コメディ・日常
間抜けな敵兵
1,913文字
約4分で読了
とある国に、戦争兵器・武器の大好きな学生がいた。彼は学校が休みになると、隣町にあるミリタリーショップに通い、様々な戦争兵器のレプリカを買うのが大好きだった。
彼の戦争兵器好きの理由は、デザインにあった。戦争兵器のデザインは、彼にとって非常に魅力的で、格好良く見えた。
その中でも彼の好みは、古いデザインの兵器だった。彼の夢は、戦闘で本物の戦争兵器を使ってみることだった。
そして数年後…。
幾年が経過しても、世界は平和なままだった。彼は社会人になっていた。良い大人となった彼だったが、戦争兵器好きは止まることがなく、コレクションはどんどん増え続けた。彼は仕事終わりや休みになると、頭の中で戦争兵器を使うシュミレーションを繰り返すのが習慣になっていた。空想の中で倒した敵の数は数百人にもなった。
さらに少し時間が経ち…。
彼が25を迎えた時、待ちに待った世界大戦が起こった。彼はすぐに志願兵になり、戦争に参加することにした。彼は自分の手で多くの敵を倒したかったので、最前線に立つことを強く希望した。彼はこの日のために、日々イメージトレーニングをし、筋トレも欠かさなかった。
まだ若く、健康体であった彼は、希望通り戦争の最前線に行くことができた。彼は大喜びで戦地に赴いた。
彼の戦闘センスは卓越していた。
何年も続けていたイメージトレーニングのおかげか、勘が鋭く、敵がどこにいるのかすぐに見つけることができた。さらに、何年も続けたイメージトレーニングのためか、射撃の腕が優れていた。狙った獲物は百発百中で、戦友たちを驚かせた。彼は人を倒すために生まれたかのように、敵を倒し続けた。その数は数百人。瞬く間に彼は英雄となった。
彼が英雄となった要因に、敵の討伐数が関係していることはもちろんだが、実は他にも大きな要因があった。彼は戦争兵器のデザインに執着していたのだった。最新の戦争兵器が配給されたのにもかかわらず、彼はデザインがいいというだけで、一昔前の戦争兵器を使い続けていた。もちろん機能は大きく落ちる。しかし、彼は旧式の兵器を愛し、その兵器で敵を倒し続けていた。普通の人ならすぐに敵の返り討ちにあったかもしれないが、彼は違った。
国中のメディアが彼を取り上げた。彼にはファンクラブができた。また、ミニタリーショップに彼モデルの戦争兵器レプリカが並んだ。国の人々は彼を「神童」と呼び、様々な賞賛の言葉を口にしたりした。
彼はインタビューでこう答えた。
「今時、戦争兵器は機能だけではいけないのです。デザイン、機能の二つのバランスが取れてこそ完璧な戦争兵器と言える。特にオールドデザインの兵器を私は好みます。ヴィンテージはいい。古いというだけでロマンを感じる。そんな古い兵器を使って大丈夫かって?心配ご無用。私が戦争兵器を手にすれば、機能がいくら粗悪であっても、最低100人の敵を倒してみせますよ。」
彼の言葉は説得力があった。次第に人々は、彼がどれだけ古い兵器で人を倒せるのか期待するようになった。彼は国民の期待に沿うべく、使う兵器をどんどん旧式の兵器に変えていった。
調子に乗った彼は、さらに敵の亡骸を増やしていった。
いくら古い兵器を使用しても、多くの敵兵を倒し、帰還してくる。有言実行をする彼を、人々は次第に「神童」から「鬼の子」と呼ぶようになった。
しかし、彼も無敵ではなかった。あと少しで討伐が1000人になろうとした頃、あっさりと戦死してしまった。国の誰もが彼の死を悲しんだ。各新聞は、「神童の死」「無念、神の子の最期」「天才の残した戦歴」など様々な見出しを一面に書いた。しかし、彼が倒れた理由はどこにも書いてなかった。敵に斬りつけられたのか、弾が体を貫いたのか、はたまた地雷を踏んでしまったのか。国民は何も知らされることがなかった。
彼が死んだニュースが流れた同日、彼は敵側のメディアにも取り上げられた。敵側の新聞に、小さい記事が載った。そこには”彼”の死の真相が書かれていた。
「間抜けな敵兵
戦地でとても間抜けな敵兵を見つけた。よほど自信があったのか、その敵兵はたった一人で我らが軍の中に突っ込んできた。そして、遠くから一発の銃を撃った。その一発は見事味方兵士の頭に命中し、一人の犠牲者を出したが、その直後、銃を撃った敵兵も動かなくなった。おかしいと思い、兵士の一人が敵兵の様子を望遠鏡で確認すると、彼はうずくまって、何かしている。その姿はあまりにも隙だらけだった。我らが軍は隙だらけの敵兵をすぐさま射ち倒し、何をしていたのか確認をした。すると、敵兵の横には火縄銃が落ちていた。敵兵は火縄銃で我らが軍隊に攻め入ったのである。我らも舐められたものだ。」
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