ホラー・怪談

20時前には

978文字 約2分で読了
作者:ReiN.
「もう少しで彼女が帰ってくるはず……」  私は時計を確認して、料理を始める。  いつも通りの料理。  基本的に在宅ワークの私が料理を作っている。  作れる方が作ればいいし。  特に凝ったものでもなく、簡単に作れるものを用意した。    カチャ。   「ただいまー」  いつも通り、彼女が帰ってきた。 「おかえり」  私は部屋から顔を出す。  彼女は、少し雑にヒールを脱いでいた。  よほど疲れていたらしい。 「夕飯できてるよ」 「ありがとう」  彼女は顔を緩ませて、リビングに来た。 「今日のご飯なあに?」 「冷蔵庫にあるものを適当に炒めた」 「そっか」  そう言いながら、彼女は冷蔵庫にあるお茶を取り出した。  コップに入れて一気飲みをする。  外が暑かったらしい。けれど、私は在宅ワークで一日中外に出なかったからわからない。  私は、皿に料理を盛り付けてテーブルに置いた。  彼女も椅子に座った。私も椅子に座り二人で食べる。 「今日、外暑かったよ」  そう言う彼女の首筋には水滴がついていた。 「外回りの営業お疲れ様」 「うん、ありがとう」  しばらくして私たちは食事を食べ終わりくつろいでいた。 「先にお風呂入る?」  一日中、外回り営業をしていた彼女が、  先にお風呂に入った方が良いかなと思って。 「大丈夫だよ。先に入っておいで」 「……わかった。ありがとう、先に入るね」  私は脱衣所に入り、服を脱いで浴室へ入った。  水が体に当たる。  一日中、部屋にいたから体が冷えないように少し温かい温度。  汗は出ていないけれど、何となくゴシゴシ洗った。  すべて洗い終わり、浴室を出た。  髪の水滴をタオルでふき取り、ドライヤーを当てる。  カチャ。 「ただいまー」 「……え」  思わず脱衣所から顔を出す。  そこには、首筋に水滴をつけたまま、ヒールを雑に脱ぐ彼女がいた。 「あ、お風呂入ってたんだ」 「あ、うん」 「まだご飯できてないよね?外食でもいいよ」 「え、いや、食べたよ。一緒に食べたじゃん」 「いやいや、何言ってるの、今帰ってきたばかりじゃん」 「帰るって連絡したよ」  私は何も言わず、スマホを開く。  >18:43  今から帰るね。多分、20時前には家に着くかも。    確かに、メッセージが来ていた。 「大丈夫?」  私の顔を覗き込む彼女の首筋には水滴が滲んでいた。  そして、私の頭も水滴が滲んでいるだろう。  右手に持っているドライヤーだけが、何事もなかったように風を送り続けていた。  私は首だけを曲げて、リビングの方向を見た。
2026/09/18 ・ 👁️ 91回 ・ 💬 0件

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