曼荼羅と空中に吊るされた提灯の曼荼羅といったところだろうか。 甘いバラの香りが全身を包み込む。 私は深呼吸をして、一度目をつぶりまたゆっくりと開いた。 先に参拝を済ませよう。  朝露に濡れたバラを見ながら、地蔵観音に手を合わす。 買った お線香に火をつけて、心の中で祈りを捧げる。 考えるのはやはり子供たちのことだ。 お地蔵様は子供達を守ってくれる存在だから。 いいやそれを除いても、きっと私はいつも子供たちのことばかり考えている。 どうにも休めそうで休めていない。 子供のことを考えるのは とても楽しいけれど、自分のことを考えてゆっくりとする時間だってきっと必要だ。  境内をゆっくりと散策しながら、私は奥へと入って行った。 池には大きな鯉が泳いでいる。 一番奥の喫茶店で、ブラックコーヒーと季節のケーキを頂いた。優しい甘さが口いっぱいに広がって現実から切り離された時間が流れて行く。  日の光が差し込んで、サンキャッチャーが輝いていた。 青い空と太陽を言い訳にして、出かけた私だけの休日。 きっと、この一日があるからまた明日も頑張れる。 バラのお守りを1つ買ってキーホルダーにつけると、私は車に乗って 花曼荼羅のお寺を後にした。
2026/10/14 ・ 👁️ 52回 ・ 💬 0件

\ 次の作品を探す /

読者の感想・応援メッセージ

まだ感想はありません。

0 / 1000文字